団体経由産業保健活動推進助成金は、中小企業の健康経営を支援する事業主団体等を対象とした強力な支援制度です。産業医や保健師による健康診断結果の意見聴取やストレスチェック後の職場環境改善など、傘下の事業所へ提供する産業保健サービスの費用を最大90%、1,000万円まで助成します。令和7年度からはストレスチェックの実施支援が対象に加わるなど、さらなる拡充が図られています。
この記事でわかること
- 助成対象となる事業主団体や特別加入団体の具体的な要件
- 令和7年度から変更されたストレスチェック等の新対象サービス
- 最大1,000万円を受給するための条件と各サービスの上限額
- 採択率を高めるための実施計画書の書き方と申請ステップ
団体経由産業保健活動推進助成金の概要と目的
本助成金は、独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が運営しており、自前で産業保健体制を整えることが難しい中小企業を、所属する「団体」を通じてバックアップすることを目的としています。事業主団体等が、専門家(医師・保健師等)やサービス提供業者と契約し、傘下の中小企業に産業保健サービスを提供した場合、その費用および事務委託費の一部が助成されます。
助成対象となる団体の詳細条件
全ての団体が申請できるわけではありません。大きく分けて『事業主団体等』と『労災保険の特別加入団体』の2つの区分があり、それぞれに厳格な要件が設定されています。
1. 事業主団体等の要件
以下のいずれかに該当し、かつ中小企業事業主が構成員の2分の1を超えている必要があります。
- 商工会議所、商工会、中小企業団体中央会
- 事業協同組合、商店街振興組合
- 一般社団法人、一般財団法人(規約等で構成員への指導規定があること)
- 共同事業主(10以上の事業主が合意に基づく協定を締結していること)
重要:構成員の計算における注意点
- 労働者を雇用していない事業主(一人親方等)は、構成事業主の分母に含めることができません。
- 助成対象となるには、労働者を雇用する構成事業主が最低3社以上必要です。
- 資本金または従業員数のいずれかが「中小企業」の基準を満たす社数が過半数である必要があります。
2. 労災保険の特別加入団体
一人親方や特定作業従事者の団体(労災保険法第33条第3号または第5号の団体)も対象となります。こちらも1年以上の活動実績があり、財政状態が健全であることが求められます。
助成対象となる産業保健サービスの内容(令和7年度版)
令和7年度より、対象となるサービス内容とそれぞれの個別上限額が詳細に設定されました。特に注目の変更点は、50人未満の事業場に対する『ストレスチェックの実施』が新たに追加されたことです。
専門家活用のメリット
産業保健サービスは、単に契約するだけでなく「効果検証」が支給申請時に求められます。産業医や保健師、社会保険労務士などの専門職が関与することで、実効性のある活動が証明されやすくなり、不支給リスクを低減できます。また、化学物質管理の専門家による環境改善支援なども対象となるため、法改正への対応としても非常に有効です。
採択に向けた申請ステップ(実施計画から支給まで)
本助成金は「実施計画」を事前に提出し、承認を得る必要があります。後出しでの申請はできませんので、必ずスケジュールを把握しておきましょう。
1
実施計画の提出(交付申請)
令和7年11月28日(金)までに、事業実施計画(様式第2号)等をJOHASへ提出します。郵送のほか、jGrantsによる電子申請も可能です。
2
計画承認の通知
提出後、原則30日以内に審査が行われ、承認されると決定通知が届きます。ここから正式に事業がスタートします。
3
産業保健サービスの提供
契約した医師やサービス提供業者を通じて、傘下の事業所へサービスを実施します。活動内容の証拠書類(報告書等)を必ず保管してください。
4
助成金支給申請
事業完了後30日以内、または令和8年1月30日のいずれか早い日までに申請します。領収書や実施結果報告書が必要です。
5
助成金の受け取り
最終審査を経て、適正と認められれば指定の口座に助成金が振り込まれます。令和8年3月末までの支給が目処となります。
よくある失敗パターンと対策
申請時の落とし穴
- 対象経費の誤認:健康診断自体の費用や、単なるリーフレット配布は助成対象外です。
- 専門性の欠如:活動に医師、保健師、または特定の資格者が関与していない場合、支給が認められません。
- 中小企業割合の不足:構成員の名簿を精査した結果、中小企業比率が50%を下回ると団体として不採択になります。
- 証拠書類の不足:実施したことの記録(写真や出席簿、指導記録)が不鮮明で金額が減額されるケースがあります。
よくあるご質問(FAQ)
Q構成事業主の中に「中小企業ではない企業」が混ざっていても大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。ただし、構成事業主全体の2分の1以上が中小企業である必要があります。また、非中小企業に対して提供したサービスの費用は助成対象外となります(サービス費用の按分計算等が必要になります)。
Qオンラインでの健康研修やセミナーは助成対象になりますか?
リアルタイムで配信されるウェビナー形式の研修は対象となりますが、録画した動画を視聴するだけのオンデマンド配信は対象外となりますのでご注意ください。
Q事務費の「一部を委託する費用」とは具体的にどのようなものですか?
産業保健サービスを提供するにあたり、外部の事務代行会社などに委託する会場の手配、参加者の受付管理、報告書の取りまとめなどの事務実務にかかる費用が対象となります。団体の役職員の人件費は対象外です。
Q令和7年度版と令和6年度版で、申請時期以外に何が変わりましたか?
最大の違いは「ストレスチェック」の実施そのものが助成対象に含まれたこと(50人未満事業場のみ)と、提供するサービス項目ごとに細かく助成上限額が設定されたことです。これにより、複数のサービスを組み合わせて計画を立てる必要が出てきました。
Q予算がなくなると早めに終了してしまいますか?
はい。原則として先着順での受付となります。実施計画の提出期限(11月28日)前であっても、国の予算上限に達した場合は受付が停止されるため、早期の準備と提出を強くお勧めします。
まとめ:団体の強みを活かした産業保健の推進を
団体経由産業保健活動推進助成金は、個々の中小企業では解決しにくい「働く人の健康管理」という課題を、団体がハブとなって解決するための非常に有益な制度です。令和7年度からは制度の柔軟性が増し、より多角的な支援が可能になりました。予算の制約があるため、傘下の事業者のニーズを早急に集約し、専門家との連携体制を構築することが受給成功の鍵となります。まずは過去の活動実績を整理し、構成事業主の中小企業比率を確認することから始めましょう。
今すぐ実施計画の検討を開始しましょう
詳細な手引きの確認や様式のダウンロードは、労働者健康安全機構(JOHAS)の公式サイトより可能です。不明点はチャットボットや窓口への相談を活用しましょう。
免責事項: 本記事の情報は令和7年度(2025年度)の公表資料に基づき作成しています。助成金の公募内容や要件は変更される場合がありますので、申請前に必ず独立行政法人労働者健康安全機構の公式サイトで最新の『支給要領』および『手引き』をご確認ください。