【2025年版】人材開発支援助成金とは?申請前に知るべき概要
「社員のリスキリングを進めたいが費用がない」「DX研修を実施したいが、その間の人件費が負担だ」といった課題を抱える中小企業経営者・人事担当者にとって、厚生労働省の「人材開発支援助成金」は非常に強力な制度です。本助成金を活用すれば、研修費用(受講料や講師謝金)だけでなく、研修中の賃金の一部まで助成されます。
2025年度(令和7年度)版では制度が拡充され、特に「事業展開等リスキリング支援コース」や「人への投資促進コース」が注目されています。しかし、手続きが複雑で要件も細かいため、正しい知識がないと不支給となるケースも少なくありません。この記事では、各コースの違いから具体的な助成額、申請の流れ、そして不支給を避けるための重要ポイントまで、専門家の視点で徹底解説します。
■ この記事でわかること
- 人材開発支援助成金の7つのコースの違いと選び方
- コースごとに「いくらもらえるか」の具体的な金額シミュレーション
- 申請から入金までの全フローと必要書類
- 不支給や減額を避けるための5つの最重要ポイント
人材開発支援助成金の基本情報
人材開発支援助成金(通称:人開金)は、事業主が雇用する労働者に対し、職務に関連した専門知識・技能を習得させるための職業訓練(OFF-JT)を計画的に実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。財源は事業主が納める雇用保険料です。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金 |
| 実施機関 | 厚生労働省(窓口:各都道府県労働局、ハローワーク) |
| 助成内容 |
経費助成:研修受講料、講師謝金など(最大75%)
賃金助成:訓練時間中の賃金の一部(中小企業:最大1,000円/時) |
| 申請期間 | 通年受付(ただし、訓練開始日の1ヶ月前までに「計画届」の提出が必須) |
対象となる事業者
以下の要件をすべて満たす事業主が対象です。
- 雇用保険の適用事業所であること
- 訓練を受ける雇用保険被保険者を雇用していること
- 労働保険料を滞納していないこと
対象となる事業(7つのコース)
本助成金は目的別に7つのコースに分かれています。自社の目的に合ったコースを選択する必要があります。
| コース名 | 概要 |
|---|
| 1. 人材育成支援コース | 職務に関連したOFF-JTを幅広く支援する基本コース。(例:新人研修、管理職研修、ドローン操縦訓練など) |
| 2. 人への投資促進コース | 高度デジタル人材訓練(AI等)やサブスク型研修(eラーニング等)を強力に支援。 |
| 3. 事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業、DX、GX(グリーン化)など、新たな分野に進出するためのリスキリングを支援。(令和4〜8年度の時限措置) |
| 4. 教育訓練休暇等付与コース | 従業員の自発的な学びを支援するため「有給の教育訓練休暇制度」を導入した場合に助成。 |
| その他 | 5. 建設労働者認定訓練コース 6. 建設労働者技能実習コース 7. 障害者職業能力開発コース |
補助金額はいくら?計算方法とシミュレーション
助成額は「中小企業」か「大企業」か、また選択するコースによって大きく異なります。ここでは特に活用事例の多い主要コースの「中小企業」の例を紹介します。
| コース名 | 経費助成率 | 賃金助成額 |
|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 75% | 1,000円/時 |
人への投資促進コース (高度デジタル訓練) | 75% | 1,000円/時 |
| 人材育成支援コース | 45%(賃上げ要件達成で60%) | 380円/時(賃上げ要件達成で480円/時) |
■ 支給額シミュレーション(中小企業)
ケース:リスキリング支援コースでDX研修(30時間)を5名が受講(研修費用100万円)
- 経費助成: 100万円 × 75% = 75万円
- 賃金助成: 1,000円/時 × 30時間 × 5名 = 15万円
合計助成額:90万円
申請から入金までの流れ
本助成金は「精算払い(後払い)」です。訓練完了・経費支払後に申請し、審査を経て入金されます。
-
STEP1:計画届の作成・提出
訓練開始日の1ヶ月前までに、訓練計画や見積書等を揃えて労働局へ提出します。 -
STEP2:訓練の実施
計画届が受理されたら訓練を開始します。期間中は出欠簿や業務日誌などを正確に記録します。 -
STEP3:支給申請書の作成・提出
訓練終了日の翌日から2ヶ月以内に、実績報告書や証拠書類を添えて労働局へ提出します。 -
STEP4:審査・入金
労働局での審査(約数ヶ月〜半年)を経て、支給決定通知が届き、指定口座へ助成金が振り込まれます。
申請に必要な書類一覧
申請は「計画届」と「支給申請」の2段階で行います。以下は主な申請書類です。コースによって追加書類が必要な場合があります。
| 提出タイミング | 主な書類名 |
|---|
① 計画届 (訓練1ヶ月前まで) | 事業内職業能力開発計画 |
| 職業訓練実施計画届 |
| 訓練カリキュラム、経費の見積書 など |
② 支給申請 (訓練終了後2ヶ月以内) | 支給申請書、支給要件確認申立書 |
| 出欠簿、訓練日誌 |
| 経費の領収書、賃金台帳、出勤簿 など |
審査のポイントと不支給を避けるための注意点
本助成金は要件を満たせば支給されますが、手続きの不備で不支給となるケースが後を絶ちません。以下の5つの重要ポイントを必ず守ってください。
■ 不支給を避ける5つの重要ポイント
- 【最重要】計画届の期限(訓練1ヶ月前)を厳守する。1日でも遅れると、その訓練は助成対象外となります。
- 証拠書類(出欠簿・賃金台帳)を完璧に管理する。審査はすべて書類で行われます。記載漏れや矛盾は不支給の直接的な原因になります。
- 就業規則・賃金規程を整備する。訓練が労働時間として扱われ、適正に賃金が支払われている根拠が必須です。
- 訓練内容の「職務関連性」を明確にする。なぜその訓練が自社の業務に必要かを、計画段階で合理的に説明できるように準備します。
- 助成率アップの要件(賃上げ)を賢く活用する。賃上げを行うことで助成率がアップするコースがあります。別途、賃上げ促進税制との併用も検討できます。
注意:「とりあえず研修を始めて後から申請しよう」は絶対に認められません。また、助成金の不正受給が発覚した場合、助成金の返還だけでなく、事業者名の公表や刑事告発などの厳しい処分が科されます。
よくある質問(FAQ)
Q. 個人事業主でも申請できますか?
A. はい、可能です。ただし、雇用保険の適用事業所であり、雇用保険に加入している従業員を雇用していることが条件です。事業主本人のみ場合は対象外です。
Q. eラーニングやオンライン研修、サブスク型サービスも対象ですか?
A. はい、多くのコースで対象となります。特に「人への投資促進コース」ではサブスクリプション型の研修サービスも助成対象です。ただし、受講者の学習時間が客観的に管理できるシステムであることが要件となります。
Q. 訓練開始まで1ヶ月を切ってしまいました。もう申請できませんか?
A. 残念ながら、その訓練は対象外です。「訓練開始日の1ヶ月前」という期限は厳格です。次の研修を計画し、それに対して新たに計画届を期限内に提出することは可能です。
公式情報・問い合わせ先
最新の情報や詳細な要件については、必ず公式サイトをご確認ください。申請に関する相談は、管轄の労働局またはハローワークで行うことができます。
免責事項:本記事は2025年4月1日時点の情報に基づいています。制度内容は変更される可能性があるため、申請前に必ず公式の公募要領をご確認ください。
最終更新:2025年4月1日