東京圏から熱海市等の地方自治体へ移住し、就業や起業を行う方を対象に、最大100万円(子育て世帯は一人につき100万円加算)を支給する『移住・就業支援金』の令和7年度(2025年度)受付が開始されました。本制度は、東京23区に在住・通勤していた方が地方での新しい生活とキャリアをスタートさせるための強力な公的支援です。本記事では、申請要件から必要書類、審査を通過するためのポイントまでを網羅的に解説します。
この記事でわかること
- 移住・就業支援金の具体的な支給金額と加算金の内容
- 東京圏からの移住元要件および移住先の5つの就業タイプ
- 申請から受取までの具体的な5ステップと必要書類
- 返還義務を回避するための注意点と審査をスムーズに進めるコツ
令和7年度 移住・就業支援金の概要と支給金額
移住・就業支援金は、東京一極集中の是正と地方の担い手不足解消を目的とした国の交付金を活用した事業です。移住先の自治体(熱海市、長泉町、三島市、鹿児島市等)によって細かな規定は異なりますが、基本的な枠組みは統一されています。
世帯構成に応じた支給金額の詳細
本支援金の最大の特徴は、子育て世帯に対する手厚い加算金です。18歳未満の子供を帯同して移住する場合、子供一人につき100万円が加算されるため、世帯によっては300万円を超える支援を受けることが可能です。
具体例:子供2人の4人家族の場合
世帯基本額 100万円 + 子供2人分 200万円 = 合計 300万円
※自治体(鹿児島市等)によっては、独自の移住奨励金との選択制、あるいは併給不可の場合があります。事前に確認が必要です。
移住支援金を受け取るための『移住元』の要件
本支援金は、東京一極集中の是正を目的としているため、移住前の居住地および勤務地に厳格な規定があります。以下の要件1および要件2をいずれも満たす必要があります。
重要:通勤期間のカウントに関する注意点
- 雇用者としての通勤の場合、雇用保険の被保険者としての期間に限られます。
- 連続1年以上の起算点は、移住する3ヶ月前まで遡ることが可能です。
- 東京圏とは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県を指します(条件不利地域を除く)。
移住先での『就業・働き方』に関する5つのタイプ
支援金を受けるには、移住後の働き方が以下のいずれかに該当する必要があります。単に引越しをするだけでは対象外となるため、求人選びや働き方の設定が非常に重要です。
1. 一般就業タイプ(マッチングサイト掲載求人)
都道府県が運営する支援金対象求人サイト(静岡県なら『しずおか就職net』、鹿児島県なら『かごJob』等)に掲載されている『支援金対象』の求人に新規就業することが条件です。
- 週20時間以上の無期雇用契約であること。
- 3親等以内の親族が代表を務める企業への就業でないこと。
- 求人サイトに支援金対象として掲載された日以降に応募すること。
2. 専門人材タイプ
内閣府が実施する『プロフェッショナル人材事業』または『先導的人材マッチング事業』を利用して就業した場合です。高度な専門知識を持つ人材が地方企業の中核として参画することを支援します。
3. テレワークタイプ
現在の職場(東京圏の企業等)を辞めずに、自己の意思により移住し、テレワークで業務を継続する場合です。所属企業からの命令(転勤・出向等)でないことが大前提となります。
テレワーク申請時の厳格な基準
勤務日数の1/5を超えて勤務先に出勤する場合や、定期券相当の交通費の支給を受けている場合は、移住先を拠点としたテレワークとみなされず、不採択となる可能性が極めて高いです。原則、移住先で週20時間以上のテレワーク実施が求められます。
4. 関係人口タイプ
自治体独自の基準に基づき、その地域に深い関わりを持つ方が対象となります。熱海市や鹿児島市、三島市ではそれぞれ独自の要件を設けています。
- 熱海市:39歳以下、または市内企業での副業、過去の居住経験など。
- 三島市:市内の小中高を卒業、またはバス・タクシー運転手、保育士等の特定の担い手職種への就業。
- 鹿児島市:『かごしま市IJU倶楽部』の会員であることや、町内会活動への参加意思があること。
5. 起業タイプ
静岡県や鹿児島県が実施する『地域創生起業支援事業』に応募し、採択(交付決定)を受けている必要があります。移住支援金とは別に、起業支援金(最大200万円等)を受けられるケースが多く、併用が可能です。起業支援金の決定から1年以内に移住支援金の申請を行う必要があります。
失敗しないための申請ステップ(完全ガイド)
移住支援金は予算枠が決まっており、先着順で受付終了となる場合が多いため、スピード感と正確な準備が必要です。
1
事前相談の実施
移住前または就職活動を開始する前に、必ず移住先の自治体窓口へ相談してください。要件の合致確認や予算残数の確認を最初に行うのが鉄則です。
2
就業・起業・移住の実施
マッチングサイト経由での内定取得や、起業支援金の決定を経て、実際に現地へ住民票を移します。転入後3ヶ月以上1年以内が一般的な申請可能期間です。
3
書類の準備と提出
就業証明書(勤務先に記入依頼)、移住元の除票、納税証明書、誓約書などを揃えます。熱海市のように、事前相談がないと受け付けない自治体もあるため注意が必要です。
4
審査・交付決定
自治体による審査が行われます。要件の再確認や書類の不備修正を経て、問題がなければ交付決定通知書が届きます。
5
支援金の振込
決定後、指定の口座に一括で振り込まれます。多くの場合、決定から1ヶ月程度で入金されます。
専門家が教える!採択されやすい申請書の書き方とノウハウ
補助金や支援金の申請において、審査員が最も重視するのは『継続性』と『要件の整合性』です。以下のポイントを意識してください。
1. 5年以上の定住意思を明確に示す
申請書には必ず『5年以上継続して居住する意思』を誓約する項目があります。これまでのキャリアや移住の動機を、地域の課題解決や貢献と結びつけて記述できると、信頼性が増します。単に『お金がもらえるから』という態度は、書類の端々に現れやすいため注意が必要です。
2. 企業との事前連携を密にする
一般就業タイプの場合、企業側にも『就業証明書』の作成を依頼する必要があります。企業がこの制度を正しく理解していない場合、証明書の不備で申請が遅れることがあります。内定時に『移住支援金を活用したい』旨を伝え、必要な協力を得られるようにしておきましょう。
3. 類似補助金との比較と賢い選択
自治体によっては、独自の住宅購入補助や家賃補助を別途設けている場合があります。移住支援金と併用できるもの、できないものを精査し、最も総受給額が大きくなるスキームを選択しましょう。一般的に、国の交付金を財源とする『移住支援金』が最も高額になることが多いです。
成功のポイント:相談履歴を記録する
自治体の窓口担当者と話した日付、担当者名、回答内容をメモに残しておきましょう。万が一、審査過程で解釈の相違が生じた際、過去の相談経緯をエビデンスとして提示できることは大きな強みになります。
知らないと危険!返還義務が生じる3つのパターン
支援金は『移住して終わり』ではありません。以下のケースに該当すると、受け取った支援金の全額または半額の返還を求められます。家計に甚大な影響を及ぼすため、必ず把握しておいてください。
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1. 3年未満の転出(全額返還)
申請から3年が経過する前に、その自治体から住民票を他へ移した場合、全額の返還義務が生じます。急な転勤や家族の事情であっても、原則として例外は認められません。 -
2. 1年以内の離職(全額返還)
一般就業タイプ等で、就業した企業を1年以内に退職した場合です。ただし、自己都合ではなく会社の倒産等の場合は免除される可能性がありますが、基本的には厳しい基準です。 -
3. 3年以上5年未満の転出(半額返還)
3年は経過したものの、5年以内に自治体外へ転出した場合は、受給額の半額を返還する必要があります。地方自治体は、少なくとも5年以上の定住を強く期待しています。
よくある質問(FAQ)
Q夫婦ともに条件を満たしている場合、2人分(60万×2)受給できますか?
いいえ、同一世帯で1回限りの申請となります。2人以上の世帯として100万円を申請するのが一般的です。重複して受給することはできません。
Q転職活動中に移住した場合、対象になりますか?
対象になりますが、申請期限に注意が必要です。転入後1年以内に、支援金対象の企業へ就業し、申請書類を提出する必要があります。先に移住した後にじっくり仕事を探すことも可能ですが、1年の期限は厳守です。
Q派遣社員としての就業は対象外ですか?
原則として『無期雇用の正社員等』が対象となる自治体がほとんどです。有期契約の派遣社員や、目的達成後に解散するプロジェクト単位の雇用は対象外となるケースが多いため、正規雇用であることを雇用契約書等で証明できる必要があります。
Q23区外の東京圏に住んでいますが、対象になりますか?
はい、埼玉県、千葉県、東京都(23区外)、神奈川県のうちの『条件不利地域以外』に在住し、23区内に通勤していたのであれば対象になります。ただし、居住のみで23区内に通勤していない場合は、23区在住者でない限り対象外となります。
Q申請に必要な『就業証明書』はいつ会社に依頼すべきですか?
移住し、就業を開始してから3ヶ月程度経過したタイミングが理想的です。自治体によっては『就業後3ヶ月以上経過していること』を要件としている場合があるためです。申請前に必ず最新の募集要綱でタイミングを確認してください。
移住・就業支援金は、最大300万円を超える非常に大きな支援ですが、その分要件は細かく、提出書類も多岐にわたります。最も大切なのは『移住前の事前相談』です。本記事でご紹介した各要件(移住元、移住先、就業タイプ)をご自身が満たしているか、まずはセルフチェックを行い、早めに希望する自治体の窓口へお問い合わせください。あなたの地方での挑戦が、この支援金によってより確実なものとなることを願っています。
移住相談・資料請求を検討中の方へ
各自治体の窓口では、支援金の詳細だけでなく、現地の住まいや暮らしの相談も受け付けています。まずは公式サイトから相談予約を行いましょう。
免責事項: 本記事の情報は2025年4月時点の各自治体発表資料(熱海市、長泉町、鹿児島市、三島市等)を基に作成しています。補助金の内容や予算状況は日々変動します。実際に申請を行う際は、必ず各自治体の公式サイトで最新の交付要綱、募集要項を確認し、直接窓口へ相談してください。