地方就職学生支援事業は、東京圏の大学に在学する卒業年度の学生が、地方の企業への就職活動を行う際の交通費や移住に伴う移転費を支援する制度です。本制度を活用することで、就職活動における経済的負担を大幅に軽減し、新たな土地でのキャリア形成を円滑に進めることが可能となります。
この記事でわかること
- 交通費支援金と移転費支援金の詳細な支給金額
- 移住元(東京圏)と移住先、および就業先に関する厳格な要件
- 申請に必要な書類チェックリストと失敗しないための注意点
- 万が一の際の返還規定と居住継続の義務について
地方就職学生支援事業の概要と支援金額
本事業は、内閣府の推進する地方創生施策の一環として、各市区町村が実施しています。主に『交通費支援金』と『移転費支援金』の2種類で構成されており、自治体によって上限額や対象範囲が異なります。
1. 交通費支援金(就職活動の負担軽減)
卒業年度の学生が、県外(地方)の企業に採用選考(面接や試験)を受けに行く際の往復交通費を補助します。一般的に公共交通機関(新幹線、航空機、特急、バス、船舶等)の利用が対象となります。
交通費支援金(上限例)
11,000円~40,000円
2. 移転費支援金(引越し費用のサポート)
就職が決まり、実際にその自治体へ移住する際の引越し費用を支援します。自治体によっては、見積書等の提出により実費全額を補助する場合や、定額(例:66,000円)を補助する場合があります。
支援対象となるための厳格な要件
本支援金を受け取るためには、移住元、移住先、就業先の3つの側面から定められた全ての要件を満たす必要があります。特に『卒業年度』と『居住期間』の定義に注意してください。
1. 移住元に関する要件(どこから来るか)
- 対象大学: 東京都内に本部がある大学の東京圏内キャンパスに在学(原則4年以上)していること。
- 居住地: 卒業・修了年度において、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)のうち、条件不利地域を除く地域に継続して居住していること。
条件不利地域の例(対象外となる地域)
以下の地域に居住している、またはキャンパスがある場合は対象外となるケースが多いため、事前確認が必須です。
- 東京都: 大島町、八丈町、小笠原村などの島しょ部、奥多摩町、檜原村など
- 埼玉県: 秩父市、飯能市、小鹿野町などの山間部
- 千葉県: 銚子市、館山市、南房総市、大多喜町など
- 神奈川県: 三浦市、山北町、箱根町など
2. 移住先に関する要件(どこへ移るか)
- 居住意思: 申請を行う自治体に、5年以上継続して居住する意思を有していること。
- 申請時期: 卒業・修了日から1年以内、かつ就業開始日から1年以内であること。(交通費の在学中申請の場合は別途規定あり)
3. 就業に関する要件(どこで働くか)
- 勤務地: 移住先の都道府県内に所在する企業等であること。
- 雇用条件: 週20時間以上の無期雇用契約に基づいていること。
- 限定社員: 勤務地を特定の地域に限定する『勤務地限定型社員』としての採用であること。
- 対象外: 官公庁(一部を除く)、風俗営業、3親等以内の親族が経営する企業等は対象外です。
失敗しないための申請ステップと必要書類
申請は『予算の範囲内』で行われるため、要件を満たしていても予算が終了した場合は受け取れません。早めの準備と正確な書類提出が不可欠です。
1
就職内定の獲得と証明書依頼
地方の企業から内定を得た後、企業に『内定証明書』または『就業証明書』の作成を依頼します。これが申請の第一歩となります。
2
領収書等の証憑書類の保管
就職活動時の新幹線や飛行機の領収書を必ず保管してください。宛名は本人名義である必要があります。引越し費用についても見積書と領収書が必要です。
3
移住先への転入届と住民票取得
卒業後、速やかに移住先の市町村へ転入届を提出します。支援金の申請には、新しい住所が記載された住民票が必要です。
4
各自治体への申請書提出
申請書、誓約書、同意書等に必要事項を記入し、窓口または郵送で提出します。書類に不備があると受理されないため、チェックリストを活用してください。
5
審査完了と支援金の振込
自治体による審査が行われ、交付決定通知が届きます。その後、指定した金融機関口座に支援金が振り込まれます。
必要書類チェックリスト
注意!支援金の返還が必要になるケース
本支援金は、定住を条件として支給されるものです。以下の条件に該当した場合、支給された金額の全額または半額を返還しなければなりません。計画的な移住が求められます。
返還規定の基準
- 全額返還: 申請内容に虚偽があった場合、または転入日から3年未満に当該自治体から転出した場合。
- 全額返還: 就業開始日から1年以内に要件を満たす職を辞した場合(例外あり)。
- 半額返還: 転入日から3年以上5年以内に当該自治体から転出した場合。
よくある質問(FAQ)
Q自家用車で就職活動に行った場合のガソリン代は対象になりますか?
一般的に自家用車にかかるガソリン代や高速道路料金は対象外です。鉄道、航空機、高速バス等の公共交通機関を利用した実費のみが対象となることがほとんどです。
Qインターンシップのために移動した費用は対象になりますか?
本支援金の多くは『採用選考(面接・試験)』を対象としており、インターンシップや会社説明会のみへの参加は対象外となる場合が多いです。内定に直結する選考過程である必要があります。
Q企業から交通費の一部が支給されている場合はどうなりますか?
企業負担分を差し引いた、本人の『実費負担額』の2分の1などが補助対象となります。企業からの支給額を隠して申請すると虚偽申請となりますのでご注意ください。
Q通信制大学や短期大学の学生は対象になりますか?
本制度は原則として『東京都内に本部がある4年制大学または大学院』の学生が主に対象となります。短期大学や専門学校、通信制については自治体ごとに判断が分かれるため、各市町村へ直接お問い合わせください。
Q申請の期限はいつまでですか?
多くの自治体では年度末(2月~3月頃)を期限としていますが、予算が上限に達した時点で早期に受付を終了する場合があります。就職が決まったら、卒業を待たずに早めに相談することをおすすめします。
専門家からのアドバイス:採択されるためのコツ
地方就職支援金は、非常に魅力的な制度ですが、書類の不備による不採択や返還リスクが伴います。スムーズな受給のためのポイントは以下の3点です。
成功のための3カ条
- 証憑の管理を徹底する: 宛名が不明確なレシートではなく、必ず本人名義の領収書を取得してください。また、クレジットカードの明細や通帳のコピーも求められることがあります。
- 自治体の『移住相談窓口』を活用する: 申請書を書く前に、自治体の移住担当者に電話で相談し、自分が要件に当てはまっているか確認することで、ミスを未然に防げます。
- 勤務地限定の雇用を確認する: 求人票や雇用契約書に『勤務地を限定する』旨の記載があるか事前に確認してください。将来的に東京に戻る可能性がある『全国転勤あり』の職種は対象外となるリスクが高いです。
地方就職学生支援事業は、あなたの新しい門出を強力にバックアップする制度です。東京での学びを地方で活かしたいと考えている学生の方は、この機会を逃さず活用しましょう。詳細な要件や最新の予算状況については、就職予定先の市区町村の公式サイトを必ず確認し、早めに申請の準備を進めることが成功への鍵となります。
まずは対象自治体の窓口へご相談ください
申請のタイミングや必要書類の詳細は、転入予定先の市町村によって異なります。早めの相談がスムーズな受給への近道です。
免責事項: 本記事の情報は2025年4月時点の各自治体公表資料を基に作成しています。支援金の内容、要件、上限額は自治体により異なり、また年度途中で変更される場合があります。申請にあたっては、必ず転入予定先の自治体公式サイトで最新の交付要綱等を確認してください。