東京都内で事業を営む中小企業者にとって、事業承継は経営の持続性を左右する極めて重要なフェーズです。本助成金は、後継者不在による第三者承継(M&A)や親族内承継、さらには承継後の経営改善に要する外部専門家への委託経費を最大200万円まで支援する制度です。
この記事でわかること
- 4つの助成タイプ(後継者未定・決定・企業継続・譲受)の違い
- 最大200万円の助成額と小規模企業者向けの優遇措置
- 申請に必須となる公社等の支援実績と現地診断のルール
- Jグランツを用いた電子申請の準備とスケジュール
令和7年度 第2回 事業承継支援助成金の概要
本助成金は、公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施する支援事業であり、都内中小企業の円滑な事業承継を促進することを目的としています。単なる資金援助ではなく、外部の専門的な知見を活用することで、承継時におけるリスクの軽減や経営基盤の強化を狙っています。
選べる4つの助成タイプ
申請者の状況に合わせて、以下の4つのタイプから1つを選択して申請します。
申請に必要な要件と対象者の詳細
本助成金は、東京都内での事業実績だけでなく、事前に公的機関の支援を受けていることが必須条件となります。この要件がハードルとなる場合があるため、早めの確認が必要です。
主な申請資格
- 基準日(令和7年10月1日)時点で、引き続き2年以上都内で事業を営んでいる中小企業者。
- 公社が行う『事業承継・再生支援事業』や、商工会議所、金融機関協会等が行う特定の支援実績があること。
- 今後10年以内に事業承継を予定しており、基準日時点で代表権が引き継がれていないこと。
- 大企業が実質的に経営に参画していないこと。
重要:事前の現地診断について
- 公社以外の支援(商工会議所等)を受けている場合、別途公社による現地診断(訪問ヒアリング)を受ける必要があります。
- 現地診断の対応ができない場合、申請要件を満たさないと判断されるため注意が必要です。
助成対象経費と小規模企業者への特別優遇
助成の対象となるのは、事業承継や経営改善を目的として外部の専門家等に支払う『委託費』です。人件費や備品購入費は対象外となる点に注意してください。
代表的な対象経費
- 企業価値・事業価値の算定:自社株式の評価や財務・税務・法務等のセルフ・デューデリジェンス。
- M&A仲介費用:仲介業者への初期費用、中間金、成功報酬(登録機関に限る)。
- 人材確保・育成:中核人材(幹部社員)の採用にかかる人材紹介会社への手数料や研修費。
- システム構築・改善:生産管理システムや営業管理システムの開発・更新。
- 販路開拓:Webサイト(HP)の作成・更新、パンフレット制作。
小規模企業者向けの10/10助成
従業員数が一定以下の『小規模企業者』が、A・B・Dタイプにおいて『企業価値や事業価値の算定』に取り組む場合、その経費に限り助成率が10/10(全額助成)となります。自己負担なしで専門的な企業診断を受ける絶好の機会です。
失敗しないための申請スケジュール
本助成金は『申請エントリー』が必須となっており、期限を過ぎると本申請ができません。また、電子申請システム『Jグランツ』の使用が前提となります。
1
GビズIDプライムの取得
電子申請に必須のIDです。発行には通常2週間程度かかるため、未取得の場合は今すぐ手続きを開始してください。
2
申請エントリー(令和7年10月1日~12月2日)
公社Webサイトから予約を行います。これを行わないと、書類の提出が認められません。
3
書類の作成と電子申請(令和7年10月10日~12月19日)
Jグランツから申請書類をアップロードします。最終日の17時までとなるため、余裕を持って送信してください。
4
審査・交付決定(令和8年3月1日予定)
公社による書類審査が行われ、採択されると助成対象期間がスタートします。
5
事業実施と実績報告
令和8年10月末日までに契約・支払い・納品を完了させ、公社へ実績報告書を提出します。
採択に向けた専門家のアドバイス
事業承継支援助成金は、事業計画の具体性と必要性が厳しく審査されます。一般的に採択されやすい申請書のポイントは以下の通りです。
1. 現状分析と課題の明確化
なぜ今、その専門家の支援が必要なのかを、自社の財務状況や経営課題と絡めて具体的に説明してください。例えば『後継者の経営スキル不足を補うために、外部専門家による伴走支援が必要である』といった論理構成が有効です。
2. 委託先の選定理由を明確にする
M&A仲介業者の場合、単に有名な会社だからという理由ではなく、『自社の業界に精通しており、マッチングの成功実績が豊富である』といった合理的な選定理由が求められます。特にAタイプでのM&A支援機関は登録制度の登録機関である必要があります。
3. 承継後のビジョンを示す
助成金を受けて実施する取組が、承継後にどのような持続的な成長や発展をもたらすかを記述してください。生産性の向上や雇用の維持、地域経済への貢献など、公的な支援を受けるにふさわしい意義を強調しましょう。
よくある失敗パターン
- 交付決定前に契約・発注してしまう(助成対象外となります)。
- 見積書の項目が『一式』となっており、詳細な単価や内訳が不明。
- 実績報告時に、銀行振込の控えなどの証憑書類が不足している。
よくある質問(FAQ)
Q都外に本社がありますが、都内に支店があれば対象になりますか?
都内に本店または支店の登記があり、かつ引き続き2年以上都内で実質的に事業を行っている実績があれば対象となる可能性があります。単に建物があるだけでなく、事業実態や従業員の雇用状況などが総合的に判断されます。
Q公社の支援を一度も受けたことがありませんが、今からでも間に合いますか?
申請要件には公社等の特定支援実績(令和6年10月1日から申請日前日まで等)が必要です。まずは東京都中小企業振興公社の『個別相談』を予約し、要件を満たすためのステップを確認することをお勧めします。
QM&A仲介手数料はどこまでが助成対象ですか?
助成期間内に支払われる初期費用、中間金、成功報酬が対象です。ただし、委託先は中小企業庁の『M&A支援機関登録制度』に登録されている機関に限られます。また、成功報酬については、助成期間内に成約に至ったもののみが対象となります。
QJグランツ以外での申請は可能ですか?
原則としてJグランツによる電子申請のみとなります。郵送や持参による受付は行っていないため、GビズIDプライムのアカウントを必ず事前に準備してください。
Q助成金はいつ振り込まれますか?
事業完了後の実績報告書の提出と、公社による確定検査(精査)が完了した後に支払われます。概ね、令和8年末から令和9年初旬頃となることが予想されます。後払い制(精算払い)であるため、事業実施にかかる費用は一度全額自社で立て替える必要があります。
事業承継支援助成金は、東京都内の中小企業が次のステージへと進むための強力なバックアップとなります。特に専門家活用のハードルを下げ、円滑な経営の引継ぎを可能にする本制度は、後継者問題に悩む経営者にとって非常に有益です。申請エントリー期間が限られているため、まずは要件の確認と準備を早急に進めてください。
専門家の力を借りて、確実な事業承継を
詳細は東京都中小企業振興公社の公式サイトをご確認の上、期限内に申請エントリーを完了させてください。
免責事項: 本記事の情報は作成時点(2025年版募集要項に基づく)のものです。助成金の内容やスケジュールは変更される場合がありますので、申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。