名古屋市で商売や活動をされている皆さま、2024年4月から施行された改正障害者差別解消法についてご存じでしょうか。これまで努力義務だった事業者による’合理的配慮’の提供が、今では義務へと変わっています。名古屋市では、こうした新しいルールに対応しようと頑張る事業者のために、環境整備の費用を最大10万円までサポートする助成事業をスタートさせました。この記事では、実務のプロである視点から、この助成金を賢く活用して誰にでも優しい店舗・施設づくりを進めるためのポイントを分かりやすくお伝えします。
この補助金の要点
名古屋市内の店舗や事務所が、障害のある方への配慮として物品を購入する際に、最大10万円が助成されます。スロープや筆談ボードなどの購入が対象となり、定額補助のため自己負担を大幅に抑えることが可能です。ただし、購入前に必ず事前相談を行う必要があるため、段取りを間違えないようにしましょう。
なぜ今、この助成金が必要なのか
障害者差別解消法の改正により、令和6年4月から民間事業者による合理的配慮の提供が義務化されました。これによって、車椅子の方のために段差を解消したり、耳の不自由な方とスムーズにコミュニケーションを取ったりすることが、単なる’おもてなし’ではなく、法的な社会的責務となりました。とはいえ、急に設備を整えるといってもコストがかかるのは事実です。そこで名古屋市は、事業者が円滑にこの義務を果たせるよう、背中を押すための助成金を用意しました。街全体がバリアフリーに近づくことは、障害のある方だけでなく、ベビーカーを利用する親御さんや足腰の弱い高齢者にとってもプラスに働きます。地域に根ざした活動を続ける事業者にとって、この制度は信頼を獲得するチャンスとも言えるでしょう。
助成の対象となるのはどんな人?
この助成金の素晴らしいところは、対象者の幅が非常に広いことです。名古屋市内に事業所を構える法人や個人事業主はもちろん、特定非営利活動法人(NPO)や一般社団法人、さらには自治会といった地域団体まで含まれます。小さな個人商店から、多くの人が集まるコミュニティ施設まで、障害者への配慮が必要な場面があれば申請を検討できます。名古屋市全域が対象エリアですので、千種区から港区、守山区まで、どの区で活動されていても問題ありません。もし自分の活動が対象になるか不安な場合は、まずは実施機関である名古屋市障害者差別相談センターへ電話してみるのが一番の近道です。親身になって相談に乗ってくれるはずです。
補助上限額
最大 100,000円
具体的に何を買うときに使えるのか
助成の対象となるのは、合理的配慮を提供するために不可欠な物品の購入費用です。例えば、入り口の段差を解消するための持ち運び式スロープは、車椅子利用者が自力で入店できない場合に非常に役立ちます。また、聴覚障害のある方とのやり取りに欠かせない筆談ボードや、文字を拡大して読みやすくする拡大読書器なども対象に含まれます。最近では、音声での案内をテキスト化して表示するタブレット端末や、コミュニケーションを支援する専用のアプリを搭載した機器の導入を検討するケースも増えてきました。さらに、視覚障害のある方のための点字案内板の作成や、パンフレットの音声コード化なども考えられます。工事を伴うような大規模なリフォームではなく、あくまで’物品の購入’がメインであることを念頭に置いて計画を立ててください。
ポイント
購入する物品は、不特定多数の利用者のために備え付けるものが基本です。特定の個人(例えば特定の従業員)のためだけのものは対象外となる可能性があるため、注意しましょう。
申請から助成金受け取りまでのステップ
助成金の手続きは、正しい順番で進めることが何より大切です。特にこの事業では’購入前の手続き’が必須となっていますので、フライングして先に注文してしまわないよう気をつけましょう。
事前相談
名古屋市障害者差別相談センターへ連絡し、検討している内容が助成の対象になるかを確認します。電話やメールで気軽に相談できます。
交付申請書の提出
購入したい物品の見積書を添えて、申請書を提出します。この時点ではまだお金を払ってはいけません。
交付決定の通知
審査が終わると、市から交付決定通知書が届きます。これが’買って良いですよ’というゴーサインになります。
物品の購入と実績報告
実際に物品を購入し、領収書や設置後の写真などを揃えて実績報告書を提出します。
助成金の請求と入金
報告内容に不備がなければ、助成金額が確定し、指定した口座へお金が振り込まれます。
採択に向けた重要ポイントとアドバイス
この助成金は抽選や激しい競争があるタイプではありませんが、申請にあたって’なぜその配慮が必要なのか’を明確にする必要があります。例えば、単に’タブレットが欲しい’と書くのではなく、’聴覚障害のあるお客様が来店された際、現状はメモ書きで対応しているが時間がかかり、正確な意思疎通が難しいため、音声翻訳アプリを搭載したタブレットを導入してスムーズな注文受付を実現したい’といったストーリーが必要です。現場での具体的な困りごとをベースに説明すると、審査側にも必要性が伝わりやすくなります。また、見積書は宛名や内訳が正確であることを確認し、最新のカタログなどがあれば一緒に準備しておくとより確実です。事前相談の際に、センターの担当者からアドバイスをもらえることもあるため、そこで積極的に対話を行うことが成功の秘訣と言えます。
注意点
過去に購入済みのものは一切対象になりません。また、予算には限りがあるため、年度の後半になると受付が終了してしまうリスクがあります。計画がある場合は早めに相談することをおすすめします。
よくある質問
Q. インターネット通販で購入しても助成の対象になりますか?
A. 基本的には対象になりますが、宛名入りの領収書を必ず発行してもらう必要があります。また、購入前に見積書を取得する必要があるため、見積書の代わりとなる注文確認画面の写しなどで代用可能か、事前相談の際に必ず確認してください。
Q. 障害のある従業員のための設備投資にも使えますか?
A. この助成金は、事業者が外部の利用者(顧客や来客など)に対して合理的配慮を提供するための支援を目的としています。従業員の雇用継続のための環境整備は別の助成金(雇用保険関連など)が適している場合が多いので、窓口で切り分けて相談しましょう。
Q. 10万円を超える物品を買う場合はどうなりますか?
A. もちろん10万円を超えるものを購入しても構いません。その場合、助成金として受け取れるのは上限の10万円となり、差額分が自己負担となります。例えば15万円のスロープを買った場合、10万円の助成を受け、実質5万円で購入できることになります。
Q. 中古品を購入した場合も助成されますか?
A. 原則として新品の購入が想定されています。中古品は価格の妥当性や品質の保証が難しいため、対象外とされる可能性が高いです。どうしても中古品でなければならない理由がない限りは、新品での検討をおすすめします。
Q. 申請から入金までどのくらいの期間がかかりますか?
A. 申請の内容や時期にもよりますが、交付決定までにおよそ数週間、さらに購入後の実績報告から入金までにも一定の期間が必要です。トータルで2〜3ヶ月程度は見込んでおき、資金繰りに余裕を持って計画を立てましょう。
まとめ
名古屋市の’障害者への合理的配慮の提供支援に係る助成事業’は、義務化された社会的責任を果たそうとする事業者を力強く支援してくれる制度です。最大10万円という金額は、小規模な事業者にとって環境を整えるための大きな一歩になります。スロープ一枚、筆談ボード一つで、救われるお客様がいるかもしれません。事前相談というハードルはありますが、それは確実に採択へ近づくための親切なプロセスでもあります。新年度の受付が始まる2025年4月からを見据えて、まずは自店舗のバリアフリー化について考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の情報は執筆時点のものです。最新情報は名古屋市公式サイトや障害者差別相談センターでご確認ください。