岩手県の釜石港を利用して貨物を輸送する事業者の皆様に、ぜひ知っておいていただきたい制度があります。釜石市が実施している’釜石港コンテナ関係奨励金’は、港の利用拡大と地域経済の活性化を目的に、コンテナ1本単位から多額の助成を行う仕組みです。物流の2024年問題や環境負荷の低減が急務となる中、地方港を活用することでコスト削減と効率化を同時に実現できるチャンスといえます。
この補助金の要点
釜石港の定期航路を利用して貨物を輸出入、あるいは国内移動させる荷主が対象となります。コンテナ1本当たり2万円の利用奨励金に加え、大量輸送を行う場合には1口100万円の大口奨励金が上乗せされ、1社あたり年間最大500万円まで受給可能です。
釜石港コンテナ航路奨励金の全体像
この制度は、大きく分けて’利用奨励金’と’大口荷主奨励金’の2つの柱で構成されています。まず利用奨励金ですが、こちらはコンテナ1本の利用から申請できる非常に使い勝手の良い制度です。輸出入だけでなく、国内の他港との間で行う移出入も対象に含まれるため、幅広い物流ニーズに対応しています。助成額はコンテナ1本につき2万円で、年間50本、合計100万円が上限として設定されています。
さらに多くの貨物を取り扱う事業者のために用意されているのが大口荷主奨励金です。こちらはコンテナ50本を1口としてカウントし、1口あたり100万円というまとまった金額が助成されます。令和5年度の制度改正により、上限は4口(200本)までに調整されましたが、それでも年間400万円という大きな支援を受けることが可能です。これら2つの奨励金は併用ができるため、合わせると最大500万円という手厚いバックアップを受けることができます。
1荷主あたりの年間合計補助上限額
最大 500万円
対象となる事業者と貨物の条件
申請を行うためのハードルは決して高くありません。日本国内に事業所を構えている個人事業主、または法人であれば、規模を問わず対象となります。重要なのは’誰が運賃を負担しているか’という点であり、基本的に荷主としての立場であれば申請権利が生じます。対象となる貨物は、釜石港のコンテナ定期航路を利用した輸出入貨物、あるいは国内他港との間で輸送される移出入貨物です。コンテナの種類についても、一般的なドライコンテナからリーファーコンテナまで、種別を問わず助成の対象となります。
今こそ釜石港を利用すべき3つの戦略的理由
1. 物流の2024年問題への強力な対策
トラックドライバーの残業規制強化に伴う’2024年問題’は、地方の製造業にとって深刻な課題です。京浜港などの主要港まで長距離トラックで運ぶ従来のルートでは、車両の確保が困難になり、運送コストも高騰するリスクがあります。そこで釜石港を拠点とする海上輸送へ切り替えることで、陸上輸送の距離を大幅に短縮できます。これにより、ドライバー不足の影響を最小限に抑えつつ、安定した物流網を維持することが可能になります。
ポイント
長距離のトラック輸送を海上輸送に置き換える’モーダルシフト’は、単なるコスト削減だけでなく、事業継続計画(BCP)の観点からも非常に有効な戦略です。
2. 環境負荷の低減とカーボンニュートラルへの貢献
船舶による輸送は、トラック輸送と比較して1トンあたりのCO2排出量が極めて少ないという特徴があります。具体的には、営業用貨物車に比べて船舶の排出量は約5分の1程度に抑えられるというデータもあります。取引先からサプライチェーン全体での脱炭素化を求められるケースが増えている昨今、釜石港を活用して輸送距離を短縮することは、企業の環境姿勢をアピールする強力な武器となるでしょう。
3. 混雑を回避し、リードタイムを安定させる
東京港や横浜港といった大規模な港湾では、コンテナヤードの混雑や周辺道路の渋滞により、貨物のピックアップに時間がかかることが珍しくありません。対して釜石港のような地方港は、大規模港のような激しい混雑が少なく、スムーズな貨物の搬出入が期待できます。港湾背後の道路ネットワークが整っていることもあり、計画的な物流管理が可能になる点は、製造現場にとっても大きなメリットといえます。
奨励金受給までの5ステップ
事前相談と計画策定
まずは釜石市の港湾担当部署へ連絡し、自社の貨物が対象となるか確認します。予算枠があるため、利用前に相談しておくのが安心です。
釜石港ルートでの貨物輸送
実際に釜石港の定期航路を利用してコンテナ輸送を行います。船社やフォワーダーを通じて、釜石港経由のブッキングを進めてください。
必要書類の準備
輸送を証明する書類(船荷証券の写しやコンテナ一覧など)を整理します。利用本数が分かる資料を漏れなく揃えることが重要です。
奨励金交付申請書の提出
所定の申請様式に必要事項を記入し、準備した書類を添えて釜石市へ提出します。申請期限に遅れないよう注意しましょう。
審査と支払い
市による書類審査を経て、交付が決定すると指定の口座に奨励金が振り込まれます。審査期間を見込んで余裕を持った計画を立ててください。
申請のコツと採択に向けたアドバイス
まず意識すべきは’予算の範囲内での交付’というルールです。この奨励金は先着順の側面が強く、市の予算が上限に達した時点で、期間内であっても募集が終了してしまいます。特に年度の後半にまとめて申請しようとすると、すでに予算が底を突いているリスクがあるため、コンテナの利用がある程度まとまった段階で、早め早めに申請を進めるのが賢明です。
また、令和5年度からの改正により、大口荷主奨励金の上限額が従来の900万円から400万円へと変更された点にも注意してください。昨年度までの感覚で物流計画を立てていると、見込んでいた助成額が得られない可能性もあります。最新の制度概要をしっかり把握した上で、自社の輸送ボリュームに合わせた最適な申請タイミングを見極めましょう。
注意点
申請書類には、釜石港を利用したことを客観的に証明する資料が必須です。船社から発行される書類の写しなどは、紛失しないよう社内でルール化して保管しておくことをお勧めします。
よくある質問
Q. 外国との直接貿易ではなく、京浜港経由の国際フィーダー輸送も対象になりますか?
A. はい、対象になります。釜石港と主要港を結ぶフィーダー航路を利用して輸出入を行う場合も、この奨励金の趣旨に合致するため、積極的にご活用いただけます。
Q. 個人事業主でも、法人と同じ金額の助成を受けられますか?
A. もちろんです。国内に事業所を有し、自ら貨物の輸出入や移出入を行う個人事業主の方であれば、法人と同様の条件で最大500万円の助成を受けることが可能です。
Q. 20フィートコンテナと40フィートコンテナで助成額に違いはありますか?
A. 本制度においては、コンテナの種別やサイズに関わらず’1本当たり2万円’という定額での助成となっています。サイズによる金額の変動はありません。
Q. 国内輸送(移出入)だけを行っている場合でも申請できますか?
A. はい、可能です。海外との貿易だけでなく、日本国内の他の港との間で行われる貨物の移動についても、対象事業として明記されていますので、国内物流の最適化にも役立てられます。
Q. 予算が終了してしまったかどうかを確認する方法はありますか?
A. 釜石市のホームページで公募状況が公開されていますが、リアルタイムの予算残高については、直接、釜石市の港湾担当窓口へ電話でお問い合わせいただくのが最も確実です。
まとめ
釜石港コンテナ関係奨励金は、地方港を活用することで物流コストを抑えつつ、最大500万円というまとまった資金支援を受けられる非常に魅力的な制度です。2024年問題への対策やCO2削減といった社会的な要請に応えながら、企業の物流基盤を強化する絶好の機会といえるでしょう。まずは自社の現在の輸送ルートを見直し、釜石港への切り替えがどれほどのメリットを生むか検討してみてはいかがでしょうか。事前の相談から一歩ずつ進めていきましょう。
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