海外での特許取得には、出願時だけでなく審査請求や拒絶理由通知への対応といった’中間手続’に多額の費用が発生します。本補助金は、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が、中小企業や大学等の国際的な知的財産戦略を支援するため、これら中間手続に要する経費を1手続あたり最大50万円まで補助する制度です。
この記事でわかること
- 本補助金の対象となる具体的な手続と申請要件
- 1手続あたり最大50万円の補助金額と対象経費の詳細
- 採択率を高めるための申請書類作成のポイント
- 申請から補助金受取までの5つのステップ
INPIT外国出願補助金(中間手続の補助)の概要
令和7年度の’INPIT外国出願補助金(中間手続の補助)’は、すでに外国特許庁へ特許出願を行っている事業者が、その後の権利化プロセスで直面するコストを軽減するための重要な支援策です。特に、外国特許庁からの拒絶理由通知に対する応答は、専門的な知識と多額の翻訳費用・代理人費用を要するため、本補助金の活用メリットは非常に大きいと言えます。
補助対象となる主な手続
本補助金は、以下の2つの手続を主な対象としています。なお、申請は1手続(各国別)ごとに行う必要がありますが、申請可能な手続数に特定の制限は設けられていません。
- 出願審査請求手続:交付申請時に審査請求を行っておらず、補助事業期間内に完了するもの。
- 中間応答手続:拒絶理由通知(新規性・進歩性の指摘を含むもの)を受領し、応答期限内に対応が完了するもの。
重要:対象となる案件の前提条件
- 過去にINPITや特許庁の’海外出願支援事業’等の交付決定を受けた特許出願に関連する手続である必要があります。
- 交付決定を受ける前に代理人への依頼や発注を行った経費は対象外となります。
補助対象者と要件
対象者は、日本国内に本社を置く中小企業、個人事業主、大学、試験研究機関等です。幅広い事業者が対象となりますが、資本金や従業員数による規定、および’みなし大企業’の除外規定に注意が必要です。
注意:補助対象外となるケース
大企業が発行済株式の1/2以上を所有している’みなし大企業’や、経済産業省から指名停止措置を受けている事業者は、中小企業の基準を満たしていても対象外となります。
1. 外国特許庁等への納付手数料
審査請求料や、意見書・補正書の提出に伴う手数料、審査請求期間の延長手数料などが含まれます。ただし、期間徒過の救済に関する手数料は対象外となる場合があります。
2. 代理人費用(国内・現地)
日本の特許事務所(国内代理人)および現地の特許事務所(現地代理人)に支払う報酬です。補助対象となるのは原則として各1事務所ずつであり、間に第3の仲介業者が入る場合の仲介手数料は対象外となります。
3. 翻訳費用
手続書類の作成に付随する翻訳費用です。見積書に’単価×単語数’や’ページ数’などの内訳が明記されている必要があります。社内で行った翻訳に対する人件費は対象になりません。
経費算出のアドバイス
外国通貨での支払いについては、支払日当日のTTSレート(三菱UFJ銀行等)を用いて円換算します。予算を組む際は、為替変動のリスクを考慮し、少し余裕を持った見積もりを依頼することをお勧めします。また、消費税やVAT(付加価値税)は補助対象外経費となるため、税抜き価格で計算してください。
申請から採択、受取までの流れ
本補助金は随時受付が行われていますが、予算状況により早期に終了する可能性があります。計画的な申請が求められます。
1
準備と事前確認
拒絶理由通知の内容を確認し、国内・現地の代理人から経費の見積書を取得します。対象案件の前提条件(過去の補助金交付歴)も必ず確認してください。
2
交付申請
申請書を作成し、INPITへ提出します。申請には事業計画や知財戦略の妥当性が問われます。2025年12月22日が最終締切です。
3
交付決定と事業実施
審査後、交付決定通知が届きます。これ以降に代理人へ正式発注し、中間手続を完了させます。発注、納品、支払の証憑(振込控え等)はすべて保管してください。
4
実績報告
手続完了後、実際に支払った経費について実績報告書を提出します。翻訳文の写しや外国特許庁への提出書類、銀行の受取証等が必要となります。
5
補助金の交付
報告内容の確定検査を経て、指定の口座に補助金が振り込まれます。補助金は後払い(精算払い)となるため、一旦は自社で全額を支払う必要があります。
知財専門家が教える採択のコツと注意点
本補助金は’単に経費を補填する’ためのものではなく、’国際的な知的財産戦略の構築’を支援するものです。そのため、申請書には以下の視点を盛り込むことが推奨されます。
- 事業への寄与度:当該外国特許が、自社の海外事業展開(輸出、ライセンス、現地生産等)においてどのような役割を果たすかを明確にする。
- 権利化の可能性:拒絶理由に対する反論の論理性が高く、権利取得の見込みが十分にあることを示す。
- 専門家との連携:弁理士等の専門家と十分に協議し、適切な中間応答戦略を立てていることをアピールする。
多くの場合、不採択となる原因は’書類の不備’や’前提条件の確認漏れ’です。特に、過去の支援事業の交付決定番号を正確に把握しておくことは必須です。不明な場合は事前にINPITの窓口へ相談することをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q複数の国で拒絶理由通知が来た場合、複数の申請が可能ですか?
はい、可能です。ただし、本補助金は’1手続(各国別)’ごとに1つの申請を行う必要があります。例えば、米国と中国で拒絶対応を行う場合は、それぞれ個別に申請書を作成・提出してください。
Q特許以外の実用新案や意匠、商標も対象になりますか?
いいえ。本補助金(中間手続の補助)は特許出願に限定されています。意匠や商標の中間応答等については対象外となりますのでご注意ください。
Q個人事業主でも申請できますか?
はい、可能です。日本国内に住所を有する個人事業主であれば、中小企業者と同等の枠組みで申請いただけます。ただし、法人の場合と同様に、過去に支援を受けた案件であること等の条件を満たす必要があります。
Q交付決定前に中間応答をしてしまった場合、遡って申請できますか?
原則として不可能です。本補助金は、交付決定通知を受けた後に発注・契約を行った経費が対象となります。既に手続を完了、あるいは着手してしまった経費については補助対象外となりますので、タイミングには細心の注意を払ってください。
Q採択された場合、いつ補助金が振り込まれますか?
手続完了後の実績報告を行い、その後の検査を経て金額が確定してからとなります。通常、報告書の提出から振込までには数ヶ月を要することが一般的です。事業年度を跨ぐ場合は、精算のタイミングをあらかじめ考慮しておきましょう。
海外展開において知財の権利化は避けて通れない課題です。特に中間応答は、特許の強さを決定づける極めて重要なプロセスです。本補助金を賢く活用することで、コストを抑えつつ質の高い権利取得を目指すことができます。交付申請の締切は2025年12月22日ですが、予算が上限に達し次第終了となるため、拒絶理由通知を受け取った際は、速やかに準備を開始することをお勧めします。
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免責事項: 本記事の情報は作成時点(2025年)の公募資料に基づいています。補助金の採択には審査があり、必ずしも交付を保証するものではありません。申請にあたっては、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の最新の公募要領を必ずご確認ください。