鹿児島県南九州市の農家のみなさまにとって、サツマイモ基腐病の拡大は経営を揺るがす深刻な問題といえるでしょう。令和7年産で発生した被害を教訓に、令和8年産での影響を最小限に抑えるための新たな支援策が動き出します。この制度は単なる金銭的な補助だけでなく、持続可能な農業を実現するための防除対策や機械導入を幅広くサポートする内容です。申請期間が非常に短く設定されているため、早めの準備が欠かせません。
この補助金の要点
令和7年産の基腐病被害を乗り越え、次期作の生産を維持するための経費が支援されます。防除用機械の導入や排水対策、土壌消毒といった具体的な取組が対象となり、2026年1月中旬には申請を締め切る非常にタイトなスケジュールです。実績報告も段階的に行われるため、計画的な実施が求められます。
南九州市サツマイモ基腐病対策支援策の全体像
今回の支援策は、サツマイモ基腐病という難敵に対し、地域全体で立ち向かうための仕組みです。2018年に沖縄で確認されて以来、鹿児島県内でも急速に広がったこの病害は、糸状菌による感染が原因で、放置すれば圃場全体が枯死する恐れもあります。南九州市では特にえい地区などで被害が顕著であり、単収の減少が大きな課題となってきました。そこで本事業では、被害が著しい圃場への直接的な対策だけでなく、防除用機械の導入支援などを通じて、地域農業の基盤を守ることを目指しています。
支援の柱は大きく分けて三つ存在します。一つ目は防除対策への支援、二つ目は被害が著しい圃場への集中的な対策、そして三つ目が防除用機械の導入に係る経費の補助です。特に排水性の向上は基腐病対策の要といえるため、GPSレベラーを活用した圃場整備などの先進的な取組も視野に入っています。これらは国への申請期間が厳密に定められているため、市役所への提出期限は厳守しなければなりません。
補助対象となる具体的な取組と経費
対象となる活動は、サツマイモを病気から守るためのあらゆる局面に及びます。まず注目したいのが、腐熟促進剤や土壌消毒剤、そしてウイルスフリー苗や健全な種いもの購入費用です。病気を「持ち込まない」ためには苗の質が重要ですし、「増やさない」ためには適切な薬剤散布や排水管理が欠かせません。トンネル栽培に利用する資材や、地力を高めるための堆肥の散布も支援の範囲に含まれています。
さらに踏み込んだ対策として、被害が3割を超えるような深刻な圃場では、土壌消毒剤と併せて被覆資材を導入する取組や、他作物への転換を図る際の計画策定も支援の対象になります。防除用機械の導入については、トラクターに装着するGPSレベラーや、発病株を早期発見するためのセンシングドローンなどが想定されています。これらの設備は高額になりがちですが、本制度を活用することで負担を軽減しながら最新技術を取り入れることが可能でしょう。
主な支援対象
防除資材・機械導入・他作物転換
申請から事業完了までのステップ
手続きを進めるにあたって、まずは自分がどの窓口に申請すべきかを確認するところから始めましょう。過去に申請経験がある方は当時の提出先である市役所や農協(JAいぶすき、JA南さつま)が基本となります。今回が初めての申請で、かつ農協に出荷している場合は農協へ、それ以外の方は市役所の各支所へ足を運ぶことになります。
書類の準備と作成
様式1の申請書をはじめ、作付圃場の地番や面積、実施する取組をまとめた様式2、3を準備します。資材購入を予定している場合は様式4の各項目を埋めていきましょう。
申請書の提出
2026年1月9日から1月16日17時までの期間内に、頴娃、知覧、川辺のいずれかの窓口へ提出します。機械導入を希望する場合は事前の連絡が必要です。
事業の実施と資材購入
計画に基づき防除作業や資材の購入を行います。この際、領収書や請求書(納品日、資材名、金額が明記されたもの)を必ず保管しておかなければなりません。
第一回実績報告
2026年2月27日までに、残渣処理や土壌消毒、早期栽培の取組に関する証拠書類を提出します。期限を過ぎると受理されないため要注意です。
第二回実績報告
2026年3月25日までに、ウイルスフリー苗の利用や堆肥散布、作物転換に関する報告を行います。写真や作業記録が必要になるケースもあります。
採択率を高めるための対策とコツ
この支援策は、要件を満たせば広く活用できるものですが、書類の不備で足元をすくわれないよう工夫が必要です。まず、南九州市の特性である「排水性」に着目した計画を立てるのが賢明でしょう。例えば、頴娃地区のような黒ボク土の地域では、大雨の際の滞水が病原菌を広げる大きな原因となります。GPSレベラーでの整地や、排水路(額縁明渠)の設置を組み合わせた防除計画を書類に盛り込むことで、対策の本気度が伝わりやすくなります。
また、資材購入の証明書類は、単にレシートを保管するだけでなく、品名や数量が明確に記載されているか事前に業者へ確認しておきましょう。「サツマイモ用土壌消毒剤」といった具体的な記載がないと、審査で差し戻されるリスクがあります。さらに、環境負荷低減のクロスコンプライアンスチェックシートも必須書類となっており、適切な農薬管理や廃棄物処理を行っていることをしっかりと自己申告することが求められます。こうした細かい積み重ねが、スムーズな支給につながるポイントです。
ポイント
排水対策とセットで申請することを検討してください。縦勾配0.4%程度の緩やかな傾斜をつけた圃場整備は、基腐病菌の温床となる「たまり水」を防ぐ非常に有効な手段として評価されています。
最新の技術動向:ドローンとレベラーの活用
近年、鹿児島大学などの研究により、スマート農業技術が基腐病対策に有効であることが証明されつつあります。センシングドローンを活用すれば、上空20メートルから圃場の異常を検知し、発病リスクの高いエリアを特定できます。これにより、人が圃場に立ち入って病気を広めるリスクを抑えつつ、早期の抜き取りや局所的な防除が可能になります。今回の支援策で機械導入を検討されている方は、こうした将来的な自動化・効率化を見据えた選択をすることをおすすめします。
また、新品種「みちしずく」への注目も高まっています。従来のコガネセンガンよりも基腐病に強く、多収が期待できるこの品種は、加工用やでん粉用として南九州市の新たなエースになる可能性を秘めています。支援策を活用して健全な苗を確保しつつ、こうした抵抗性品種への切り替えを検討することも、持続可能なサツマイモ栽培には欠かせない視点といえるでしょう。
よくある質問
Q. 申請期間を過ぎてしまった場合、個別対応はしてもらえますか?
A. 残念ながら、国への申請期間が厳格に定められているため、期限を過ぎてからの受付は一切行われません。1月16日の17時が最終期限ですので、余裕を持って提出してください。
Q. 実績報告の書類に領収書ではなく「見積書」でも代用できますか?
A. 実績報告には、実際に支払いが完了したことを証明する領収書や請求書(納品確認ができるもの)が必須です。見積書では補助対象とは認められませんのでご注意ください。
Q. 機械導入の申請は個人で行っても良いのでしょうか?
A. 機械導入に関しては、組合の設立や共同利用の協議が必要になる場合があります。まずは農業振興課の生産流通指導係に連絡し、詳細な条件を確認することをおすすめします。
Q. 被害が出ていない圃場でも予防として資材費の申請は可能ですか?
A. 本事業は、令和7年産で被害が発生した地域において次期作の影響を最小限にすることを目的としています。地域的な被害があれば予防的な防除対策も対象になり得ますが、詳細は窓口で相談してください。
Q. ウイルスフリー苗の購入費用は全額補助されるのですか?
A. 支援対象にはなりますが、全額補助とは限りません。補助率や上限額が設定されているため、最新の説明会資料や様式4-1の計算欄を参考に、自己負担額を把握しておくことが重要です。
注意点
実績報告の期限が2段階に分かれています。2月の報告を忘れると、たとえ3月の報告を完璧に行っても支援を受けられなくなる可能性があるため、カレンダーに期限を書き込んでおきましょう。
まとめ
南九州市のサツマイモ基腐病対策支援策は、地域農業の未来を守るための重要なセーフティネットです。防除資材の購入から機械導入まで幅広くカバーしていますが、申請期限が2026年1月16日までと非常に短いのが最大の注意点です。まずは手元にある昨年の収穫実績や被害状況を整理し、必要な様式を揃えることから始めてください。排水対策やスマート農業技術の導入も視野に入れ、次期作での豊作を目指していきましょう。不明な点があれば、知覧、頴娃、川辺の各支所窓口へ早めに相談することをおすすめします。
※本記事の情報は執筆時点のものです。最新情報は公式サイトや南九州市農業振興課でご確認ください。