東京都内の中小企業が海外市場へ進出する際、最大の障壁の一つとなるのが『商標権』を巡るトラブルです。本事業は、進出予定国でビジネスの障害となる他社類似商標等の取消しや無効化を目的とした取り組みに対し、最大500万円の助成金と専門家による伴走支援を提供するものです。自社ブランドの国際的な信頼を守り、安全な海外展開を実現するための強力なバックアップとなります。
この記事でわかること
- 海外商標対策支援助成事業の具体的な助成金額と助成率
- 助成対象となる経費の詳細(不使用取消審判や無効審判など)
- 申請にあたって必須となる『知財相談』の進め方
- 採択率を高めるための申請書類作成のポイントと知財戦略
- 海外展開における商標トラブルの典型事例と対策手法
なぜ海外商標対策が必要なのか:中小企業が直面するリスク
日本国内でどれほど有名なブランドであっても、海外市場においては『先願主義(先に申請した者が権利を得る)』の原則により、第三者に商標を先に登録されてしまうリスクが常に存在します。これを『冒認商標(ぼうにんしょうひょう)』と呼びます。他社に自社ブランド名を先に登録されてしまうと、その国での製品販売が差し止められたり、法外なライセンス料を要求されたりするケースが後を絶ちません。
放置することの危険性
- 進出予定国でのECサイト販売ができなくなるリスク
- 現地パートナー(代理店)との契約が破綻する可能性
- 商標権侵害として、現地の税関で商品が差し押さえられる実害
このような事態を解決するためには、相手方の商標を無効化するための法的な手続きが必要となりますが、これには多額の費用と高度な専門知識が必要となります。本助成事業は、こうした経済的・技術的な壁を乗り越えるために設計されています。
海外商標対策支援助成事業の制度概要
令和7年度の海外商標対策支援助成事業は、東京都内の中小企業が海外での商標権を確保・維持し、ビジネスを円滑に進めるための包括的な支援を提供します。
助成内容と支援規模
助成対象となる具体的な経費項目
本事業では、他社の不当な商標登録を排除するために必要な一連の費用が助成対象となります。単なる商標出願費用ではなく、『争い』に関わる費用が主眼となっています。
1. 情報収集関連費用
相手方の商標登録状況や、その商標が実際に現地で使用されているかどうかの実態調査(マーケット調査)にかかる費用が含まれます。不使用取消審判を提起する前の証拠収集として非常に重要です。
2. 異議申立・取消審判・無効審判関連費用
現地の特許庁等に対して、商標の登録異議申し立てや、長期間使用されていない商標を取り消すための不使用取消審判、あるいは登録自体が無効であることを訴える無効審判の手続きにかかる専門家報酬(弁理士・弁護士等)および特許庁への納付金が対象です。
3. 行政訴訟・情報提供関連費用
審判の結果に不服がある場合の行政訴訟費用や、審査官に対して登録を阻止するための情報提供を行うための費用も含まれます。長期戦が予想される海外での法的手続きにおいて、3カ年という長期の助成期間が活きてきます。
申請から採択・助成金受領までの5ステップ
本助成金は、申請前に必ず専門家との面談が必要なプロセスとなっています。計画的に準備を進めましょう。
1
知財相談の実施(必須)
東京都知的財産総合センターにて、専門相談員に現在のトラブル状況や海外進出計画を相談します。この相談記録が申請の前提条件となります。
2
申請書類の作成と提出
助成事業申請書、海外展開計画書、見積書等を揃えて提出します。随時受付ですが、予算枠があるため早めの提出が推奨されます。
3
審査・交付決定
書類審査および必要に応じて面接審査が行われます。事業の妥当性や将来性、知財対策の必要性が評価され、交付決定通知が届きます。
4
対策事業の実施
現地の代理人(弁理士・弁護士)を通じて、実際に異議申立や審判の手続きを開始します。進行状況はセンターに報告する必要があります。
5
実績報告と助成金請求
事業完了後(または年度ごと)、支出した経費の領収書や成果物を添えて実績報告を行います。確認後、確定した助成金が振り込まれます。
採択率を高める申請書の書き方と重要ポイント
本事業は競争的な側面があり、単にトラブルがあることを伝えるだけでは不十分です。以下の要素を意識して申請書を作成してください。
成功のポイント:知財戦略の明確化
1. 事業計画との連動: その商標を取り戻すことが、現地市場での売上目標や事業規模にどのように貢献するのか、具体的な数値を用いて説明する。
2. 緊急性と必要性: 放置した場合の損失(模倣品の流通、市場独占の喪失など)を具体的に示し、今すぐ対策を講じるべき理由を明確にする。
3. 専門家の見解: 知財相談で得たアドバイスを反映させ、勝算のある(または手続きが必要な)法的手段を選択していることを示す。
よくある質問(FAQ)
Q商標の新規出願費用も助成対象になりますか?
本事業のメインは『対策』です。他社の類似商標等を取り消すための手続きが主目的となります。通常の新規出願のみを目的とする場合は、特許庁の『中小企業等海外出願支援事業』など別の補助金を検討することをお勧めします。
Q3年間の助成期間がありますが、毎年申請が必要ですか?
いいえ、1回の採択で最長3カ年までのプロジェクトとして認められます。ただし、年度ごとに予算執行状況や進捗の報告が必要となり、それに基づいて助成金が交付されます。
Q個人事業主でも申請可能ですか?
はい、東京都内に事業所を持つ個人事業主の方も対象となります。ただし、法人同様、事業実態や今後の海外展開計画を証明する必要があります。
Q不使用取消審判で負けてしまった場合、助成金は支払われませんか?
助成金は手続きの実行に対して支払われるものであり、最終的な法的な成否(勝訴・敗訴)に直結するものではありません。適切に手続きが行われ、実績報告が承認されれば支払われます。
Q複数の国で商標トラブルがありますが、全ての国が対象になりますか?
1社1案件が原則ですが、一つの案件として関連する複数国での対策を盛り込むことが可能な場合があります。具体的には知財相談の際に相談員にご確認ください。
専門家活用のメリットと東京都のサポート体制
海外の商標法は国ごとに異なり、現地の法律事務所との連携も欠かせません。東京都知的財産総合センターでは、助成金だけでなく、専門家によるアドバイスも提供しています。
ここがポイント:伴走型支援
本事業の特徴は、単なる資金援助にとどまらない点にあります。知財センターの専門家は、申請前だけでなく、事業実施中も必要に応じてアドバイスを提供してくれます。これにより、不慣れな海外での法的手続きにおいても、着実な一歩を踏み出すことが可能です。
海外商標対策支援助成事業は、都内中小企業のグローバルブランド戦略を守るための究極の盾となります。他社にブランドを乗っ取られてからでは、解決までに多額の費用と数年の歳月を要します。将来のトラブルを防ぐため、あるいは現在の障害を排除するために、本助成金の活用をぜひご検討ください。まずは東京都知的財産総合センターへの相談がすべてのスタートです。
まずは無料の知財相談から始めましょう
海外展開の不安を解消し、助成金活用の可能性を専門家と一緒に探ります。
免責事項: 本記事の情報は令和7年度の公募予定に基づき作成されています。助成金の詳細な要件や受付期間は変更される場合がありますので、申請にあたっては必ず東京都中小企業振興公社(東京都知的財産総合センター)の公式サイトにて最新の募集要項をご確認ください。