鹿児島県志布志市の農業を支えるサツマイモ栽培ですが、近年はサツマイモ基腐病(もとぐされびょう)という深刻な脅威にさらされています。この病害は一度発生すると収穫量に甚大な被害を及ぼすため、早期の防除と徹底した対策が欠かせません。志布志市では令和8年産に向けた対策として、薬剤購入費や散布委託費を支援する事業をスタートさせました。農家の皆様が安心して生産を続けられるよう、この補助制度の詳細を専門家の視点で詳しく解説します。
この補助金の要点
サツマイモ基腐病の被害が発生した、あるいは発生リスクのあるほ場を対象に、指定薬剤の購入費用や散布の委託費用を支援する制度です。補助率は定額または2分の1以内となっており、出荷実績のある事業者を通じて申請を行う仕組みが特徴と言えます。
かんしょ重要病害虫被害対策事業の全体像
志布志市が実施するこの事業は、国の基金を活用してサツマイモ基腐病の蔓延を防ぐことを目的としています。鹿児島県全体で大きな問題となっている基腐病は、カビの一種である糸状菌によって引き起こされ、茎の付け根が黒く腐ってしまう恐ろしい病気です。この病原菌は土壌や苗を通じて広がるため、個別の農家だけでなく地域全体での取り組みが求められています。
今回の支援策は、令和7年度の対策として令和8年産の生産に向けた準備をサポートするものです。具体的には、病原菌を殺菌するための薬剤費用や、大規模なほ場での散布を効率化するための委託費用が対象となります。自力での防除には限界を感じている方や、コスト面で十分な薬剤散布をためらっていた方にとって、非常に心強い制度であることは間違いありません。
補助上限額・補助率
上限規定なし(詳細は公式サイトで確認)(定額または1/2以内)
補助対象となる農家・事業者
この事業を利用できるのは、志布志市内でサツマイモを栽培しており、かつ令和7年産において基腐病の被害が発生した、あるいは被害のリスクが高いほ場を管理している経営体です。個人農家だけでなく、法人や集落営農組織なども対象に含まれます。ただし、重要なポイントとして、単独で市役所に申請するのではなく、JA(農業協同組合)やでん粉製造事業者、焼酎メーカーといった『出荷実績のある事業者』を通じて手続きを行う必要があることを覚えておきましょう。
注意点
申請期間が2026年1月13日から1月17日までと、非常に短く設定されています。事前の相談や書類準備を早めに済ませておかないと、受付に間に合わない可能性があるため注意が必要です。また、購入時期についても指定があるため、過去に遡ってすべての経費が認められるわけではありません。
対象となる経費の詳細
補助の対象となる経費は、大きく分けて『消耗品費』と『委託・外注費』の2種類です。まず消耗品費については、基腐病の防除に効果があると認められている指定薬剤の購入費用が該当します。苗の消毒に使用する薬剤や、ほ場への本田散布用の農薬などが主な対象です。次に委託・外注費ですが、これはドローンや無人ヘリコプター、あるいは動力噴霧器などを用いた農薬散布作業を外部の業者に依頼した場合の費用が対象となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 指定薬剤購入費 | 基腐病対策に有効な登録農薬(ベンレート水和剤、アミスター20フロアブル等) |
| 農薬散布委託費 | ドローン散布、ラジコンヘリ散布などの外注費用 |
| 事務経費 | とりまとめ団体(JA等)が負担する事務的な経費(条件あり) |
これらの経費を申請する際には、領収書や納品書といった支払いの証拠となる書類が不可欠です。また、薬剤を使用したほ場の面積や、散布を実施した日付などの作業記録も求められます。志布志市農業サポートセンターでは、日頃から農作業記録簿の記入を推奨していますが、補助金申請においてもこの記録が非常に重要な役割を果たします。
申請から補助金受取までの5ステップ
手続きをスムーズに進めるための流れを確認していきましょう。本事業は団体経由の申請となるため、一般的な補助金とは少し異なるプロセスが必要です。
出荷先事業者(JA・メーカー等)への相談
まずは普段の出荷先であるJAやでん粉工場等に、本事業の申請を検討している旨を伝えます。個別の農家を取りまとめて申請を行う団体としての役割を彼らが担います。
必要書類の収集と作成
薬剤の領収書や散布委託の契約書、作業記録、被害状況がわかる写真などを準備します。これらの資料は申請の正当性を証明する大切な証拠となります。
志布志市または農業再生協議会への提出
とりまとめ団体を通じて、志布志市農政畜産課または鹿児島県農業再生協議会へ申請書を提出します。2026年1月の公募期間を逃さないよう注意してください。
審査および交付決定
提出された内容が要件を満たしているか審査が行われます。問題がなければ交付決定通知が届き、支援を受ける権利が確定します。
補助金の振込
最終的な実績報告を経て、指定の口座に補助金が振り込まれます。通常はとりまとめ団体を経由して各農家へ分配されます。
採択されるためのポイントと防除のコツ
この補助金を活用するだけでなく、本来の目的である『基腐病の撲滅』を達成するためには、いくつかの重要な視点があります。まず、申請時に最も重視されるのは『防除計画の妥当性』です。単に農薬を撒くというだけでなく、苗の消毒から植え付け後の管理、そして排水対策に至るまで、トータルでの対策が行われているかどうかが問われます。
ポイント
志布志市では『基腐病防除対策マニュアル』を公開しています。このマニュアルに沿った対策を実施していることを申請書でアピールしましょう。特に排水不良のほ場では、高畝(たかうね)の採用や明渠(めいきょ)の設置など、水はけを良くする取り組みをセットで行うことが推奨されます。
また、健全な苗の確保も不可欠な要素です。基腐病は苗からの感染が非常に多いため、自家採苗を行う場合は徹底した消毒を行い、可能であればバイオ苗などのウイルスフリー苗の導入を検討してください。志布志市農業サポートセンターでは、こうした栽培技術に関する相談も受け付けているため、補助金申請と合わせて技術指導を受けるのも良い方法です。
よくある質問(FAQ)
Q. 家庭菜園でサツマイモを作っていますが、申請できますか?
A. 原則として、本事業は経営体(農家)を対象としています。出荷実績のある事業者を通じて申請する仕組みのため、自家消費のみを目的とした栽培は対象外となる可能性が高いです。ただし、家庭菜園向けの防除対策については市から情報提供が行われています。
Q. どのような薬剤が対象になりますか?
A. サツマイモ基腐病に対して農薬登録がある薬剤が対象です。具体的にはベンレート水和剤(苗消毒)や、アミスター20フロアブル(本田散布)などが挙げられます。対象薬剤のリストは最新の情報をJAや市役所へ確認してください。
Q. 被害が出ていないほ場でも、予防的に使えますか?
A. 本事業の主旨は被害が発生した、あるいはリスクがある経営体への支援です。地域全体で蔓延を防ぐための予防散布も対象に含まれることがありますが、基本的には過去の発生状況や周囲の発生状況に基づいた判断となります。出荷先団体へ相談してみましょう。
Q. 散布を自分で行った場合の『手間賃』は補助されますか?
A. 自分で行う作業の労賃は補助対象となりません。あくまで外部の専門業者に委託した場合の費用(委託費・外注費)が対象となります。ご自身で行う場合は、薬剤の購入費用のみを申請する形になります。
Q. 領収書を紛失してしまったのですが、申請可能ですか?
A. 支出を証明する書類がない場合、補助金を受けることは極めて困難です。購入した店舗に再発行を依頼するか、納品書や通帳の振込履歴などで代用できないか確認が必要ですが、基本的には領収書の原本管理を徹底してください。
まとめ
サツマイモ基腐病は、志布志市の農業にとって最大の課題の一つと言っても過言ではありません。今回の『かんしょ重要病害虫被害対策事業』は、単なる資金援助にとどまらず、地域全体でこの難局を乗り越えるための重要なインフラと言えるでしょう。申請期間が非常に限られているため、迷っている時間はありません。まずは出荷先のJAやメーカー、あるいは志布志市農政畜産課へ足を運び、現在の状況を相談することから始めてください。適切な薬剤散布と技術的な対策を組み合わせることで、次の収穫シーズンを笑顔で迎えられるよう準備を進めていきましょう。
※本記事の情報は執筆時点(2025年1月)のものです。公募条件や対象経費の詳細は変更される可能性があるため、必ず志布志市役所や鹿児島県農業再生協議会の公式サイトで最新情報をご確認ください。