令和7年に発生した大規模林野火災により、岩手県大船渡市の多くの農業者の方々が甚大な被害を受けられました。心よりお見舞い申し上げます。大切な農地や施設、機械を失い、営農の再開に見通しが立たず、不安な日々をお過ごしのことと存じます。そんな被災された農業者の皆様の再起を力強く支援するため、大船渡市が特別な補助金制度を創設しました。それが「大船渡市被災農業者緊急支援事業費補助金」です。この制度は、農業施設や機械の再整備にかかる経費の4分の3を、上限なしで補助するという非常に手厚い内容となっています。この記事では、制度の対象者から申請方法、採択のポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。営農再開への大きな一歩を踏み出すために、ぜひ最後までご覧ください。
この記事のポイント
- 補助率3/4、上限なしの強力な資金支援!
- 倉庫やパイプハウス、トラクターなどの施設・機械の再整備が対象
- 申請にはり災証明書が必須
- 申請期限は令和7年10月31日(金)まで
- 申請前に市の農林課への相談が成功のカギ
「大船渡市被災農業者緊急支援事業費補助金」とは?制度の概要
この補助金は、令和7年に発生した大規模林野火災で被災した農業者の方々が、一日も早く営農を再開できるよう、市が独自に創設した緊急支援制度です。失われた農業施設(倉庫やハウスなど)や農業用機械を元通りに再整備するための費用の一部を補助することで、経済的な負担を軽減し、大船渡市の農業の復興を後押しすることを目的としています。
補助金の基本情報
| 正式名称 | 大船渡市被災農業者緊急支援事業費補助金 |
|---|---|
| 実施機関 | 岩手県大船渡市 |
| 申請受付期間 | 公募開始日 〜 2025年10月31日(金) |
| 補助率 | 対象経費の4分の3以内 |
| 補助上限額 | 上限なし |
| 問い合わせ先 | 大船渡市 農林課 農政係 電話: 0192-27-3111 (内線344, 348) |
補助対象者 – あなたは対象?6つの必須要件をチェック
この補助金を利用するには、林野火災で被害を受けた農業者であり、かつ以下の6つの要件をすべて満たす必要があります。ご自身が該当するか、一つずつ確認していきましょう。
- ① 営農再開の意思があること
被災前に所有していた農業施設や機械を復旧し、営農(農協などへ農産物を出荷すること)を再開する方が対象です。自家消費のみの場合は対象外となるためご注意ください。すでに復旧のために発注・購入した設備も対象に含まれます。 - ② り災証明書などを取得していること
火災による被害を公的に証明する「り災証明書」などを受け取っていることが必須です。また、再整備は林野火災発生日以降に着手したものである必要があります。 - ③ 原形復旧が基本であること
補助の対象となるのは、被災した施設や機械を元の状態に戻す「原形復旧」です。ただし、例えば被災した2つの倉庫を1つに集約する場合など、合計面積を超えなければ認められるケースもあるため、計画段階で市に相談することをおすすめします。 - ④ 修理・建て直し・買い直しの費用であること
火災で被害を受けた施設・機械の修理、建て直し、または同等のものへの買い直し費用が対象です。重要な点として、もし保険金や共済金を受け取っている場合は、その金額を差し引いた額が補助の対象経費となります。 - ⑤ 令和9年度までの営農継続を目標とすること
補助を受けて営農を再開した後、令和9年度まで農業を継続することを目標としていただきます。これは、地域農業の担い手として復興を支えていく意思を確認するものです。 - ⑥ 共済や保険への加入
補助を受けて再整備した施設や機械は、将来の災害に備えるため、必ず共済や保険などに加入する必要があります。
補助対象となる経費・ならない経費
具体的にどのようなものが補助の対象になるのか、また対象外となるのかをしっかり把握しておくことが重要です。
対象となる経費
① 農業施設
- 倉庫
- パイプハウス
② 農業用機械
- トラクター
- 田植え機
- 管理機
- 耕運機
- 動力噴霧器
- 農業用小型運搬車
- 自走式モア など
【要注意】対象外となる経費
以下の品目は、農業に利用するものであっても本補助金の対象にはなりませんので、ご注意ください。これらは汎用性が高いと判断されるためです。
- 運搬用トラック、軽トラック
- 発電機
- チェーンソー
- 背負い式刈払機
なお、大船渡市農協でも独自の支援制度(1農業者あたり50万円まで)を設けており、市の補助金で対象外となったものでも、そちらで支援を受けられる可能性があります。詳しくは農協にご確認ください。
補助率と補助金額 – 上限なしの強力支援!
本補助金の最大の魅力は、その手厚い補助内容にあります。
- 補助率:対象経費の4分の3以内
- 補助上限額:設定なし
具体的な計算例
どのくらいの補助が受けられるのか、具体的なケースで見てみましょう。
| ケース | 計算式 | 補助金額 |
|---|---|---|
| 例1:パイプハウス再建 ・再建費用: 800万円 ・受け取った保険金: 200万円 | 補助対象経費 = 800万円 – 200万円 = 600万円 補助金額 = 600万円 × 3/4 | 450万円 |
| 例2:トラクター購入 ・購入費用: 500万円 ・受け取った保険金: なし | 補助対象経費 = 500万円 補助金額 = 500万円 × 3/4 | 375万円 |
申請方法とスケジュール
申請から交付までの5ステップ
- 事前相談:まずは市の農林課農政係に連絡し、事業内容や計画について相談しましょう。
- 書類準備:後述の必要書類を揃えます。特に3者からの見積書の取得には時間がかかる場合があるので、早めに動き出すのがおすすめです。
- 申請書提出:すべての書類が揃ったら、令和7年10月31日(金)までに農林課へ提出します。
- 審査・交付決定:市が提出された書類を審査し、問題がなければ交付が決定されます。
- 事業実施と報告:交付決定後、施設の再整備や機械の購入を行います。事業完了後は実績報告書を提出し、検査を経て補助金が支払われます。
⑴ 施設整備の場合
- 経営状況の確認ができる書類(青色・白色申告書又は出荷伝票)
- り災(その他)証明書、被災写真
- 被災施設の所有権の確認ができる書類(固定資産税課税明細書等)
- 整備する施設の見積書(原則3者)
- 整備する施設の図面
- 保険・共済等への加入状況がわかる書類
- 支払いのあった保険金・共済金の金額の確認ができる書類
⑵ 機械導入の場合
- 経営状況の確認ができる書類(青色・白色申告書又は出荷伝票)
- り災(届出)証明書(機械の規格等が確認できるもの)、被災写真
- 被災機械の所有権の確認ができる書類(機械購入時の契約書・領収書等)
- 導入する機械の見積書(原則3者)
- 導入する機械のカタログ
- 保険・共済等への加入状況がわかる書類
- 支払いのあった保険金・共済金の金額の確認ができる書類