新潟県内で農業を営む皆さまや福祉事業所の運営者さまにとって、人手不足の解消と安定した経営基盤の構築は喫緊の課題といえるでしょう。現在、県内では『農福連携』という、農業分野と福祉分野が手を取り合うことで相互の課題を解決する画期的な取り組みが加速しています。本記事では、新潟市や上越市を中心に展開されている具体的な支援策や、実際に採択された成功事例を紐解きながら、補助金を活用して事業を成長させるための実用的なノウハウを詳しくお伝えします。
この補助金の要点
農業の人手不足解消と障がい者の就労機会確保を同時に実現する『農福連携』への強力なバックアップが用意されています。上越市の6次産業化戦略では直売所の売上13億円を目指すなど、高付加価値化に向けた専門家派遣や設備投資への道が開かれている点が特徴です。
新潟県が推進する農福連携と6次産業化の全容
新潟県における農福連携は、単なるボランティアの枠を超え、一つの産業として確立されつつあります。北陸農政局新潟県拠点が発行する事例集を紐解くと、農業者が福祉を理解し、福祉事業所が農業のプロとして技術を習得する相互理解のプロセスが重視されていると分かります。新潟市では『12次産業化』という独自の概念を掲げ、農業に福祉や医療、教育などの6分野を掛け合わせることで、地域農業に新しい価値を吹き込む挑戦を続けています。
具体的には、新潟市あぐりサポートセンターがハブとなり、農業者と福祉事業所のマッチングを支援する体制が整いました。これまでに128件ものマッチングが成立しており、事業終了後も継続的な連携が行われている点は、施策の有効性を物語っています。一方で上越市に目を向けると、令和5年度から令和9年度までの5年間を見据えた『6次産業化推進戦略』が策定されました。ここでは米単作からの脱却を目指し、園芸作物や畜産を組み合わせた複合経営の推進が柱に据えられています。
新潟県内での注目の指標
上越市では直売所の年間販売額を13億円まで引き上げる目標を掲げており、学校給食への地場産野菜の使用率も21%を目指すなど、出口戦略を見据えた手厚い支援が期待できます。
補助対象となる事業と具体的な活用シーン
支援の対象は多岐にわたりますが、まず検討すべきは農産物の高付加価値化に向けた設備投資です。例えば、規格外の野菜を加工してジャムやスープにするための調理機器や、鮮度を保つための急速冷凍技術の導入が想定されます。新潟市の『CuRA!』という事業者の事例では、農薬や化学肥料を使わずに栽培したハーブや野菜をジャムに加工することで、廃棄処分を減らしつつ収入を底上げすることに成功しました。これはまさに、6次産業化の理想的なモデルといえるでしょう。
次に、人材育成や専門家派遣も見逃せないポイントです。上越市の戦略では、新潟県地域プランナーの派遣回数を増やす方針を打ち出しています。自分一人では解決が難しい商品開発や販路開拓の悩みも、専門家の視点が入ることで突破口が見つかるケースは少なくありません。さらに、農福連携人材育成支援事業を活用して『農福連携サポーター』を養成する講座も開講されており、連携をスムーズに進めるためのソフト面での支援も充実しています。
採択事例から学ぶ成功のヒント
成功している事業者に共通しているのは、障がい者の特性を『作業の足かせ』ではなく『独自の強み』として捉え直している点にあります。長岡市の特定非営利活動法人『UNE(ウネ)』は、中山間地域の棚田を維持するために、障がい者や生活困窮者、地域の高齢者が協働して耕作を行う体制を築きました。この取り組みは『ノウフク・アワード2020』で優秀賞を受賞するなど、全国的にも高く評価されています。彼らは単に米を作るだけでなく、農家レストランや民宿を経営することで、地域おこしと居場所づくりを同時に達成しているのです。
また、新潟市北区の曽我農園では、トマトの生産から加工までを一貫して行っています。当初は福祉事業所への作業依頼をお手伝い程度に考えていたそうですが、適性を見極めて人選を行うことで、今では経済活動を支える重要な一員として欠かせない存在になっています。ハウス内にトイレがない、あるいは点在するハウス間の移動手段といった課題を一つずつ改善していく姿勢こそが、補助金を有効に活用し、事業を継続させる秘訣といえるでしょう。輸出向けのエディブルフラワーを手がける脇坂園芸の事例のように、緻密な作業が求められる分野で農福連携が威力を発揮するケースも増えています。
ここがポイント
農福連携を成功させるには、作業を下請けとして外注するのではなく、一つの商品を作り上げるパートナーとして迎え入れるマインドセットが不可欠です。それにより、現場の士気が高まり、結果として品質の向上に繋がります。
申請から採択までの具体的なステップ
補助金を受け取るためには、計画的な準備が欠かせません。大まかな流れを理解し、早めに動き出すことが成功への近道となります。
現状の把握と協力者の確保
自社の農作業の中で、どの工程を外部に依頼できるか洗い出します。新潟市ならあぐりサポートセンター、上越市なら市の農村振興課へ相談し、協力してくれる福祉事業所を探すところから始めましょう。
事業計画書の策定
地域プランナー等の専門家を活用し、6次産業化・地産地消法に基づく『総合化事業計画』などを作成します。ここで具体的な売上目標や、地域課題の解決にどう寄与するかを明文化することが採択率を高めるコツです。
補助金の申請
公募期間に合わせて必要書類を提出します。新潟県や各市町村、農政局など、申請先によって窓口が異なるため注意が必要です。オンライン申請が推奨されるケースが増えているので、J’Grants等のシステム利用も検討してください。
事業の実施とモニタリング
採択後は計画に沿って設備投資や農福連携の活動を開始します。領収書や作業日誌の保管、写真撮影などは実績報告の際に必須となるため、日々の管理を徹底しましょう。
実績報告と入金
事業完了後に報告書を提出し、検査を経て補助金が交付されます。後払い方式が基本ですので、あらかじめ運転資金を金融機関から調達しておくなどの準備も大切でしょう。
審査で重視されるポイントと採択のコツ
行政の担当者が計画書を見る際に最も注目するのは、『継続性』と『地域への波及効果』です。単発のイベントで終わってしまうような計画ではなく、3年後、5年後にどのように地域農業を支え、雇用の場を維持しているかを具体的に示す必要があります。上越市の事例に見られるように、雪室(ゆきむろ)や発酵文化といった地域独自の資源をどう絡めるかという視点は、他産地との差別化を強調する上で非常に有効です。
また、農福連携においては、『安全管理』への配慮も欠かせません。障がい者が安全に作業できるための環境整備(スロープの設置、熱中症対策、分かりやすい作業手順書のマニュアル化など)が盛り込まれていると、計画の具体性が高く評価されます。さらに、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、フードロスの削減や、多様な人材の活躍を推進する姿勢を前面に押し出すことも、現代の補助金申請においては非常に強力な武器となります。
注意点
補助金は『交付決定』の前に発注や購入をしてしまうと、原則として対象外となります。スケジュール管理を徹底し、必ず事務局からの許可が出てから契約を進めてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 農業法人ではなく、個人農家でも農福連携の補助金は使えますか?
A. はい、多くの事業で個人農家も対象となります。ただし、福祉事業所と連携して作業を委託する形式や、共同で商品を開発する形式など、支援メニューによって要件が異なるため、まずは市町村の農政窓口や農協(JA)へ確認することをおすすめします。
Q. 福祉事業所側が農業を始める場合、どのような支援がありますか?
A. 福祉事業所が自ら農業経営に参入する場合、農地の借入れ支援や、作業用機械の購入費用の一部を助成する制度があります。認定農業者になることで、さらに手厚い制度融資を受けられる道も開けます。
Q. 補助金の採択率はどのくらいでしょうか?
A. 農福連携や6次産業化に関連する補助金は、地域の課題解決に直結するため、一般的に採択率は比較的高め(70%〜80%程度)で推移しています。ただし、予算には上限があるため、早めの申請準備が肝心でしょう。
Q. 専門家派遣の『地域プランナー』は、どのようなことを相談できるのですか?
A. 加工食品のレシピ開発、パッケージデザインのアドバイス、衛生管理(HACCP)の導入支援、さらに販路となるバイヤーとのマッチングなど、上流から下流まで幅広く相談可能です。初回相談は無料のケースが多いのも魅力です。
Q. 農を作業を依頼した際、福祉事業所へ支払う謝礼金も補助対象になりますか?
A. 新潟市の過去の事例では、試験的な導入を促進するために謝礼金の一部を助成する事業がありました。現在の最新の募集状況については、各自治体の農福連携推進窓口にてご確認ください。
これからの新潟農業を支える農福連携の未来
ここまで見てきた通り、新潟県内での農福連携は単なる労働力の補完ではなく、地域コミュニティを再生し、新しい経済循環を生み出す大きな力を持っています。上越市の戦略目標にあるように、米、園芸、畜産を組み合わせた複合経営を進める上で、多様な人材が関わる農福連携は強力なエンジンとなるでしょう。中山間地域の耕作放棄地を守り、伝統野菜の価値を次世代に繋いでいく。そんな大きな目標も、目の前の小さな連携から始まります。
最初は不安も多いかもしれませんが、新潟県内には先行して道を切り拓いてきた多くの『同志』がいます。あぐりサポートセンターや地域プランナーといった伴走支援を賢く利用することで、リスクを抑えながら新しい一歩を踏み出すことができるはずです。補助金というツールを最大限に活用し、皆さまの情熱が詰まった農業経営が、福祉という優しい力と結びついて大きく花開くことを心より応援しています。
まとめ
新潟県・上越市の農福連携は、補助金や専門家派遣といった公的支援が非常に充実しています。6次産業化による高付加価値化と、福祉分野との連携による安定的な労働力確保を組み合わせることで、持続可能な強い農業を構築できるでしょう。まずは地元の相談窓口へ足を運び、自社に最適な支援メニューを見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事の情報は、北陸農政局新潟県拠点および上越市の公開データを基に執筆したものです。最新の募集要項や詳細な条件については、必ず各実施機関の公式サイトをご確認ください。