総務省が令和7年度(2025年度)予算概算要求において重点的に掲げる『地域社会DX推進パッケージ事業』は、人口減少や少子高齢化に直面する地域課題をデジタル技術で解決するための総合支援策です。地方公共団体や民間団体を対象に、体制構築から計画策定、先進的な実証事業、そしてインフラ整備までを網羅しており、最大1億円の支援規模を誇るメニューも用意されています。
この記事でわかること
- 地域社会DX推進パッケージ事業の全体像と主要な4つの支援メニュー
- 推進体制構築支援における最大1億円の補助金活用スキーム
- コンサルタントによる3ヶ月間の伴走型計画策定支援の受け方
- AI、自動運転、ローカル5G等の先進技術実証に関する最新動向
地域社会DX推進パッケージ事業の概要と目的
令和7年度の総務省概算要求において、地域社会のデジタル変革(DX)を加速させるための司令塔となるのが本事業です。単なるシステムの導入支援にとどまらず、地域が自立的にデジタル実装を継続できる『持続可能な体制』の構築を最優先事項としています。
15億円規模の予算投入で好事例の創出・横展開を目指す
本事業は、令和7年度要求額として15.0億円(新規)が計上されており、令和5年度補正予算(47.5億円)や令和6年度当初予算(2.0億円)の流れを汲みつつ、より高度で専門的な支援体制へと進化しています。主な支援は『デジタル人材・体制の確保』『先進的ソリューションの実用化実証』『地域デジタル基盤の整備補助』の3本柱で構成されています。
主要メニュー1:地域DX推進体制構築支援
自治体が抱える『DXを進めたいが人材や知見が足りない』という課題に直接応えるメニューです。専門家を地方公共団体に通年派遣し、課題の深掘りから体制構築までを伴走支援します。
支援の内容とスキーム
都道府県が主体となり、管内の市区町村と連携して申請する形式が一般的です。選定された地域には、伴走支援事業者が派遣され、以下のようなプロセスで支援が行われます。
- ステップ01:課題整理・方針共有 – 各市町村のボトルネックを特定し、解決に向けた具体的な取組方針を策定。
- ステップ02:推進体制の構築 – ステークホルダーの巻き込みや、事業者とのマッチング支援を実施。
- ステップ03:実証・補助事業の活用 – 具体的なソリューションの導入や、通信インフラの実装へと繋げる。
申請時の注意点
- 原則として都道府県が管内の1市区町村以上と連携して申請する必要があります。
- 過去に選定実績のある都道府県の場合、上限額が5,000万円に調整される場合があります。
- 将来的に体制を拡大し、自立的にDXを推進する強い意思が求められます。
主要メニュー2:計画策定支援(3ヶ月間の短期集中支援)
デジタル技術の導入に向けた最初の一歩を踏み出すためのメニューです。コンサルタント等の専門家が約3ヶ月間、無料で伴走支援を行います。
選べる2つの支援コース
令和6年度はボストン・コンサルティング・グループ(BCG)等の国内トップクラスのコンサルティング機関が支援を担っており、高いクオリティの計画策定が期待できます。支援を受けた計画書は、その後の予算要求や国の補助金申請にそのまま活用できる点も大きなメリットです。
主要メニュー3:地域情報化アドバイザー派遣制度
平成19年度から続く実績ある制度です。ICTの専門的な知見を有する『地域情報化アドバイザー』を地域に派遣し、助言を受けることができます。令和7年度からは支援対象がさらに拡充される予定です。
アドバイザー制度のメリット
- 旅費・謝金は全額総務省が負担(自治体負担なし)
- 現地派遣(年3回まで)またはオンライン(計10時間まで)の選択が可能
- 先進自治体の職員や大学教員など、実戦経験豊富な200名以上の専門家が在籍
実証事業と補助事業:先進技術の社会実装
計画策定の次のステップとして、実際に技術を検証・実装するための支援が用意されています。これらは特にローカル5GやAI、自動運転といった最先端領域に特化しています。
実証事業のタイプ別特徴
- 先進無線システム活用タイプ: ローカル5G等を用い、農林水産業の省力化やインフラメンテナンスの効率化を実証。
- AI検証タイプ: AIを用いた通信負荷の低減や、都市課題の解決(人流解析等)を検証。
- 自動運転レベル4検証タイプ: 安全かつ効率的な自動運転を実現するための通信システムを検証。
ケーブルテレビネットワークの耐災害性強化(補助金)
放送視聴環境を維持するため、辺地共聴施設の光化や耐災害性強化を支援する補助金です。
申請ステップ:地域DX推進への道のり
地域社会DX推進パッケージ事業への申請は、以下の5ステップで進めるのが一般的です。特に都道府県と市区町村の緊密な連携が鍵となります。
1
課題の棚卸しと優先順位付け
庁内の各部署や地域のステークホルダーから現状の課題を吸い上げ、デジタル技術で解決すべき優先事項を決定します。
2
都道府県との連携・協議
推進体制構築支援への申請を検討する場合、都道府県が主導となるため、早期の相談と連携体制の合意が必要です。
3
公募要領の確認と書類作成
例年2月〜4月頃に公募が開始されます。最新の要領に基づき、事業の継続性や期待される効果を数値化して記述します。
4
外部評価・審査
有識者等による評価会が開催されます。地域の熱意だけでなく、具体的なKPIの設定が評価のポイントとなります。
5
採択・伴走支援の開始
採択後は伴走支援事業者とのマッチングが行われ、具体的なDX推進活動がスタートします。
採択率を高めるための3つのポイント
総務省の審査を通過し、支援を勝ち取るためには、単なるシステムの羅列ではなく『将来像』を明確に示すことが不可欠です。
1. ステークホルダーを巻き込んだ推進体制
自治体内部のデジタル担当部署だけでなく、企画、産業振興、福祉など、現場の原課を巻き込んでいるかが厳しく問われます。また、地元の商工会議所、大学、地場企業との連携計画を具体的に盛り込むことで、事業の実現性が高く評価されます。
2. 定量的・定性的な効果の可視化
「便利になる」という主観的な目標ではなく、「事務作業時間を年間300時間削減する」「住民サービスの満足度を20%向上させる」といった具体的な数値を設定してください。効果測定の方法まで記載されていると、計画の信頼性が向上します。
3. 専門家派遣の早期活用
「地域情報化アドバイザー」は、本格的な申請の前の段階でも活用できます。申請書のロジック構成や、地域課題の整理について専門家のアドバイスを受けることで、採択ラインを大幅にクリアする質の高い提案書が完成します。
よくある質問(FAQ)
Q小規模な町村単独でも申請できますか?
推進体制構築支援については、都道府県と市区町村が連携して申請することが要件となっています。単独での申請が難しい場合は、近隣自治体との広域連携や、都道府県のDX担当課への相談を検討してください。なお、計画策定支援やアドバイザー派遣は単独でも可能な場合があります。
Q民間企業が直接この補助金を受け取ることはできますか?
原則として地方公共団体が対象ですが、一部の実証事業や補助事業では、自治体が出資する法人や、自治体と共同で事業を実施する企業・団体が対象に含まれることがあります。公募要領の「対象者」の欄を必ずご確認ください。
Q計画策定支援を受ける際、自治体側の費用負担は本当にありませんか?
はい、専門家の派遣にかかる費用は総務省側で負担するため、自治体の直接的な金銭負担はありません。ただし、週3時間程度の検討作業や打ち合わせ、資料作成などの人的な稼働は必要となります。
Q採択された場合の支援期間はいつまでですか?
推進体制構築支援の場合、単年度だけでなく、状況に応じて複数年にわたる伴走支援が想定されています。一方、計画策定支援は約3ヶ月程度の短期集中型となります。事業メニューによって期間が異なるため注意が必要です。
Q過去に採択された自治体の具体例を知りたいです。
令和6年度の事例では、長野県が飯田市や木曽地域と連携してDX推進体制を構築しています。具体的には、全市町村のアセスメント評価や、農林・福祉などの各部門からのDX推進リーダー選出を通じたアクションプラン策定などが行われています。
地域社会DX推進パッケージ事業は、単なる資金支援に留まらず、専門家による伴走という『人』の支援が充実しているのが最大の特徴です。デジタル化の波を地域活性化のチャンスに変えるため、まずは計画策定支援やアドバイザー派遣などの、負担の少ないメニューから活用を開始し、持続可能な地域DXの基盤を築いていくことを推奨します。公募は例年春先に集中するため、早めの準備を心がけましょう。
総務省 地域社会DX推進パッケージ事業 申請相談受付中
最新の公募要領の確認や、申請書の書き方に関するご相談は管轄の総合通信局までお問い合わせください。
免責事項: 本記事の情報は総務省の概算要求資料(令和7年度)および令和6年度の支援実績に基づき作成されたものです。予算の決定状況や政策の変更により、支援内容、金額、公募期間が変更される可能性があります。申請にあたっては必ず最新の公募要領および総務省公式サイトの情報をご確認ください。