京都府内で水稲栽培に取り組む農業者の皆様にとって、近年の夏場における記録的な猛暑と雨不足は、収穫量やコメの品質に直結する深刻な課題となっています。令和7年産の作付けにおいても、厳しい気候条件によって思うような成果が得られなかったほ場が少なくありません。こうした状況を受け、京都府では被害を受けた生産者の皆様が次期作である令和8年産において高品質な米生産を再開できるよう、土壌改良に必要な経費を支援する制度を整えました。本記事では、この支援事業の仕組みから申請のポイントまで、専門家の視点で詳しく紐解いていきます。
この補助金の要点
令和7年産米で高温や渇水の被害を受けた農家を対象に、翌年の作付けに向けた土壌改良資材の購入費を半分助成するものです。10aあたり最大1万円という手厚い支援が受けられるため、土づくりの質を高めて経営の安定化を図る絶好の機会と言えるでしょう。
米生産回復支援事業の目的と背景
京都府がこの事業を立ち上げた背景には、気候変動による農業リスクの常態化があります。かつては珍しかった夏場の極端な高温や、長期間雨が降らないことによる渇水は、今や毎年のように水田を襲う脅威となりました。特に令和7年産においては、多くの地域で収量不足や白未熟粒の発生といった品質低下が懸念されています。このようなダメージを受けた農家が自力だけで立ち直るのは容易ではありません。そこで京都府は、ダメージを受けた土壌のポテンシャルを回復させ、次回の収穫を確かなものにするための肥料や改良資材の導入をバックアップすることに決めたのです。
この事業の大きな特徴は、単なる損失補填ではなく、未来に向けた投資を支援する点にあります。土壌を適切に改良することは、稲の根を強く張り巡らせ、高温ストレスに強い健康な株を育てることにつながります。つまり、今回の支援を活用して良質な資材を投入することは、令和8年産以降の経営を盤石にするための重要なステップになると考えてください。
気になる支援金額と対象となる経費の内容
まず、皆様が最も関心を持っているであろう補助金の額について見ていきましょう。この事業では、高温や渇水の被害を受けたと認定された令和7年産水稲の栽培面積に応じて、10アールあたり1万円を上限として支給されます。補助率は対象経費の2分の1以内となっているため、例えば10アールあたり2万円以上の資材を投入する場合、そのうちの1万円が戻ってくる計算です。小規模な農地であっても、まとまれば大きな経営支援になりますね。
補助上限額(10aあたり)
10,000円
補助の対象となるのは、令和8年産の作付け時に使用する肥料や土壌改良資材の導入費用です。具体的には、ケイ酸質肥料や堆肥、あるいは土壌の保水性や通気性を高めるための各種資材が想定されています。注意が必要なのは、令和7年4月1日から令和8年2月28日までに実際に納品されたものに限られるという点です。すでに購入して保管しているものや、これから手配を予定しているものがこの期間に収まっているか、伝票の日付をしっかり確認しておきましょう。なお、消費税や地方消費税については補助の対象外となるため、見積もりを立てる際は税抜き価格で計算するのが無難です。
申請できる農家さんの要件をチェック
誰でも申請できるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。京都府内に主な経営基盤を持っている農業経営体であることが大前提ですが、その上で経営規模に関する規定が設けられています。具体的には、経営耕地面積が30アール以上であるか、あるいは農産物の年間販売金額が50万円以上であることが求められます。これは、ある程度の事業規模を持って継続的に農業に取り組んでいる方を優先的に支援しようという趣旨ですね。
また、非常に重要なポイントとして、農業保険制度への加入が必須条件となっている点が挙げられます。水稲共済、あるいは収入保険のいずれかに加入していなければなりません。今回の支援は、公的な保険制度でカバーしきれない部分を補完する役割も持っているため、日頃からリスク管理を行っている農家さんが対象となります。もし未加入の場合は、今後のためにも共済組合やNOSAIに相談してみることをお勧めします。
注意点
被害の証明が必要です。水稲共済であれば損害評価で半損以上の認定を受けていること、収入保険であれば市町村の基準収穫量と比較して収穫量が2分の1以下になっていることが条件となります。単に暑かったからという理由だけでは受理されないため、客観的なデータや評価結果を準備しておきましょう。
申請から交付決定までの具体的なステップ
手続きの流れは、それほど複雑ではありませんが、提出先を間違えないように注意してください。まずは、ご自身が対象となるかどうかを、先ほど説明した被害認定の基準に照らし合わせて確認することから始まります。もし基準を満たしているようであれば、お住まいの地域を管轄する市町村の窓口へ申請書を提出しましょう。各振興局ではなく、まずは市町村が窓口になるという点を覚えておいてください。
書類の作成と準備
京都府のホームページから様式をダウンロードし、栽培面積や購入予定の資材について記入します。領収書や被害を証明する書類のコピーも用意してください。
市町村窓口への提出
募集期間は令和8年1月5日から1月23日までと非常に短いため、年明け早々に動けるよう準備を済ませておきましょう。
審査ととりまとめ
市町村で受理された申請は広域振興局へ送られ、内容が精査されます。不備がある場合は差し戻されることもあるため、連絡が取れるようにしておきます。
交付決定
審査を通過すると京都府から交付決定通知が届きます。これが届いて初めて、補助金を受け取る権利が確定します。
事業の完了と入金
令和8年2月末までにすべての資材導入を完了させ、実績報告を行います。その後、指定の口座に補助金が振り込まれます。
採択されるためのポイントと書類作成のコツ
この補助金は比較的実務に則したものですが、いくつかの落とし穴があります。まず、最も多いミスが納品時期のズレです。令和8年2月末日までに完了する取組であることが必須条件ですので、資材の納品が3月になってしまうと、1円も補助されないという事態になりかねません。冬場は肥料や資材の流通が混み合うこともあるため、早めの注文を心がけるのが鉄則です。また、他の京都府の事業と重複して申請することはできないため、他の似たような支援を受けていないか、経営全体を俯瞰して確認しておく必要があります。
書類作成においては、対象となるほ場の面積と、そこに投入する資材のバランスを合理的に説明できるようにしておきましょう。例えば、10アールあたりの資材投入量が標準的な範囲を大きく逸脱している場合、審査で理由を詳しく問われる可能性があります。あくまで生産回復を目的とした土壌改良であることを念頭に置き、無理のない計画を立てることが、スムーズな採択への近道です。
ポイント
収入保険に加入している方は、ご自身のほ場の反収(10aあたりの収穫量)が、市町村が定めている基準収穫量の半分以下になっているかを、過去の収穫データと照らし合わせて事前に計算しておきましょう。この数字が申請の根拠となるため、非常に重要です。
よくある質問
Q. 飼料用米やWCS(稲発酵粗飼料)を作付している場合は対象になりますか?
A. 本事業の対象は主食用などの水稲ですが、稲WCS(稲発酵粗飼料)については明確に除外されることが規定されています。その他の用途については、お住まいの地域の農産課や振興局に事前に確認することをお勧めします。
Q. 被害を受けていれば、どのような肥料でも補助されますか?
A. 土壌改良に資する資材や肥料が対象です。単なる追肥用の肥料ではなく、あくまで高温や渇水に強い土を作るための資材であることが求められます。実施要領に記載されている内容に沿った資材を選定してください。
Q. 被害の確認書類はどのようなものが必要ですか?
A. 水稲共済の加入者であればNOSAIから発行される損害評価結果の写し、収入保険加入者であれば、収穫量を確認できる書類(出荷伝票の控えなど)と市町村の基準収穫量を比較した資料などが一般的です。
Q. 令和7年中に資材を購入した場合は対象外ですか?
A. 令和7年4月1日以降に納品されたものであれば対象期間に含まれます。ただし、あくまで令和8年産の作付けに使用することが前提ですので、その点が整合するように報告する必要があります。
Q. 申請を忘れて期限を過ぎてしまった場合、救済措置はありますか?
A. 残念ながら、令和8年1月23日の締め切りを過ぎた申請は受理されません。非常に期間が短いため、余裕を持って準備し、市町村の窓口へ足を運ぶようにしてください。
まとめ
京都府の米生産回復支援事業は、厳しい気候条件に立ち向かう農家さんを直接的に支える心強い制度です。10アールあたり最大1万円の支援を受けることで、次期作の品質向上に向けた攻めの土づくりが可能になります。申請期間が年明けのわずか3週間ほどに限られているため、今のうちから被害状況の確認と、令和8年に向けた資材導入の計画を練っておきましょう。美味しい京都のお米を未来へつなぐために、ぜひこの制度を最大限に活用してください。
※本記事の情報は、令和7年度の募集要領に基づいて作成されています。詳細な手続きや最新の要件については、必ずお住まいの市町村窓口や、京都府の各広域振興局にてご確認ください。