能登半島地震からの復興を目指す石川県内の建設現場では、深刻な人手不足が続いています。遠方から応援に来てくれる作業員を確保するためには、快適な住まいの提供が欠かせませんが、その賃借費用は経営にとって大きな負担になりがちです。そんな中小建設事業主の皆様を支えるために新設されたのが、人材確保等支援助成金の’作業員宿舎等経費助成(石川県)’です。この制度を活用すれば、宿舎や賃貸住宅の費用として1事業年度あたり最大200万円の支援を受けることが可能になります。
この助成金の要点
石川県内の復興現場で働く作業員のために宿舎やアパートを借りる中小建設事業主が対象です。宿舎なら1人あたり25万円、賃貸住宅なら月額3万円を上限に費用の3分の2が助成されます。1事業年度で最大200万円まで受給できるため、労働環境の整備に大きく役立ちます。
人材確保等支援助成金(石川県特例)の概要と目的
令和6年能登半島地震の被災地では、住宅やインフラの復旧に携わる建設作業員の需要が非常に高まっています。しかし、被災地は都市部から離れているケースが多く、作業員が毎日通うのは現実的ではありません。そこで厚生労働省は、中小の建設事業主が現場近くで宿舎を確保しやすいよう、既存の助成金に石川県を対象とした新しいコースを設けました。この特例措置は、単なる資金援助ではなく、被災地の復興を加速させ、かつ建設業界の魅力ある職場づくりを推進するという重要な役割を担っています。
今回の助成金で特に注目すべきは、助成の対象範囲が広がった点でしょう。これまでは工事ごとに宿舎を管理する必要がありましたが、小規模な工事が多数発生する能登の状況を考慮し、複数の現場を掛け持つ作業員が利用する宿舎も対象に含まれるようになりました。ただし、利用者の4分の3以上が民間工事に従事している必要があるなど、細かいルールも設定されています。事業主の皆様は、自社の現場が石川県内に所在し、2024年1月1日以降に開始されたものであるかを確認することから始めてみてください。
補助上限額(1事業年度あたり)
最大 200万円
助成の対象となる3つの事業区分
この助成金は、大きく分けて’作業員宿舎’、’賃貸住宅’、’作業員施設’の3つのカテゴリーで構成されています。それぞれの用途や支給条件を整理して説明します。まず1つ目の作業員宿舎は、事業経営上、工事現場の近くに設置が必要な寄宿舎を指します。こちらの場合、建設労働者1人あたり25万円という高額な支援が受けられます。2人以上で共同生活を送れる規模であることや、一定の設置基準を満たしていることが条件となるため、事前のチェックが欠かせません。
次に2つ目の賃貸住宅ですが、これは遠隔地から新たに作業員を採用する際に借り上げるアパートなどが該当します。助成額は月々の家賃など、実際に支払った費用の3分の2までとなり、1人あたり月額3万円が上限です。採用にあたってはハローワークなどの紹介を経ていることや、以前の住居から現場まで60キロメートル以上の距離があることなど、採用と移動の条件が厳格に決まっている点に注意が必要です。そして3つ目の作業員施設は、現場での労働環境を改善するための設備です。具体的には、休憩室や更衣室、シャワー室、トイレなどの賃借費用が対象になります。清潔で快適な環境を整えることは、若い世代の定着にもつながるため、積極的に活用したい項目ですね。
| 区分 | 助成内容 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 作業員宿舎 | 1人あたり25万円 | 2人以上が居住可能で設置基準を満たすもの |
| 賃貸住宅 | 賃借料の2/3(上限月3万円/人) | 60km以上の遠隔地からハローワーク等を通じ採用 |
| 作業員施設 | 賃借料の2/3 | 休憩室、更衣室、トイレ、シャワー室等 |
申請から受給までの具体的な流れ
助成金を受け取るまでには、大きく分けて5つのステップがあります。まず最初に行わなければならないのが’計画届’の提出です。原則として賃借を開始する2週間前までに、管轄の労働局へ届け出る必要があります。計画が承認されないまま契約を進めてしまうと、助成対象外となる恐れがあるため、スケジュール管理には十分注意してください。次に、承認された計画に基づいて宿舎の賃借を開始します。この際、賃貸借契約書や領収書などはすべて大切に保管しておかなければなりません。
そして、実際に作業員が入居し、一定期間の利用が完了した後に’支給申請’を行います。支給申請のタイミングは、借りる施設の種類によって異なります。作業員宿舎の場合は入居後すぐに申請可能ですが、アパートなどの賃貸住宅は数ヶ月分をまとめて申請する形になります。最後に、労働局による審査を経て、問題がなければ助成金が指定の口座に振り込まれます。審査では、対象の作業員が本当に建設労働者として雇用されているか、工事現場の場所と宿舎の距離は適切かといった点が厳しくチェックされるでしょう。
計画届の作成と提出
賃借開始の2週間前までに、石川県内の工事現場の状況を記した計画届を労働局へ提出します。
賃貸借契約と利用開始
計画が認められた後、実際に宿舎やアパートを契約し、作業員の入居を開始させます。
実績の記録と書類保管
賃借料の支払いや、誰がいつ入居したかを証明する名簿や出勤簿を適切に管理します。
支給申請書の提出
定められた期間内に、実際に発生した経費に基づき支給申請書と証憑書類を提出します。
審査と助成金の振込
労働局での審査完了後、決定通知が届き、指定口座に助成金が入金されます。
申請のコツと採択されやすいポイント
この助成金を確実に受給するためには、まず’労働保険’の加入状況を完璧に整えておくことが大前提です。建設業界では複数の現場を持つことが多いため、雇用保険の適用が適切になされているか、今一度確認してください。不備があると、どんなに立派な宿舎を用意しても申請が通りません。また、今回の特例では’石川県内の工事現場’であることが条件ですが、2024年1月1日以降に始まった工事である証明として、工事請負契約書などの日付も厳しく見られます。
成功のための重要ポイント
最も重要なのは、宿舎を利用する作業員が’建設労働者’であることを公的に証明できることです。賃金台帳や出勤簿、さらには建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録状況などを整備し、実態が伴っていることを示せるようにしましょう。また、賃貸住宅の場合は、ハローワーク等の紹介による採用が必須条件となっているため、自社で直接採用した人は対象外となる点に注意してください。
さらに、実務上のコツとして、労働局の担当者と事前にコミュニケーションを取っておくことをお勧めします。特に能登半島地震の特例は比較的新しい制度であるため、現場の状況に応じた柔軟な解釈が必要な場面も出てくるでしょう。計画届を出す前に、自社のケースが対象になるか電話や窓口で相談しておけば、書類の差し戻しを防ぐことができ、結果としてスムーズな受給につながります。手間を惜しまず、丁寧な事前確認を行うことが、確実な採択への近道です。
申請時の注意点
1事業年度あたりの上限額は200万円ですが、これは複数の区分(宿舎・賃貸・施設)を合算した金額です。また、親族のみを雇用している事業主や、いわゆる’一人親方’の方は対象にならない点も、申請前に必ず確認しておきたいポイントです。不正受給にならないよう、実際の利用実態に基づいた誠実な申請を心がけてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 石川県以外の事業主でも、石川県の現場で工事をするなら申請できますか?
A. はい、可能です。事業主の所在地に関わらず、石川県内に所在する工事現場において、基準を満たす宿舎等を賃借し、建設労働者を従事させる中小建設事業主であれば対象となります。
Q. すでに宿舎を借りてしまっていますが、今からでも申請は間に合いますか?
A. 原則は賃借開始の2週間前までに計画届が必要ですが、2024年3月31日までの期間については、特例として1月1日まで遡って申請することが可能です。現在の詳しい受付状況については、管轄の労働局へ早急に相談してください。
Q. 賃貸住宅の助成を受けるための’60キロメートル’の基準はどう測りますか?
A. 原則として、作業員の直前の住居から賃借した住宅までの経路のうち、一般的な交通機関や道路を利用した最短の移動距離で判定されます。地図ソフト等での計測結果を添付資料として求められる場合があります。
Q. 民間工事と公共工事の両方に従事している場合でも助成されますか?
A. 特例の宿舎助成の場合、居住する労働者の4分の3以上が民間工事に従事していることが一つの要件となります。工事日報や出勤簿を元に、どの工事に何日従事したかを詳細に記録しておく必要があります。
Q. 助成金はいつ頃振り込まれますか?
A. 支給申請書の提出から審査を経て、概ね3ヶ月から半年程度かかるのが一般的です。ただし、書類の不備や確認事項が多い場合は、さらに時間がかかることもあります。余裕を持った資金繰りをお勧めします。
まとめ
石川県における復興支援は、建設業界の総力が試される大きな課題です。人材確保等支援助成金の石川県特例コースを活用することは、コスト削減だけでなく、過酷な現場で働く作業員の皆様の生活を守ることにもつながります。最大200万円という手厚い支援を最大限に利用するために、まずは自社の現場計画を見直し、早めに労働局への相談をスタートさせましょう。適切な準備が、被災地の再生に向けた大きな一歩になります。
※本記事の情報は2024年8月時点の公募内容に基づいています。最新の要件や様式については、必ず厚生労働省の公式サイトや管轄労働局の案内を確認してください。