長野県内で事業を営む経営者の皆様にとって、避けて通れない課題が賃上げへの対応ではないでしょうか。今回、長野県は物価高騰や深刻な人手不足に立ち向かう中小企業を強力に後押しするため、生産性向上と賃金引上げをセットで支援する新しい補助金制度をスタートさせました。この制度を活用すれば、新しい機械の導入やスタッフのスキルアップにかかる費用を最大960万円までカバーできるため、攻めの経営に転換する絶好のチャンスといえます。
この補助金の要点
現在の賃金水準に応じて3つのタイプが用意されており、最大で10/10という驚異的な補助率が設定されています。設備投資だけでなく人材育成も対象に含まれるため、現場のデジタル化と従業員の成長を同時に図ることが可能です。申請には2つの重要な宣言への登録が必須となるため、早めの準備が採択への近道となります。
長野県が独自に実施する賃上げ環境整備支援事業とは
この補助金は、単に従業員の給料を上げるだけでなく、会社全体の生産性を高めるための『投資』を支援することを目的としています。長野県は製造業から観光業まで多様な産業が根付いていますが、どの業界でも共通しているのは、限られた人員でいかに付加価値を生み出すかという点です。今回の事業では、そのための設備投資や専門家による研修費用などが広く認められています。
制度の大きな特徴は、現在の事業場内最低賃金に応じて申請できるメニューが分かれていることです。すでに県独自の基準を超えている企業向けの『基本型』、国の業務改善助成金と併用して活用する『サポート補助金』、そして特定の期間に賃上げを行った企業向けの『経過措置分』という3本立てで構成されています。自社がどのカテゴリーに該当するのかを見極めることが、まずは最初のステップになるでしょう。
補助上限額(最大)
960万円
3つの類型の詳細と使い分け
一つ目の『賃上げ環境整備促進補助金(基本型)』は、事業場内の最低賃金が1,112円以上1,500円未満の企業が対象です。ここでは設備投資等の費用に対して3/4から、条件を満たせば10/10という非常に手厚い補助を受けられます。上限額も960万円と高額に設定されており、大規模なシステム刷新や高額な工作機械の導入を検討している場合に最適です。
二つ目の『中小企業賃上げ・生産性向上サポート補助金』は、国の業務改善助成金の上乗せとして機能します。こちらは最低賃金が1,061円から1,111円以下の範囲にある企業が利用でき、国の助成金では賄いきれない部分を県が補填してくれる心強い仕組みです。国と県の審査を両方受けることになりますが、実質的な負担を大幅に抑えられるのが魅力ですね。
三つ目の『経過措置分』は、2025年8月から10月までの間に賃上げを先行して実施した企業を救済するためのものです。補助率は賃金水準によって細かく変動しますが、最大で48/50という高い割合が適用されます。このように、自社の現在の立ち位置に合わせて最適なプランを選べる柔軟さがこの補助金の良さだと言えるでしょう。
補助対象となる具体的な投資と取り組み例
どのような経費が対象になるのか、具体例を交えて考えてみましょう。まず製造現場であれば、最新の自動化設備や加工精度の高いCNC旋盤の導入が考えられます。これにより作業時間が短縮され、一人当たりの生産高が向上すれば、それは賃上げの原動力となります。また、物流や建設の現場で活躍するフォークリフトやバックホウの購入も、安全性の向上と作業効率化の両面で有効な投資とみなされます。
サービス業や小売業の場合、POSレジの導入や在庫管理システムの刷新が対象として代表的です。手書きの伝票管理や煩雑な在庫チェックから解放されることで、従業員はお客様への接客や新しいサービスの企画により多くの時間を使えるようになります。こうした『時間の創出』こそが、生産性向上の本質であることを意識して計画を立ててみてください。
さらに注目すべきは人材育成への支援です。機械を導入してもそれを使いこなせる人材がいなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。外部の専門家を招いての操作指導や、特殊な資格取得のための講習、あるいは組織全体を活性化させるためのマネジメント研修なども、一定の条件のもとで補助の対象に含まれます。ハード面とソフト面をバランスよく組み合わせることが、成功の鍵を握ると言えるでしょう。
ポイント
単なる設備の買い替えではなく、その投資によってどれだけ労働時間が削減されたか、あるいは利益率が向上したかという明確なストーリーを構築することが採択率を高めます。数値で効果を示せるように準備しておきましょう。
申請に欠かせない2つの事前準備
この補助金を活用するにあたり、絶対に忘れてはならない条件が2つあります。それは『社員の子育て応援宣言』と『パートナーシップ構築宣言』への登録です。これらは長野県が推進する、働きやすい職場づくりと公正な取引関係の構築を目指す取り組みです。一見すると補助金とは無関係に思えるかもしれませんが、地域社会全体で持続可能な経営を目指すという県の強い意志が反映されています。
子育て応援宣言は、育児休業の取得促進や短時間勤務制度の整備など、自社で取り組む具体的な目標を県に届けるものです。また、パートナーシップ構築宣言は、下請け企業との取引において不当な価格買い叩きを行わないことなどを宣言する全国的な枠組みです。どちらも登録までに一定の時間を要する場合があるため、補助金の申請期限ギリギリになって慌てないよう、真っ先に取り掛かるべき項目です。
注意点
宣言の登録が完了していない状態で補助金の申請を行うことはできません。特にパートナーシップ構築宣言はポータルサイトへの掲載までに数日かかることもあるため、スケジュール管理には十分注意してください。
申請から補助金交付までの5ステップ
現状把握と類型の選択
現在の従業員の賃金台帳を確認し、自社がどの補助タイプに該当するかを特定します。同時に、2つの宣言への登録状況を確認しましょう。
事業計画の策定
導入する設備や研修の内容を決め、見積書を取得します。その投資がどのように生産性向上と賃上げに繋がるかを文章化していきます。
交付申請書の提出
必要書類を揃えて、事務局(Bizサポ長野事務局)へメールまたは郵送で提出します。書類に不備がないか何度も見直すことが大切です。
事業実施と実績報告
採択後、実際に設備を購入したり研修を実施したりします。支払いの証憑(領収書や振込明細)をすべて保管しておく必要があります。
補助金の受領
事務局による実績審査を経て、確定した補助金額が振り込まれます。後払いの制度ですので、当座の資金繰りは計画的に行いましょう。
採択率を高めるための具体的なアドバイス
審査員に響く申請書を書くためには、現状の課題を包み隠さず伝えることから始まります。例えば『現状は受注が増えているのに、旧式の機械のせいで残業が月40時間を超えている』といった具体的な悩みです。そこに『最新設備を導入することで残業を20時間減らし、その浮いたコストを賃上げの原資とする』という論理的な解決策を提示できれば、説得力は格段に増します。
また、人材育成においても同様です。単に『セミナーに参加させる』と書くのではなく、『現在の従業員はデジタルツールへの苦手意識があるため、専門家のマンツーマン指導を通じて全スタッフがクラウドシステムを使えるようにする』といった具合に、誰がどのように成長し、それがどう会社に貢献するのかを明確に描くことが推奨されます。長野県の中小企業ならではの粘り強さと、将来へのビジョンを熱意を持って伝えることが、結果を左右するでしょう。
よくある質問
Q. パートやアルバイトの賃上げも対象になりますか?
A. はい、対象になります。事業場内で最も低い時給(最低賃金)を引き上げることが条件となるため、雇用形態に関わらず要件を満たす必要があります。対象となる従業員数に応じて補助上限額が変わる場合があるため、最新のマニュアルを確認してください。
Q. 既に購入してしまった設備の後付け申請は可能ですか?
A. 原則として、交付決定前に契約・発注したものは対象外です。ただし『経過措置分』などの例外があるため、対象期間に合致しているか事前に事務局へ相談することをお勧めします。基本的には申請して認められてから買うのが鉄則です。
Q. 社員の子育て応援宣言はどのような内容を書けばいいですか?
A. 無理に高いハードルを設定する必要はありません。『毎週水曜日をノー残業デーにする』や『学校行事の際の時間休取得を推奨する』など、自社で確実に実行できることから始めれば大丈夫です。まずは取り組む姿勢を示すことが第一歩となります。
Q. IT導入補助金など、他の国の補助金と併用できますか?
A. 同一の設備投資項目に対して、複数の補助金を重複して受けることはできません。ただし、別の投資(例えばシステムはIT補助金、機械は県の補助金)であれば併用可能なケースもあります。併用を検討する場合は、それぞれの要領を精査する必要があります。
Q. 申請書類が難しそうで不安です。どこで相談に乗ってもらえますか?
A. 伊那商工会議所をはじめとする各地の商工会議所や商工会、あるいは長野県賃上げ・業務改善支援センター(Bizサポ)で相談を受け付けています。専門のアドバイザーが書き方のポイントや必要書類のチェックをサポートしてくれるため、積極的に活用しましょう。
まとめ
長野県の賃上げ環境整備支援事業は、最大960万円という多額の支援を受けられる貴重な機会です。人件費の上昇を単なるコストアップとして捉えるのではなく、この補助金をテコにして生産性を抜本的に改善するチャンスと捉え直してみてはいかがでしょうか。事前の宣言登録や綿密な事業計画など、準備すべきことは多岐にわたりますが、それに見合うだけのメリットがある制度です。期限に余裕を持って、まずは身近な相談窓口を訪ねることから始めてみてください。
※本記事の情報は2025年11月時点のプレスリリースに基づいています。制度の詳細や申請様式は変更される可能性があるため、必ず長野県の公式サイトや公式リーフレットで最新情報を確認してください。