【2025年】福岡市のZEB/ZEH-M設計補助金とは?最大300万円で脱炭素建築を支援
福岡市では、地球温暖化対策の一環として、年間のエネルギー消費量を実質ゼロにする省エネ性能の高い建築物「ZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」および「ZEH-M(ゼッチ・マンション:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)」の普及を強力に推進しています。その中心的な施策が「脱炭素建築物誘導支援事業(ZEB、ZEH-M設計補助)」です。
この補助金は、ZEBやZEH-Mの建設に不可欠な、高度な省エネ設計にかかる追加費用(上乗せ設計費)の一部を支援するものです。最大で300万円の補助を受けることで、初期投資の負担を軽減し、環境性能と経済性を両立した未来志向の建築物を実現できます。本記事では、この福岡市の補助金制度について、概要から申請の具体的な手順、採択されるためのポイントまで、詳しく解説します。
■ この記事でわかること
- 福岡市のZEB/ZEH-M設計補助金の制度概要
- 補助対象となる建築物、事業者、経費の詳細
- 補助金額と具体的な計算例
- 申請から補助金交付までの全ステップとスケジュール
- 採択率を上げるための申請書作成のコツと審査のポイント
補助金制度の概要
本補助金の正式名称は「脱炭素建築物誘導支援事業(ZEB、ZEH-M設計補助)」です。福岡市が市内の建築物の脱炭素化を加速させることを目的に実施しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 脱炭素建築物誘導支援事業(ZEB、ZEH-M設計補助) |
| 実施自治体 | 福岡市 |
| 目的 | 福岡市内における建築物の脱炭素化を推進するため、省エネ性能の高いZEB、ZEH-Mの建設に係る設計費を補助する。 |
| 対象者 | 福岡市内にZEBまたはZEH-Mを新築または改修する建築主(法人・個人) |
| 申請期間 | 令和7年4月1日 ~ 令和8年1月30日(金曜日)まで |
| 問い合わせ先 | 福岡市 環境局 脱炭素社会推進課 (電話: 092-711-4282) |
ZEB・ZEH-Mとは?補助金理解のための基礎知識
補助金を最大限に活用するためには、対象となる「ZEB」と「ZEH-M」について正しく理解しておくことが不可欠です。これらは、国のエネルギー政策においても重要な位置を占めており、今後の建築のスタンダードとなる概念です。
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の基本
ZEB(ゼブ)とは、Net Zero Energy Buildingの略称で、快適な室内環境を保ちながら、建物のエネルギー消費量を大幅に削減し、さらに太陽光発電などでエネルギーを創り出すことにより、年間の一次エネルギー消費量の収支を実質ゼロにすることを目指した建築物です。オフィスビル、商業施設、学校、病院などが対象となります。
ZEBは、省エネ性能の達成レベルに応じて、以下の4段階に定義されています。
| ZEBの種類 | 省エネ+創エネによるエネルギー削減率 |
|---|---|
| 『ZEB』 | 100%以上削減(省エネ50%以上必須) |
| Nearly ZEB | 75%以上削減(省エネ50%以上必須) |
| ZEB Ready | 50%以上削減(創エネは含まない) |
| ZEB Oriented | 30%以上削減(延床面積10,000㎡以上対象) |
ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の基本
ZEH-M(ゼッチ・マンション)は、ZEBの集合住宅版です。Net Zero Energy House Mansionの略称で、断熱性能の大幅な向上や高効率な設備・システムの導入により省エネを実現し、再生可能エネルギーの導入でエネルギー収支ゼロを目指す集合住宅を指します。
ZEH-Mも、達成基準に応じて複数の種類に分けられています。
- 『ZEH-M』: 大幅な省エネ(20%以上)+共用部を含む再生可能エネルギーでエネルギー収支100%以上削減
- Nearly ZEH-M: 大幅な省エネ(20%以上)+共用部を含む再生可能エネルギーでエネルギー収支75%以上削減
- ZEH-M Ready: 大幅な省エネ(20%以上)+共用部を含む再生可能エネルギーでエネルギー収支50%以上削減
- ZEH-M Oriented: 大幅な省エネ(20%以上)を実現(創エネは問わない)
なぜ今ZEB/ZEH-Mが注目されるのか?国の目標とロードマップ
ZEB/ZEH-Mの推進は、福岡市独自の取り組みではなく、国全体の大きな目標に基づいています。政府は2050年のカーボンニュートラル実現に向け、「エネルギー基本計画」の中で「2030年度以降に新築される建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されることを目指す」というZEB ZEH 目標を掲げています。この目標達成のための工程表が「ZEB ZEH ロードマップ」です。
この国の大きな方針のもと、各自治体でも補助金制度などを通じてZEB/ZEH-Mの普及を後押ししており、福岡市の本補助金もその一環です。今後、建築物の省エネ基準はますます厳しくなることが予想され、早期にZEB/ZEH-Mに取り組むことは、法令遵守だけでなく、企業の環境に対する姿勢を示す(ESG経営)上でも重要となります。
補助金の詳細ガイド:対象者・金額・経費
補助対象者と詳細な条件
この補助金の対象となるのは、以下の要件をすべて満たす建築主(法人または個人)です。申請前に必ずご確認ください。
- 建設場所:福岡市内に延べ面積300㎡以上のZEB、または200㎡以上のZEH-Mを新築または改修すること。
- 設計者:補助対象経費である「上乗せ設計費」を、福岡市内に事務所を置く建築士事務所に支払うこと。
- 申請者:国、地方公共団体等を除く法人または個人であること。
- 納税要件:福岡市税に係る徴収金(市税、延滞金等)に滞納がないこと。
- コンプライアンス要件:申請者(法人の場合は役員も含む)が暴力団員ではなく、暴力団と密接な関係を有していないこと。
【具体例】
- 福岡市博多区に本社を置く企業が、中央区に延べ面積1,000㎡のZEB Ready基準を満たす自社オフィスビルを建設。設計は福岡市内の建築士事務所に依頼。→ 対象となります。
- 個人事業主が、早良区に所有する古いアパートをZEH-M Ready基準で改修(延べ面積500㎡)。設計は福岡市内の建築士事務所に依頼。→ 対象となります。
補助金額と補助率
補助金額は、対象建築物の種類(ZEBかZEH-Mか)と、その延べ面積によって定められた定額制です。補助対象経費の2分の1が上限となります。
| 対象建築物 | 延べ面積 | 補助金額(上限) |
|---|---|---|
| ZEB | 300㎡以上 2,000㎡未満 | 150万円 |
| 2,000㎡以上 | 300万円 | |
| ZEH-M | 200㎡以上 2,000㎡未満 | 60万円 |
| 2,000㎡以上 | 100万円 |
【計算例】
- ケース1:延べ面積1,800㎡のZEBを建設。上乗せ設計費が350万円かかった場合。
- 延べ面積が2,000㎡未満のZEBなので、補助金額は150万円。
- ケース2:延べ面積2,500㎡のZEH-Mを建設。上乗せ設計費が220万円かかった場合。
- 延べ面積が2,000㎡以上のZEH-Mなので、補助金額は100万円。
補助対象となる経費・ならない経費
補助の対象となるのは、通常の設計費に加えて、ZEB/ZEH-Mの基準を達成するために特別に必要となる「上乗せ設計費」です。具体的には以下の経費が該当します。
【対象経費】
- ZEB/ZEH-M設計に関する調査費用(日射シミュレーション等)
- 省エネルギー計算費用(一次エネルギー消費量計算など)
- BELS評価取得費用(評価機関への申請・審査手数料)
- その他、ZEB/ZEH-Mの設計に必要であると福岡市が認める費用
■ ポイント
補助金申請の必須条件である「BELS評価」の取得にかかる費用も補助対象に含まれます。これにより、第三者認証の取得コストも軽減できます。
【対象外経費】
- 通常の建築設計費
- 建築確認申請手数料
- 地盤調査費用
- 工事監理費
- その他、ZEB/ZEH-Mの設計に直接関係しないと判断される費用
申請から交付までの完全ステップガイド
補助金の申請は、定められた手順に沿って正確に行う必要があります。ここでは、申請から補助金を受け取るまでの流れをステップごとに解説します。
申請全体の流れとスケジュール
全体のスケジュール感を把握し、計画的に準備を進めましょう。
- 【建築主】事前準備:福岡市内の建築士事務所と設計委託契約を締結。
- 【建築主】交付申請:必要書類を揃え、福岡市へ申請書を提出。(締切:令和8年1月30日)
- 【福岡市】審査・交付決定:市が申請内容を審査し、交付(または不交付)を決定し通知。
- 【建築主】事業実施:交付決定後、BELS評価書を取得。
- 【建築主】実績報告:事業完了後、実績報告書を市へ提出。(締切:令和8年3月13日)
- 【福岡市】金額確定・交付:市が実績報告を審査し、補助金額を確定後、指定口座へ振り込み。
STEP1:事前準備と必要書類の収集
申請には多くの書類が必要です。漏れがないように、リストを確認しながら準備を進めてください。様式は福岡市のウェブサイトからダウンロードできます。
| 書類名 | 備考・注意点 |
|---|---|
| 補助金交付申請書(様式第1号) | 申請者情報、事業概要、補助金申請額などを記入。 |
| 事業計画書 | 建築物の概要、ZEB/ZEH-M設計の具体的な内容、省エネ効果などを記載。 |
| 設計図 | 配置図、各階平面図、立面図など。 |
| 設計委託契約書の写し | 福岡市内の建築士事務所との契約であることがわかるもの。 |
| 福岡市税の納税証明書 | 市税に滞納がないことを証明する書類。各区役所等で取得。 |
| 本人確認書類 | 法人の場合:登記簿謄本(履歴事項全部証明書) 個人の場合:住民票の写し |
| 暴力団排除に関する誓約書 | 指定の様式に署名・捺印。 |
| その他、市が必要と認める書類 | 必要に応じて追加提出を求められる場合があります。 |
STEP2:申請書の提出
準備した書類一式を、申請期間内に福岡市環境局脱炭素社会推進課へ提出します。
- 提出方法:郵送、持参、または電子メール
- 郵送の場合:簡易書留など、配達記録が残る方法を推奨します。
- 提出先:
- 〒810-8620 福岡市中央区天神一丁目8番1号(13階)
- 福岡市 環境局 脱炭素社会推進課
- メールアドレス:datsutanso-shakai.EB@city.fukuoka.lg.jp
採択率を上げるための戦略とポイント
補助金は予算に限りがあるため、申請すれば必ず採択されるわけではありません。審査を通過し、採択の可能性を高めるためのポイントを解説します。
審査で重視される3つのポイント
審査では、提出された書類をもとに、主に以下の点が総合的に評価されます。
- 事業計画の具体性と実現可能性:建築計画が具体的で、ZEB/ZEH-Mとして確実に実現できるか。スケジュールや資金計画に無理がないか。
- 省エネルギー効果の高さと貢献度:設計内容が、高い省エネ効果をもたらすものであるか。福岡市の脱炭素化目標にどれだけ貢献するか。
- 申請内容の的確性:申請要件をすべて満たしているか。提出書類に不備や矛盾がないか。
申請書作成のコツと注意点
- 分かりやすさを意識する:事業計画書は、専門家でなくても計画の全体像や優位性が理解できるよう、図や写真、グラフなどを効果的に用いて分かりやすく記述しましょう。
- 市の政策との関連性をアピール:福岡市が掲げる環境政策や脱炭素社会の実現に向けた目標に、自身の建築計画がどのように貢献するのかを具体的に記述することで、事業の公益性をアピールできます。
- 数字で具体的に示す:「省エネ効果が高い」といった抽象的な表現だけでなく、「一次エネルギー消費量を基準値から〇〇%削減」「年間のCO2排出量を〇〇トン削減」など、具体的な数値目標を示すことが説得力を高めます。
よくある不採択理由とその対策
- 書類の不備・不足:最も基本的な不採択理由です。提出前にチェックリストを作成し、複数人でダブルチェックを行いましょう。
- 設計内容の不明確さ:どのような省エネ技術を導入し、どのようにZEB/ZEH-M基準を達成するのかが不明確な場合、評価が低くなります。設計事務所と協力し、具体的な仕様や計算根拠を明記しましょう。
- 要件の誤解:「設計事務所が福岡市外だった」「対象面積を満たしていなかった」など、公募要領の読み込み不足によるミスを防ぐため、不明な点は必ず事前に問い合わせ先に確認しましょう。
福岡市だけでなく、福岡県全体でも様々な事業者支援の補助金が実施されています。例えば、観光関連の事業者であれば「福岡県宿泊事業者生産性向上支援補助金」のような制度も併せて確認すると良いでしょう。
BELS認証の重要性と取得プロセス
本補助金の申請および実績報告において鍵となるのが「BELS(ベルス)」の評価書です。
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)とは?
BELSは、新築・既存の建築物の省エネ性能を、第三者評価機関が評価し認証する公的な制度です。評価結果は5段階の星(★)の数で表示され、省エネ性能が客観的に分かりやすく可視化されます。このBELS評価において、ZEBやZEH-Mの基準を満たしていることの証明を取得することが、本補助金の必須要件となります。
BELS認証を取得するメリット
- 補助金申請の必須条件:本補助金をはじめ、多くの省エネ関連補助金でBELS認証が要件とされています。
- 不動産価値の向上:省エネ性能が「見える化」されることで、建物の付加価値が高まり、売買や賃貸において有利に働く可能性があります。
- 環境貢献企業としてのアピール:BELS認証を取得し、ZEB/ZEH-Mを建設することは、企業の環境配慮姿勢(ESG経営)を対外的に示す強力なメッセージとなります。
よくある質問(FAQ)
まとめ:福岡市の補助金を活用して、未来の建築物を実現しよう
福岡市の「脱炭素建築物誘導支援事業」は、ZEBやZEH-Mといった先進的な省エネ建築物の建設を検討している事業者にとって、初期投資の負担を大幅に軽減できる非常に魅力的な制度です。この補助金を活用することは、コスト削減だけでなく、企業の環境価値向上、不動産価値の維持・向上にも繋がり、長期的な経営戦略においても大きなメリットをもたらします。
■ 申請に向けた重要ポイントの再確認
- 申請期限は令和8年1月30日(金)です。計画的に準備を進めましょう。
- 設計の依頼先は福岡市内に事務所を置く建築士事務所が必須です。
- 申請は必ずBELS評価書の取得前に行う必要があります。
- 申請書類は不備がないよう、公募要領を熟読し、丁寧な作成を心がけましょう。
脱炭素社会の実現に向けた建築物の役割はますます重要になっています。この機会に福岡市の補助金を最大限に活用し、環境にも経営にも貢献する建築プロジェクトを実現してみてはいかがでしょうか。
【次のアクション】
まずは福岡市の公式ウェブサイトで最新の公募要領を確認し、不明な点があれば、下記の問い合わせ先に相談することから始めましょう。
問い合わせ先情報
| 福岡市 環境局 脱炭素社会推進課 | |
|---|---|
| 住所 | 〒810-8620 福岡市中央区天神一丁目8番1号(市役所13階) |
| 電話番号 | 092-711-4282 |
| FAX番号 | 092-733-5592 |
| メールアドレス | datsutanso-shakai.EB@city.fukuoka.lg.jp |