対象となる方
- 雇用保険適用事業所の事業主
- 従業員に対し、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練を計画的に実施する事業者
- 中小企業事業主(助成率・助成額が優遇されます)
申請手順
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| STEP 1 | 事業内職業能力開発計画の策定、職業能力開発推進者の選任 |
| STEP 2 | 訓練開始日の1か月前までに管轄労働局へ「職業訓練実施計画届」を提出 |
| STEP 3 | 計画に沿って訓練(OFF-JT、OJT)を実施 |
| STEP 4 | 訓練終了日の翌日から2か月以内に「支給申請書」を提出し、審査後に受給 |
補助金額・補助率
人材育成支援コースは、訓練経費の一部を助成する「経費助成」、訓練期間中の賃金の一部を助成する「賃金助成」、OJTの実施を助成する「OJT実施助成」から構成されます。1事業所が1年度に受給できる上限額は1,000万円です。
| 助成の種類 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 45%〜100%(訓練内容・賃上げ要件により変動) | 30%〜(訓練内容・賃上げ要件により変動) |
| 賃金助成額 (1人1時間あたり) | 800円(賃上げ要件達成で1,000円) | 400円(賃上げ要件達成で500円) |
| OJT実施助成額 (1人1コースあたり) | 20万円(賃上げ要件達成で25万円) | 11万円(賃上げ要件達成で14万円) |
| 経費助成限度額 (1人1訓練あたり) | 訓練時間により変動(100時間未満: 15万円、100~200時間: 30万円、200時間以上: 50万円 ※中小企業の場合) | |
賃上げ要件: 訓練修了後に受講者の賃金を5%以上引き上げる、または資格手当を支払い3%以上引き上げる等の要件を満たす場合、助成率・助成額が加算されます。
対象者・申請要件
対象となる事業者
- 雇用保険適用事業所の事業主であること。
- 労働組合等の意見を聴いて「事業内職業能力開発計画」を作成し、労働者に周知していること。
- 「職業能力開発推進者」を選任していること。
- 訓練期間中の賃金を適正に支払っていること。
- 申請書類等を整備し、支給決定後5年間保存していること。
対象となる労働者
- 申請事業主に雇用される雇用保険被保険者であること。
- 訓練の実施期間を通じて被保険者であること(一部例外あり)。
- 通学制訓練の場合、実訓練時間数の8割以上を受講した者であること。
対象とならない事業者
- 過去5年以内に不正受給を行った事業者。
- 労働保険料を納入していない事業者。
- 過去1年間に労働関係法令の違反があった事業者。
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業を行う事業者。
- 暴力団関係事業主。
補助対象経費
| 経費区分 | 詳細 | 対象可否 |
|---|---|---|
| OFF-JT経費 | 外部研修の受講料、入学料、教科書代など | ○ |
| 講師謝金・旅費 | 事業内訓練で招へいした部外講師への謝金や交通費 | ○ |
| 施設・設備借損料 | 事業内訓練で外部から借り上げた施設や設備の費用 | ○ |
| 訓練中の賃金 | 所定労働時間内にOFF-JTを受講させた場合の賃金の一部 | ○ |
| 不動産購入費 | 土地や建物の購入費用 | × |
| 汎用的な備品 | パソコン、タブレット、ソフトウェア等の購入費 | × |
| 食費・交流会費 | 訓練中の食事代や、訓練後の懇親会費用 | × |
重要: 助成対象となる経費は、支給申請日までに事業主が全額負担(支払い済み)している必要があります。また、訓練機関からの返金等により実質的な負担額が減額される場合は対象外となります。
必要書類一覧
申請は「計画届の提出」と「支給申請」の2段階で行います。それぞれで必要な書類が異なります。
計画届 提出時の主な書類
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 職業訓練実施計画届 | 公式サイトよりダウンロード |
| 年間職業能力開発計画 | 事業内職業能力開発計画の策定が必要 |
| 訓練別の対象者一覧 | 訓練を受ける従業員の情報を記載 |
| 訓練カリキュラム | 訓練の目的、内容、時間数がわかるもの |
支給申請時の主な書類
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 支給申請書 | 公式サイトよりダウンロード |
| 賃金助成・経費助成の内訳 | 助成額の算定基礎となる書類 |
| OFF-JT実施状況報告書 | 訓練の実施日、時間、内容を証明 |
| 出勤簿またはタイムカードの写し | 訓練期間中の労働時間を確認 |
| 賃金台帳の写し | 賃金の支払状況を確認 |
| 経費の支払いを証明する書類 | 領収書、振込明細書など |
審査基準・採択のポイント
主な審査項目
- 計画の妥当性: 事業内職業能力開発計画に基づいた、計画的な訓練であるか。
- 職務との関連性: 訓練内容が、受講する労働者の現在の職務または将来の職務に直接関連しているか。
- 要件の遵守: 訓練時間数(10時間以上)、対象労働者、経費の範囲など、制度の支給要件を全て満たしているか。
- 書類の正確性: 提出された書類に不備や虚偽がなく、訓練の実施状況や経費の支払いが客観的に証明できるか。
支給を受けるためのポイント
- 事前の計画が重要: 助成金の活用を前提に、全社的な人材育成計画を策定する。
- 期限の厳守: 計画届(訓練開始1か月前)、支給申請(訓練終了後2か月以内)の提出期限を必ず守る。
- 証拠書類の管理: 訓練の実施状況がわかる日報や、経費支払いの証拠となる領収書・振込明細等を確実に保管する。
- 労働局への事前相談: 初めて申請する場合や、訓練内容が対象となるか不明な場合は、計画届の提出前に管轄の労働局へ相談する。
- 電子申請の活用: 雇用関係助成金ポータルからの電子申請を活用することで、手続きの効率化が図れる。
よくある質問
Q1: 計画届を提出すれば、必ず助成金は支給されますか?
A: いいえ、支給を約束するものではありません。計画届の提出は申請の第一歩であり、最終的な支給・不支給は、訓練実施後の支給申請時に行われる審査によって決定されます。計画通りに訓練が実施され、全ての支給要件を満たしている必要があります。
Q2: eラーニングや通信講座も対象になりますか?
A: はい、対象となります。ただし、経費助成のみが対象で、賃金助成は対象外です。また、受講管理システム(LMS)等で進捗管理が行えることなど、別途要件があります。
Q3: 役員や個人事業主は訓練の対象者になりますか?
A: いいえ、対象外です。本助成金の対象者は、雇用保険の被保険者である労働者です。したがって、雇用保険に加入できない法人の役員や個人事業主本人は対象となりません。
Q4: 訓練機関から「実質無料で研修が受けられる」と勧誘されましたが、問題ありませんか?
A: 注意が必要です。本助成金は、事業主が訓練経費を全額負担した上で、その一部が助成される制度です。訓練機関からのキャッシュバック等により、事業主の実質的な負担がない場合は支給要件を満たさず、不正受給と判断される可能性があります。不審な勧誘には応じないでください。
Q5: 申請手続きを社会保険労務士以外に代行依頼できますか?
A: いいえ、できません。社会保険労務士法により、報酬を得て助成金の申請書類作成や提出代行を行えるのは、社会保険労務士または社会保険労務士法人のみです。無資格のコンサルティング会社等への依頼は違法となる可能性があります。
制度の概要・背景
人材開発支援助成金は、労働者の職業生活設計の全期間を通じて、段階的かつ体系的な職業能力開発を効果的に促進することを目的とした厚生労働省の制度です。事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成します。
本制度は、企業の人材育成への投資を後押しすることで、労働者のスキルアップとキャリア形成を支援し、ひいては生産性の向上や企業の持続的な成長に繋げることを目指しています。特に「人材育成支援コース」は、幅広い職種の訓練に対応しており、多くの企業が活用しやすい基本的なコースとして位置づけられています。
まとめ・お問い合わせ先
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、計画的な従業員教育を検討している事業者にとって、費用負担を軽減できる有効な制度です。申請には事前の計画策定や期限の遵守が不可欠ですので、本記事を参考に、余裕を持った準備を進めてください。
お問い合わせ先
実施機関: 厚生労働省
担当部署: 各都道府県労働局
電話: 各都道府県労働局の所在地・連絡先は公式サイトをご確認ください。
公式サイト: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html