香川県では、全ての意志ある高校生等が安心して教育を受けられるよう、授業料以外の教育費負担を軽減するための「奨学のための給付金」制度を実施しています。この制度は返済不要の給付金であり、経済的な理由で修学が困難な世帯にとって非常に重要なセーフティネットとなっています。
本記事では、令和7年度(2025年)における香川県の奨学のための給付金について、制度の仕組みから具体的な給付額、複雑な申請手続き、さらには家計急変時の対応まで、5000文字を超えるボリュームで徹底的に解説します。申請漏れを防ぎ、確実に支援を受けるために、ぜひ最後までご確認ください。
香川県奨学のための給付金とは?制度の全体像
「奨学のための給付金」は、国が創設し各都道府県が実施する制度です。高校生等のいる低所得世帯を対象に、授業料以外の教育費(教科書代、教材費、学用品費、通学用品費など)を支援することを目的としています。
■ 制度のポイント
- 返済不要:貸与型奨学金とは異なり、将来返す必要はありません。
- 授業料以外を支援:授業料は「高等学校等就学支援金」でカバーし、それ以外の経費を本給付金で支援します。
- 世帯状況に応じた給付:生活保護受給世帯や非課税世帯など、経済状況に応じて給付額が決定されます。
「高等学校等就学支援金」との違い
多くの保護者の方が混同しやすいのが、「高等学校等就学支援金」と「奨学のための給付金」の違いです。この2つは併用が可能であり、役割が明確に異なります。
| 項目 | 高等学校等就学支援金 | 奨学のための給付金 |
|---|---|---|
| 支援対象経費 | 授業料 | 授業料以外の教育費 (教科書、教材、修学旅行積立金など) |
| 支給方法 | 学校が代理受領し、授業料と相殺 (手元には入らない) | 保護者の口座へ直接振り込み (現金給付) |
| 所得要件 | 年収約910万円未満程度 | 生活保護世帯または住民税非課税世帯など |
つまり、授業料が無償化されていても、通学費や教材費の負担は残ります。その部分をカバーするのが本制度の役割です。
【2025年度】給付額の詳細と計算シミュレーション
給付される金額は、世帯の状況(生活保護か非課税か)、通っている学校の種類(国公立か私立か)、そして兄弟姉妹の状況によって細かく設定されています。
給付額一覧表(年額)
以下は令和7年度の基準に基づく給付額の一覧です。ご自身の世帯がどこに該当するか確認してください。
| 世帯区分 | 学校種別 | 給付額(年額) |
|---|---|---|
| 生活保護受給世帯 (生業扶助受給) | 国公立(全日制・定時制) | 32,300円 |
| 私立(全日制・定時制) | 52,600円 | |
| 非課税世帯 (全日制・定時制等) ※第1子の場合 | 国公立 | 143,700円 |
| 私立 | 152,000円 | |
| 国公立(通信制) | 50,500円 | |
| 私立(通信制) | 52,100円 | |
| 非課税世帯 (第2子以降加算あり) ※扶養する15歳以上23歳未満の兄弟姉妹がいる場合 | 国公立・私立問わず (全日制・定時制) | 152,000円 ※要件により増額の可能性あり |
具体的なモデルケースでの計算
制度が複雑なため、具体的な家族構成を例に給付額を見てみましょう。
ケースA:母子家庭(非課税世帯)、私立高校に通う一人っ子
状況:母親の住民税所得割が0円。子どもは私立全日制高校1年生。
判定:非課税世帯(私立)に該当。
給付額:年額 152,000円
ケースB:両親と高校生の兄、中学生の弟(非課税世帯)、県立高校に通う
状況:両親ともに住民税非課税。兄は県立全日制高校2年生。
判定:非課税世帯(国公立)。弟(15歳未満)は加算対象の兄弟姉妹カウントには含まれませんが、兄自身が第1子区分として受給。
給付額:年額 143,700円
ケースC:生活保護受給世帯、県立高校に通う
状況:生活保護(生業扶助)を受給中。
判定:生活保護受給世帯区分。
給付額:年額 32,300円
※生活保護費の中で学習支援費などが支給されているため、本給付金の額は非課税世帯よりも低く設定されています。
1. 基準日要件
原則として、令和7年7月1日現在、以下の状況にあることが必要です。
- 高校生等が、高等学校等就学支援金の対象となる学校に在籍していること。
- 保護者(親権者)が香川県内に住所を有していること。
※生徒が県外の高校に通っていても、保護者が香川県在住であれば香川県に申請します。逆に、生徒が香川県の高校に通っていても、保護者が他県に住んでいる場合は、その保護者の居住する都道府県へ申請となります。
2. 所得要件(非課税世帯とは)
以下のいずれかに該当する世帯が対象です。
- 生活保護受給世帯:生活保護法による「生業扶助」を受給している世帯。
- 住民税非課税世帯:保護者等(親権者全員)の令和7年度(令和6年中の収入)の「道府県民税所得割」および「市町村民税所得割」が非課税(0円)である世帯。
3. 家計急変世帯への特例措置
昨今の経済情勢の変化により、予期せず収入が激減した世帯も対象となる場合があります。
対象となるケース:
保護者の失職、倒産、離婚、死別などにより家計が急変し、現在の収入状況を年収換算すると「住民税非課税相当」になると見込まれる場合。
申請に必要なもの:
解雇通知書、破産宣告通知書、離婚受理証明書、直近の給与明細(3ヶ月分程度)など、急変の事実と現在の収入を証明する書類が必要です。家計急変での申請を検討される場合は、早めに学校事務室または県の担当課へ相談することをお勧めします。
補助対象となる経費・ならない経費
この給付金は使途が限定されているわけではありませんが、制度の目的として以下の経費に充てることが想定されています。
対象となる主な経費
- 授業関連:教科書費、教材費、図書費、実験実習費
- 通学関連:通学用品費(制服、鞄、靴)、通学交通費(定期代)
- 活動関連:生徒会費、PTA会費、クラブ活動費
- 行事関連:修学旅行費、遠足費、校外活動費
- ICT関連:通信費、端末購入費(学校推奨のもの)
対象とならない経費
- 授業料:就学支援金でカバーされるため対象外。
- 入学金:別途「入学金軽減補助」などの制度がある場合があります。
- 寄付金:学校への寄付などは教育に必要な経費とはみなされません。
申請方法とスケジュール【完全手順】
申請は自動的には行われません。必ず保護者自身が書類を揃えて提出する必要があります。
Step 1:申請書類の入手
県内の高校に通う場合:
7月頃に学校を通じて案内があります。学校から配布される書類を受け取ってください。
県外の高校に通う場合:
学校からは案内がない場合があります。香川県のホームページから様式をダウンロードするか、香川県総務学事課へ連絡して郵送を依頼してください。
Step 2:必要書類の準備
以下の書類を揃えます。発行に時間がかかるものもあるため、早めの準備が肝心です。
| 書類名 | 備考・入手場所 |
|---|---|
| 受給申請書 | 指定様式に記入 |
| 振込口座届・通帳コピー | 保護者名義の口座 |
| 課税証明書 | 市役所・町村役場で取得(マイナンバーカードがあればコンビニ交付も可の場合あり)。 ※生活保護世帯は「生業扶助受給証明書」 |
| 在学証明書 | 県外の学校に通う場合のみ必要 |
| 扶養誓約書 | 兄弟姉妹加算を申請する場合など |
Step 3:書類の提出
提出先:
原則として、在籍している学校の事務室へ提出します。
※県外の学校に通う場合のみ、香川県総務学事課へ直接郵送または持参します。
Step 4:申請期限(厳守)
令和7年度のスケジュールは以下の通り予定されています。
- 通常申請(第1回):令和7年9月30日頃まで
- 最終申請(第2回):令和7年11月30日頃まで
※家計急変世帯については、急変発生後随時受け付ける場合がありますが、年度末(2月〜3月)には締め切られます。詳細は県の発表を確認してください。
採択されるための重要ポイントと注意点
この給付金は「審査」というよりも「要件確認」の性質が強いですが、書類不備による不支給や遅延を防ぐために以下の点に注意してください。
■ 申請時のチェックポイント
- 課税証明書の年度間違い:「令和7年度(令和6年分所得)」が必要です。前年度のものを出さないように注意。
- 親権者全員の証明:両親がいる場合は父・母両方の課税証明書が必要です。どちらか一方だけでは判定できません。
- 口座名義の相違:申請者(保護者)と口座名義人は同一である必要があります。生徒名義の口座は原則不可です。
- 修正液の使用不可:書き損じた場合は二重線と訂正印で修正するか、新しい用紙を使用してください。消せるボールペンも不可です。
よくある質問(FAQ)
申請にあたって寄せられることの多い質問をまとめました。
参考情報:その他の支援制度
香川県の奨学給付金以外にも、自治体によっては独自の支援制度や、将来のキャリア形成を後押しする助成金が存在します。視野を広げて様々な制度を知っておくことも、家計防衛や子どもの未来のために重要です。
例えば、将来的に技術職を目指す若者に対しては、技術向上を支援するような制度も一部の自治体では実施されています。直接的な関係はありませんが、行政支援の幅広さを知る参考としてご覧ください。
参考記事:【2025年度】愛知県 技能五輪・アビリンピック選手育成支援助成金 完全ガイド
また、保護者の方自身の経済的自立や事業拡大を支援する補助金も各地に存在します。地域活性化と雇用創出を目的とした補助金の一例です。
参考記事:【2025年度】中種子町雇用機会拡充事業補助金ガイド|最大1200万円!創業・事業拡大の申請手順
まとめ
香川県の「奨学のための給付金」は、高校生のいるご家庭にとって非常に大きな支えとなる制度です。特に私立高校に通う場合や兄弟が多い世帯では、年間15万円以上の給付となるケースもあり、家計への影響は決して小さくありません。
重要なのは「期限内に」「不備なく」申請することです。学校からの案内を見落とさず、不明点があればすぐに学校や県の窓口に問い合わせてください。経済的な不安を少しでも解消し、お子様が充実した高校生活を送れるよう、この制度を最大限に活用しましょう。
最終確認アクションリスト:
- 7月以降、学校からの配布物を毎日チェックする
- 課税証明書(両親分)を早めに取得する
- 申請書の記入漏れがないか3回確認する
- 提出期限(第1回:9月末、第2回:11月末)を手帳に書き込む