福岡県久留米市では、近年激甚化する大雨や台風による浸水被害から市内の事業所を守るため、止水板の設置や浸水対策工事を支援する『久留米市中小企業止水板等設置事業費補助金』を実施しています。本制度は、市内で事業を営む中小企業や個人事業主を対象に、最大50万円(補助率2分の1)を交付するものです。申請には国の『事業継続力強化計画(BCP)』の認定が必須となるなど、防災意識の向上が強く求められる内容となっています。
この記事でわかること
- 久留米市止水板設置補助金の具体的な補助金額と対象経費
- 申請に必須となる『事業継続力強化計画』の要件と注意点
- 止水板設置以外の『浸水被害軽減工事』の具体例
- 交付申請から補助金受領までの全5ステップと必要書類
- 審査をスムーズに通過するためのポイントとよくあるQ&A
久留米市中小企業止水板等設置事業費補助金の制度概要
久留米市は筑後川をはじめとする河川に囲まれており、過去数年にわたり深刻な浸水被害が発生しています。本補助金は、単に工事費を助成するだけでなく、事業者が自ら『事業継続力強化計画』を策定することで、災害時における事業停止リスクを最小限に抑えることを目的としています。令和7年度の公募は2025年4月から開始されており、予算に達し次第終了となるため、早めの検討が推奨されます。
補助対象となる事業者
本補助金の対象は、久留米市内で事業を営む『中小企業者』および『個人事業主』です。以下の定義に基づき、業種ごとに資本金または従業員数のいずれかの基準を満たす必要があります。
申請時の重要チェックポイント
- 農業、林業、漁業を営む事業者は対象外となります。
- 一般社団法人、医療法人、社会福祉法人、NPO法人は対象外です。
- 市税の滞納がないことが絶対条件です。
- 宗教法人や政治団体、風俗営業に関連する事業者は申請できません。
補助対象となる事業と経費の詳細
本補助金は、止水板(防水板)の設置だけでなく、浸水被害を多角的に防ぐための工事を幅広くカバーしています。大きく分けて『止水板設置工事』と『浸水対策関連工事』の2種類があります。
1. 止水板の設置工事及び附帯工事
店舗や駐車場の入り口に設置する止水板が対象です。金属製や樹脂製のものが一般的で、以下の条件を満たす必要があります。
- 十分な止水性・耐水性を備えていること。
- 設置にあたり工事や測量、調査、調整、加工を伴うものであること。
- 止水板設置箇所における壁面の防水工事などの附帯工事も含まれます。
2. 浸水被害の防止又は軽減に資する関連工事
止水板以外にも、浸水を防ぐための設備改修が補助対象となります。
- 排水設備の逆流防止措置: 下水道からの逆流を防ぐための逆止弁の設置など。
- 配管貫通部の止水処理: 壁を貫通する配線や配管の隙間からの浸水を防ぐ工事。
- 設備のかさ上げ工事: 受変電設備(キュービクル)や重要な機械を高い位置へ移設・架台設置する工事。
- 外構・止水壁の設置: 敷地内への浸水を防ぐための塀(止水壁)の構築工事。
【注意】補助対象外となるもの
- 止水シート、土のう、水のう等の『購入のみ』で工事を伴わないもの。
- 移動可能な排水ポンプ等の購入費用。
- 非常用自家発電設備の設置(浸水対策に直接該当しないため)。
- 法令により設置が義務付けられている設備。
- 交付決定前に契約・着手してしまった工事。
最重要要件:事業継続力強化計画(BCP)について
本補助金の最大の特徴は、国の『事業継続力強化計画』の認定を受けていることが必須条件である点です。この計画は、中小企業が防災・減災の事前対策をまとめ、経済産業大臣が認定する制度です。
BCP認定のメリット
認定を受けることで、本補助金の受給資格が得られるだけでなく、日本政策金融公庫による低利融資、防災型設備投資に係る税制措置、ロゴマークの使用権取得など、対外的な信頼性向上にもつながります。
認定のポイント:
計画の中に、今回の『止水板設置』や『浸水対策』に関する具体的な記載が含まれている必要があります。もし現在の計画に記載がない場合は、変更申請を行うか、別途『浸水対策計画書』を市に提出する必要があります。
※認定には通常45日程度の審査期間を要するため、補助金申請と並行して早急に手続きを進めることが重要です。実績報告時までに認定を受けていれば、交付申請時点では『認定見込み』での受付が可能です。
補助金受領までの5つのステップ
1
事前相談とBCP認定の準備
まずは久留米市商工政策課へ相談し、事業内容が補助対象か確認します。同時に、国の事業継続力強化計画(BCP)の策定・認定申請を進めます。
2
見積取得と交付申請の提出
工事業者から相見積もりを取り、交付申請書(第1号様式)、事業計画書等を準備します。jGrantsによるオンライン申請または郵送・窓口提出が可能です。
3
審査・交付決定通知の受領
市による審査(通常2~3週間)が行われ、適正と認められれば『交付決定通知書』が届きます。※この通知より前に契約・着手した工事は補助対象外です。
4
事業実施(工事)と実績報告
工事業者と契約し、施工を行います。完了後は1ヶ月以内に、施工後の写真や領収書の写しを添えて『実績報告書』を提出します。
5
補助金額の確定と入金
市が報告書を審査し、確定通知書を送付します。その後、請求書を提出することで、指定の口座に補助金が振り込まれます。
失敗しないための申請ノウハウと採択のコツ
1. 写真は『定点』で撮影する
補助金申請において最も多い不備の一つが『写真』です。施工前の写真と施工後の写真は、必ず同じ角度・同じ距離で撮影してください。どこがどう変わったのかが一目でわかる資料を準備することが、スムーズな審査の鍵となります。
2. 支払いは『銀行振込』が原則
現金での支払いは避け、必ず法人名義(個人事業主は本人名義)の銀行口座から振り込みを行ってください。クレジットカード払いの場合は、事業期間内に引き落としが完了している必要があり、かつ一括払いに限られます。小切手や手形、ポイント利用は認められないため注意が必要です。
3. 見積書の内訳を詳細に
『工事一式』という大まかな見積もりでは、補助対象外の経費が含まれていないか判断できず、再提出を求められることがあります。止水板の材料費、据付工事費、諸経費など、項目ごとに金額が分かれている詳細な見積書を業者に依頼しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q賃貸ビルで事業を行っていますが、止水板の設置は可能ですか?
可能です。ただし、建物のオーナー(賃貸人)から設置の承諾を得ている必要があります。また、将来的に退去する際の原状回復費用などは補助対象外となります。
Q自宅を店舗(事務所)として使用していますが、対象になりますか?
事業に使用している部分が、居住部分から独立している(店舗専用の入り口がある等)場合に限り対象となります。主たる工事箇所が住宅部分である場合は補助対象外です。
Q中古の止水板をオークションで購入した場合、対象になりますか?
いいえ、対象になりません。本補助金は原則として新品の購入・設置が前提となります。また、個人売買やオークションでの調達は領収書等の証憑(しょうひょう)確認が困難なため認められません。
Q他の補助金と併用することはできますか?
同じ工事箇所について、国や他の地方公共団体の補助金を重複して受けることはできません。ただし、全く別の箇所(例:別のビル)の工事であれば併用可能な場合がありますので、事前相談が必要です。
QBCPの認定を受けるのは難しいですか?
中小企業庁が提供しているガイドラインや申請ツールを利用すれば、自社で作成することが可能です。記載内容は、ハザードマップの確認や避難ルートの策定など、基本的な防災アクションが中心です。不安な場合は専門家(診断士等)のサポートを受けるのも一案です。
専門家の活用メリット
補助金申請、特にBCP計画の策定には時間と労力がかかります。中小企業診断士や行政書士などの専門家を活用することで、以下のようなメリットがあります。
- 採択精度の向上: 要件漏れを防ぎ、適切な計画を策定できます。
- 事務負担の軽減: 複雑な書類作成を任せることで、本業に集中できます。
- 包括的な経営アドバイス: 防災だけでなく、資金繰りや販路開拓など、他の補助金活用の提案も受けられます。
久留米市中小企業止水板等設置事業費補助金は、一度浸水被害を受けると甚大な損害を被る事業所にとって、極めて有効な防衛手段です。最大50万円の助成を受けながら、同時にBCP認定を取得することで、企業のレジリエンス(回復力)を高める絶好の機会といえます。2025年12月26日の締め切りを待たず、予算終了前に早めの着手をお勧めいたします。
申請の相談は久留米市商工政策課へ
申請にあたっては、必ず事前に電話またはメールで相談を行い、計画の適合性を確認してください。
免責事項: 本記事の情報は令和7年度の公募要領に基づき作成したものです。補助金の内容や要件は年度途中で変更される場合がありますので、申請前に必ず久留米市公式ウェブサイトで最新情報をご確認ください。