人手不足が深刻な課題となるなか、中小企業が優秀な人材を確保し、定着させるためには福利厚生の充実が欠かせません。長野県諏訪市では、従業員の将来への安心感を支える退職金制度の導入を後押しするため、共済掛金の一部を補助する制度を用意しています。新たに退職金制度を整えたいと考えている経営者や、採用力を強化したい事業主にとって、コスト負担を抑えながら職場環境を改善できる絶好の機会です。この記事では、補助金の具体的な内容や申請のポイント、さらには他の支援施策との組み合わせ方まで、専門家の視点で詳しく解説します。
この補助金の要点
中小企業退職金共済(中退共)や特定退職金共済(特退共)に新規加入した事業所が対象です。従業員1人あたり月額200円の補助が3年間にわたって受けられるため、制度導入初期の経費負担を軽減できます。諏訪市内に事業所を構える中小企業や個人事業主であれば、業種を問わず活用できる非常に使い勝手の良い制度と言えるでしょう。
諏訪市中小企業退職金・特定退職金共済掛金補助金の概要
この補助金は、諏訪市内で事業を営む皆さんが従業員のために退職金制度を設ける際の金銭的なハードルを下げることを目的としています。対象となる共済は、国が運営に関与する中小企業退職金共済制度(中退共)と、商工会議所などが実施する特定退職金共済制度(特退共)の2種類です。どちらの制度も、毎月の掛金を積み立てることで、従業員が退職する際に直接退職金が支払われる仕組みとなっており、企業側にとっては確実な資金準備が可能になるという大きなメリットがあります。
補助の対象となるのは、事業所としてこれらの共済に新しく加入した場合です。既に加入している従業員の増員ではなく、会社全体として制度を初めて取り入れたタイミングがトリガーとなります。まず、事業主が共済契約を結び、毎月の掛金を遅滞なく納付していることが前提条件です。その上で、年度末の申請期限までに市役所へ手続きを行うことで、支払った掛金の一部が戻ってくる流れです。補助を受けられる期間は加入から3年間と定められており、長期的な視点で福利厚生を強化したい企業にとって心強い支えになるはずです。
補助金額と支援のボリューム感
具体的な支援額は、従業員1人につき月額200円です。一見すると少額に感じるかもしれませんが、補助期間である3年間(36ヶ月)をフルに活用すると、従業員1人あたり合計で7,200円の支援を受ける計算になります。たとえば、従業員10名の会社であれば、3年間で72,000円の補助が得られることになります。中退共自体の掛金は、従業員ごとに月額5,000円からといった設定が可能ですが、国が実施している掛金助成制度とこの諏訪市の補助金を併用することで、実質的な会社負担をさらに圧縮できる点は見逃せません。こうした小さな積み重ねが、経営の安定化と従業員の満足度向上に大きく寄与します。
従業員1人あたりの最大補助額(3年間合計)
7,200円
なぜ今、諏訪市の事業者は退職金制度を導入すべきなのか
諏訪市は古くから精密機械工業の集積地として知られ、ものづくりの魂が息づく街です。しかし、近年の労働市場では、大手企業だけでなく周辺自治体との人材獲得競争も激化しています。求職者が職場を選ぶ際、給与水準と同じくらい重視するのが、長く安心して働ける環境があるかどうかという点です。退職金制度の有無は、ハローワークの求人票や採用サイトにおいて非常に目立つ項目であり、制度があるだけで企業の信頼感は大きく向上します。特に、将来の生活設計に不安を抱く若手層や、中途採用で即戦力となる層にとって、退職金共済への加入は強力な安心材料となります。
また、経営面での利点も見逃せません。中退共や特退共の掛金は、税法上、全額を損金または必要経費として算入できます。つまり、福利厚生を充実させながら、同時に節税対策を行うことができるわけです。内部留保として退職金を積み立てる場合、その原資には法人税がかかりますが、共済制度を利用すれば税引き前の利益から積み立てが可能になります。さらに、今回の諏訪市の補助金を活用すれば、経費を抑えつつ法定外福利厚生の質を高めることができます。これこそが、中小企業診断士の視点からも推奨したい『賢い経営』のあり方です。
ポイント
国の助成制度(中退共の新規加入助成など)との併用が可能です。市と国の両方から支援を受けることで、導入から1年目の負担を極限まで減らす戦略を立てましょう。また、パートタイマー向けの特例掛金設定も検討の価値があります。
対象となる事業者と詳細な条件
補助金の対象となるのは、諏訪市内に住所または事業所を有し、現に事業を営んでいる中小企業者や個人事業主です。中小企業の定義については、資本金や従業員数に基づいて判断されますが、一般的な製造業や小売業、サービス業であればほとんどのケースで該当します。ただし、市税を滞納していないことが必須条件となりますので、申請前には納税状況を今一度確認しておく必要があります。また、事業所として新規に共済契約を結んだ場合に限定されるため、過去に加入していたことがある場合は、詳細な再加入の規定について事前に商工課へ相談することをお勧めします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象共済 | 中小企業退職金共済(中退共)、特定退職金共済(特退共) |
| 補助額 | 被共済者(従業員)1人につき月額200円 |
| 補助期間 | 共済加入から3年間(最長36ヶ月分) |
| 申請期限 | 毎年3月10日まで(令和7年度分) |
申請から補助金受領までの5ステップ
手続き自体は決して複雑ではありませんが、年度末の締め切りに間に合わせるためのスケジュール管理が重要です。余裕を持って準備を進めていきましょう。
共済制度への加入手続き
まず、中退共(勤労者退職金共済機構)や特退共(商工会議所等)へ加入を申し込みます。従業員の同意を得た上で、掛金額を決定し、契約を締結してください。
月々の掛金納付
毎月の掛金を口座振替などで支払います。補助金の対象となるには、滞納がないことが絶対条件です。領収書や振替記録をしっかり保管しておきましょう。
交付申請書の作成
諏訪市の指定様式をダウンロードし、必要事項を記入します。被共済者名簿や掛金の納付を証明する書類のコピーなど、添付書類の準備も進めます。
諏訪市商工課へ書類提出
例年3月10日が申請の締め切りです。郵送または窓口持参にて書類を提出します。年度ごとの申請が必要ですので、2年目、3年目も忘れずに行いましょう。
補助金の振込
審査が終わると、4月下旬頃に指定した銀行口座へ補助金が振り込まれます。通知書が届きますので、内容に相違がないか確認してください。
採択されやすいポイントと実務的なアドバイス
この補助金は、要件を満たしていれば基本的に交付される性質のものですが、それでもいくつか注意すべき『勘所』があります。まず第一に、申請時期をカレンダーに登録しておくことです。この制度は、支払った後の事後申請となります。年度の途中で加入しても、補助金の申請は年度末にまとめて行う必要があるため、うっかり忘れてしまうケースが少なくありません。一度タイミングを逃すと、その年度分の補助を受けられなくなる恐れがあるため、経理担当者と情報を共有しておくべきでしょう。
次に、諏訪市が実施している他の補助金との相乗効果を狙うことも検討してください。たとえば、職場環境を整えるための『職場環境整備事業補助金』や、従業員の健康管理を支援する『ウェルビーイング経営推進事業補助金』など、諏訪市は中小企業支援に非常に積極的な自治体です。退職金制度という『お金の安心』に加え、働きやすさという『環境の安心』を同時に整えることで、地域で選ばれる企業としてのブランドを確立できます。申請書類を商工課へ提出する際、他に活用できる制度がないか窓口の担当者に相談してみるのも、補助金をフル活用するための有効な手段です。
注意点
補助金の対象は『新たに加入した事業所』です。事業継承等で既に制度がある場合は対象外となる可能性があるため、組織変更があった場合は事前に確認が必要です。また、補助金は税抜の掛金ではなく、実際に支払った金額ベースでの算出となりますが、掛金自体に消費税はかかりません。
よくある質問(FAQ)
Q. 従業員が途中で増えた場合、その人も補助の対象になりますか?
A. はい、補助期間内(加入から3年間)であれば、新しく加入した従業員の方についても対象となります。ただし、事業所として新規加入してから3年が経過した後は、新しい従業員が増えても補助は受けられません。あくまで事業所としての新規導入を支援する制度だからです。
Q. 役員も補助の対象に含まれますか?
A. 中退共や特退共の制度上、原則として従業員(被雇用者)が対象となります。使用人兼務役員であれば対象になる場合がありますが、法人役員のみで加入する場合は制度の趣旨と照らし合わせて判断されるため、事前に共済側と市役所の両方へ確認することをお勧めします。
Q. 国の中退共掛金助成と併用しても大丈夫ですか?
A. 全く問題ありません。むしろ、併用することで導入初期のコストを大幅に下げることができるため、積極的に活用すべきです。国と市の両方から支援を受けることは二重受領には当たらず、正当な手続きとして認められています。
Q. 補助金の申請は毎年必要ですか?
A. はい、年度ごとに申請が必要です。一度の申請で3年分が確約されるわけではありません。毎年度の支払実績に基づいて補助額が確定するため、毎年3月の申請期限を忘れないようにスケジュール管理を徹底してください。
Q. 掛金を途中で増額した場合、補助金も増えますか?
A. 補助額は掛金の額に関わらず『1人につき月額200円』と一定です。したがって、掛金を5,000円から10,000円に引き上げたとしても、市からの補助額は変わらない点に注意してください。あくまで一律の定額支援という仕組みです。
まとめ
諏訪市の中小企業退職金・特定退職金共済掛金補助金は、従業員1人あたり最大7,200円(3年間)を支援する非常に堅実な制度です。少子高齢化が進み、人材の確保がますます困難になるこれからの時代において、退職金制度は『選ばれる会社』になるための必須条件の一つと言えます。中退共や特退共の持つ節税メリットや安全性に加え、市の補助金を活用することで、無理のない形で福利厚生をアップグレードできます。まずは制度の内容を把握し、自社の採用戦略や定着支援の一環として導入を検討してみてはいかがでしょうか。申請期限である3月10日を目指し、一歩踏み出す価値は十分にあります。
※本記事の情報は執筆時点(令和7年度公募情報)のものです。最新の申請要領や様式については、必ず諏訪市公式ホームページまたは商工課の窓口でご確認ください。