東京都は、気候危機やエネルギー危機といった社会的課題の解決を資金面で後押しするため、SDGs債(グリーンボンド、ブルーボンド、トランジションボンド、ソーシャルボンド)の発行を支援しています。本事業は、債券発行時に必要となる外部レビュー費用等の負担を軽減するため、最大600万円の補助金を交付するものです。特に個人投資家向けの債券発行に対しては補助率が大幅に引き上げられており、サステナブルファイナンスに取り組む事業者にとって極めて有益な制度となっています。
この記事でわかること
- SDGs債(4種類)それぞれの補助金額と補助率
- 令和6年度から新たに追加されたブルーボンドの支援内容
- 個人投資家向け特例による自己負担実質ゼロの仕組み
- Jグランツを利用した電子申請の手順と必要書類
- 環境省や経済産業省の国補助金との併用ルール
SDGs債発行支援事業の概要と目的
東京都では、国際金融都市・東京の実現に向けた取り組みの一環として、サステナブルファイナンスの普及を強力に推進しています。SDGs債とは、環境改善や社会的課題の解決を目的としたプロジェクトの資金調達のために発行される債券の総称です。具体的には、グリーンボンド、ブルーボンド、トランジションボンド、ソーシャルボンドの4種類が対象となります。
これらの債券を発行する際、投資家に対してその適格性を証明するために「外部レビュー」を取得することが一般的ですが、その費用は発行体にとって負担となる場合があります。本補助金は、この外部レビュー等に要する経費を東京都が補助することで、より多くの事業者がSDGs債市場に参画できる環境を整えることを目的としています。
対象となるSDGs債の定義
本事業で対象となる4つの債券は、それぞれ以下のような特徴を持っています。
- グリーンボンド:再生可能エネルギー、エネルギー効率化、クリーン輸送などの環境改善プロジェクトを資金使途とする債券。
- ブルーボンド:海洋資源の保護や海洋環境の改善を目的とした「青い経済(ブルーエコノミー)」に資するプロジェクトに特化した債券。
- トランジションボンド:脱炭素社会の実現に向けた長期的な戦略に基づき、温室効果ガス削減への移行(トランジション)に取り組むプロジェクトを支援する債券。
- ソーシャルボンド:教育、保健、手頃な価格の基礎インフラへのアクセスなど、社会的課題の解決に貢献するプロジェクトを資金使途とする債券。
補助金額と補助率の詳細
補助額は対象となる債券の種類や、ターゲットとする投資家(機関投資家向けか個人投資家向けか)によって異なります。令和6年度からは、個人投資家の参画を促すため、特例として補助率が大幅に引き上げられています。
自己負担なしのケース
- ブルーボンド:都の補助(10分の6)と環境省の補助(10分の4)を合算することで、補助上限額の範囲内であれば自己負担は発生しません。
- 個人投資家向け特例:グリーンボンドおよびトランジションボンドにおいて、個人向けに発行される場合は都の補助率が上乗せされ、国補助金と合わせることで自己負担なし(補助上限額有)となります。
- ソーシャルボンド(個人向け):都が全額(10分の10、上限400万円)を補助するため、自己負担なしで発行支援が可能です。
補助対象経費と申請要件
対象となる経費の内容
本補助金の対象となる経費は、原則として「外部レビューの付与に係る経費」です。これには、第三者機関による評価報告書の作成費用や、債券のフレームワークが国際的な基準(ICMAの原則等)に適合しているかを確認するための検証費用が含まれます。申請にあたっては、これらの経費の支出を証明する見積書や契約書が必要となります。
申請者の要件
補助対象となるのは、それぞれの債券種別ごとに以下の要件を満たす事業者です。
- グリーン/ブルーボンド:環境省の補助金交付決定を受けている、発行を支援する者。
- トランジションボンド:経済産業省の補助金交付決定を受けている、発行を支援する者。
- ソーシャルボンド:金融庁公表の『ESG評価・データ提供機関に係る行動規範』への受け入れを表明しており、かつソーシャルボンドについての外部レビュー付与実績がある者。
重要:事前のgBizID取得について
本補助金の申請は、デジタル庁が運営する補助金電子申請システム『Jグランツ』を推奨しています。Jグランツの利用には、法人共通認証基盤『gBizIDプライム』アカウントが必須です。アカウント発行には郵送による審査を伴い、2〜3週間程度の期間を要する場合があるため、申請を検討されている方は早めに取得手続きを行ってください。
申請から受取までの5ステップ
1
事前準備(国補助金の申請・gBizID取得)
グリーン・ブルー・トランジションボンドの場合は、まず環境省や経済産業省の補助金申請を行い、交付決定を受けてください。また、Jグランツ利用のためのgBizIDもこの段階で準備します。
2
東京都への交付申請
Jグランツまたは郵送にて、補助金交付申請書(様式第1)や経費内訳書、誓約書などの必要書類を提出します。ソーシャルボンドの場合は、発行等支援計画書なども併せて提出が必要です。
3
審査・交付決定
東京都において内容の審査が行われ、適当と認められた場合に「交付決定通知」が届きます。事業の着手(外部レビューの契約等)は、原則としてこの交付決定後に行う必要があります。
4
事業実施と実績報告
外部レビューを完了させ、SDGs債の発行等を行います。事業完了後、速やかに完了実績報告書(様式第10または12)を提出し、実際にかかった費用を報告します。
5
補助金の請求・受領
東京都による実績審査を経て補助金額が確定します。確定通知を受けた後、精算払請求書を提出することで、指定の口座に補助金が振り込まれます。
よくある質問(FAQ)
Q個人投資家向け債券の定義は何ですか?
本事業における個人投資家向け債券とは、一般の個人が購入可能な形態で発行される債券を指します。申請時には『個人投資家向けSDGs債にかかる確認書』等の提出が必要となります。
Q国の補助金を受けられない場合、都の補助金も申請できませんか?
グリーン、ブルー、トランジションボンドについては、原則として環境省や経済産業省の補助金交付決定が要件となっているため、国の補助を受けられない場合は都の補助も対象外となります。一方、ソーシャルボンドは都独自の制度であるため、国の補助の有無は関係ありません。
Q補助金を受けた場合、会社名は公表されますか?
はい、補助金を受け取った場合、会社名や補助内容などが東京都のホームページ等で公表されることがあります。これは公的資金の透明性を確保するための措置です。
Qトランジションボンドの募集時期はいつですか?
令和6年度のトランジションボンドについては、別途6月中旬以降の募集開始を予定しています。最新の情報は東京都の公式ホームページをご確認ください。
Q郵送での申請も受け付けていますか?
はい、Jグランツによる電子申請のほか、東京都スタートアップ・国際金融都市戦略室への郵送による申請も可能です。ただし、事務手続きの効率化のためJグランツの利用が推奨されています。
専門家による申請のポイント
SDGs債の発行支援補助金は、金額が大きく、非常に魅力的な制度ですが、その分求められる書類の精度や専門性も高くなります。採択を確実にするためのポイントをまとめました。
1. スケジュール管理の徹底
多くのSDGs債において、国の補助金交付決定が前提条件となります。国の補助金と都の補助金の締め切り、および実際の債券発行スケジュールを逆算して、無理のない計画を立てることが重要です。特にトランジションボンドは国(経済産業省)の審査に時間を要することが多いため、早めの準備が必要です。
2. 外部レビュー機関との早期連携
補助対象経費の主役である外部レビューは、実績豊富な評価機関に依頼する必要があります。これらの機関は案件が集中すると納期が延びる傾向にあるため、あらかじめ候補となる機関とコンタクトを取り、見積もりや期間の目安を確認しておきましょう。
3. 投資家属性の明確化
個人投資家向け特例を利用する場合、補助率が大幅に上がりますが、その分『本当に個人投資家をターゲットとしているか』が厳密にチェックされます。発行フレームワークや募集要項において、個人の参加を促す工夫(小口化など)を明確に記載することで、審査の納得度を高めることができます。
東京都のSDGs債発行支援事業は、企業のサステナビリティ経営を資金調達の面から強力にバックアップする制度です。ブルーボンドの追加や個人向け特例の強化により、活用の幅はさらに広がっています。自社の環境・社会貢献活動をアピールしつつ、有利な条件で資金調達を行う絶好の機会です。ぜひ本補助金の活用を検討し、持続可能な社会の実現と企業の成長を両立させてください。
SDGs債発行支援事業の申請をお考えの方へ
詳細は東京都の募集案内および交付要綱を必ずご確認ください。また、Jグランツでの申請にはgBizIDが必要です。早めの準備をおすすめします。
免責事項: 本記事の情報は令和6年度(2024年度)の募集要項に基づき作成されています。補助金の詳細、募集期間、対象要件などは変更される場合があります。申請にあたっては、必ず東京都の公式サイトで配布されている最新の交付要綱、募集案内、様式等を確認してください。本記事による情報の正確性は期していますが、申請結果や事業実施に伴う損害について一切の責任を負いかねます。