島根県内で製造業を営む皆様にとって、今や脱炭素化は単なる環境への配慮ではなく、取引先から選ばれ続けるための必須条件となりつつあります。取引先から二酸化炭素排出量の削減を求められたり、グリーン成長分野への進出を検討したりしているなら、しまね産業振興財団が実施するこの助成金は見逃せません。設備投資やシステム導入に最大1,000万円の支援が受けられるため、自社の競争力を一段階引き上げる絶好のチャンスといえます。この記事では、申請を検討している経営者や担当者の方に向けて、制度の仕組みから採択を勝ち取るためのポイントまでを詳しく解説します。
この補助金の要点
島根県内の製造業者を対象に、脱炭素化に資する設備投資や工場内の配置変更、エネルギーの見える化を幅広く支援する制度です。補助上限は最大1,000万円で、補助率は経費の2分の1となっており、事前の相談が必須となっている点に注意が必要です。
ものづくり産業脱炭素化促進事業助成金の全体像
この助成金は、島根県内のものづくり企業が脱炭素化に取り組むことで、新しい市場への進出や既存の取引維持を実現し、県内産業全体の競争力を高めることを目的としています。最近では大手企業がサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを掲げているため、受注を維持するためには中小企業側も具体的な対策を講じなければなりません。この制度はそうした企業の背中を強く後押ししてくれる存在です。申請の類型は大きく分けて4つのタイプが用意されており、自社の課題に合わせて選べるのが特徴といえます。
活用できる4つの事業類型と支援内容
まずA型の成長分野進出は、電気自動車や再生可能エネルギー関連といったグリーン成長分野からの受注を増やすための設備投資が対象です。これから新しい分野に打って出たい企業にとって非常に使い勝手の良い枠といえます。次にB型の生産プロセス改善は、既存の生産ラインを見直して炭素生産性を向上させる設備導入や、太陽光発電などの再生可能エネルギーを自家消費するために使えます。特に高効率な機械への更新を考えているなら、この枠が筆頭候補になるでしょう。C型は少しユニークで、工場内の設備配置を見直すことで生産効率を上げ、結果としてエネルギー使用量を減らすための経費を支援してくれます。最後のD型は、どの設備がどれだけエネルギーを使っているかを可視化し、専門家の指導を受けながら削減計画を立てるための計測器導入などをサポートしてくれます。
注目の第4次公募スケジュール
現在、令和7年度に向けた第4次公募の情報が出ています。申請期間は2025年12月22日から2026年1月30日までとなっており、事前の相談が欠かせません。年明けの締め切りに向けて、早めに準備をスタートさせることが重要です。
補助上限額(A型・B型の場合)
1,000万円
補助率:1/2以内
対象となる経費と具体的な活用シーン
助成金の対象となる経費は多岐にわたりますが、基本的には脱炭素化に直接寄与するものが中心です。機械装置の購入費はもちろん、それを設置するための改修費、さらには生産管理システムの導入費や技術を導入するための費用も含まれます。市場調査費や配置変更に要する費用も対象となるため、ハード面だけでなくソフト面での取り組みも支援を受けられるのが嬉しいポイントですね。例えば、古いプレス機を最新の省エネ型に更新して電力消費を抑えつつ、同時にそのラインの電力使用量をモニターで監視するシステムを導入するといったケースが想定されます。
また、再生可能エネルギーの自家消費設備、いわゆる屋根上太陽光パネルの設置もB型の中で支援されます。ただし、売電目的ではなくあくまで自社工場での消費が条件となる点には注意しましょう。最近の電気代高騰に悩む企業にとっては、コスト削減と脱炭素化を同時に達成できる有効な手段になります。さらに、工場のレイアウト変更によってフォークリフトの移動距離を短縮したり、熱効率を最適化したりする取り組みも、C型を活用することで費用負担を軽減しながら実施できます。
活用のヒント
単に古い設備を新しくするだけではなく、それによって二酸化炭素の排出量が具体的に何パーセント減るのか、あるいは新しい分野での売上がいくら見込めるのかを数値で語れるようにしておくことが、採択への近道です。
申請に欠かせない重要な要件
この助成金には、いくつかのハードルが設定されています。すべての類型に共通するのは、先駆的な取り組みとしてその成果を外部に公開することに同意できるかどうかという点です。県内の他の企業の模範となるような事業が期待されているわけですね。また、A型とB型については、国が推奨しているパートナーシップ構築宣言への登録が必須条件となっています。これは取引先との共存共栄を目指すことを宣言するもので、オンラインで比較的簡単に手続きできますが、未登録の場合は早急に対応が必要です。
数値目標についても明確な基準があります。B型やC型では、事業場単位での炭素生産性を年率平均1パーセント以上増加させなければなりません。炭素生産性とは、付加価値額をエネルギー起源の二酸化炭素排出量で割った数値のことです。要するに、環境負荷を抑えながらより多くの価値を生み出す体質への転換が求められているのです。さらに、B型やD型では、事前に省エネ診断を受診し、それに基づいた削減計画を策定していることも条件となります。専門家の目を入れて、客観的に効果がある取り組みだと証明することが重視されているといえますね。
注意点
A型の申請に関しては、過去にこの制度での採択実績がある場合、申請できないケースがあります。以前に利用したことがある企業は、今回の公募が対象になるかどうか、事前相談の際に必ず確認しておきましょう。
申請から採択、事業実施までの5ステップ
補助金の申請は、手順を間違えると受け取れなくなるリスクがあるため、流れを正確に把握しておきましょう。特に島根県のこの制度は、いきなり書類を出すのではなく、財団との対話から始まるのが大きな特徴です。計画を練り上げる段階から、しっかりと伴走支援を受けることができます。
しまね産業振興財団への事前相談
まずは財団の新事業支援課に連絡し、現在の構想を伝えます。ここで事業の内容が助成金の趣旨に合っているか、要件を満たせそうかを確認します。この相談を経ていないと本申請ができないため、最も重要なステップです。
省エネ診断の受診と計画策定
B型やD型を検討している場合は、専門家による省エネ診断を受けます。現状のエネルギー使用の無駄を見つけ出し、導入する設備によってどれだけの削減効果があるかを具体的にシミュレーションし、計画書に落とし込みます。
書類の作成と本申請
パートナーシップ構築宣言の登録状況や、導入設備の相見積もり、事業計画書などを揃えて提出します。締め切り直前は混み合うため、余裕を持って書類を完成させ、不備がないか何度もチェックすることが大切です。
審査・採択と設備の導入
提出された計画が審査され、採択が決まると通知が届きます。基本的には交付決定後の発注となりますが、やむを得ない事情がある場合は事前着手承認制度を利用することも可能です。設備の導入が終わったら、支払いを済ませて領収書を保管しておきます。
実績報告と助成金の受け取り
事業完了後に実績報告書を提出します。導入した設備の写真や支払証明書を添えて、計画通りに実施されたことを報告します。財団による検査を経て、ようやく助成金が指定の口座に振り込まれます。
採択率を高めるための3つのポイント
多くの企業が申請する中で、自社の計画を魅力的に見せるためには工夫が必要です。診断士の視点から言えば、審査員は『この会社に投資することで、島根県の産業がどう良くなるか』を見ています。単に自分たちの会社が楽になる、という視点だけでなく、社会的な意義を盛り込むことが重要といえます。
第一のポイントは、脱炭素化が取引関係の強化にどう直結するかを具体的に書くことです。例えば、主要取引先から環境負荷低減の要請が来ていることを示し、今回の投資によって取引の継続や拡大が確実になる、といったストーリーは非常に説得力があります。もし具体的な要望書や内諾があるなら、それを根拠として示すのが効果的です。また、第二のポイントとして、数値目標の根拠を細かく積み上げることが挙げられます。カタログスペック上の削減率だけでなく、実際の稼働時間や生産量を踏まえたリアルな削減予測を立てることが、計画の信頼性を高めます。
そして第三に、波及効果への意識を忘れないでください。自社の成功事例をどのように公開し、同じ悩みを抱える県内の他企業へ広めていくか、といった『先駆性』の部分を熱意を持って記述しましょう。財団側も、成功モデルを作って県全体に広めたいと考えているため、情報発信への積極的な姿勢は高く評価される傾向にあります。
| 事業類型 | 主な要件 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| A型:成長分野進出 | グリーン成長分野からの受注増、パートナーシップ構築宣言登録 | 1,000万円 |
| B型:プロセス改善 | 炭素生産性年1%向上、省エネ診断の受診 | 1,000万円 |
| C型:配置変更 | 炭素生産性年1%向上を伴う工場内レイアウト変更 | 100万円 |
| D型:見える化 | エネルギー計測器導入、専門家による継続指導 | 500万円 |
よくある質問
Q. パートナーシップ構築宣言はどのように登録すればよいですか?
A. 国が運営するポータルサイトからオンラインで登録可能です。自社の代表者名で宣言内容を作成し、アップロードする形式となります。費用はかかりませんが、登録までに数日かかることもあるため、助成金の申請前に済ませておくのが安心です。
Q. 補助金が出る前に機械を買ってしまっても対象になりますか?
A. 原則として交付決定後の発注がルールですが、急を要する場合は事前着手承認制度が利用できます。ただし、あくまで申請が必要であり、承認される前に発注したものは対象外となるリスクがあるため、必ず事前に財団へ相談してください。
Q. 炭素生産性の計算方法を詳しく教えてください。
A. 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を、エネルギー起源の二酸化炭素排出量で割って算出します。二酸化炭素排出量は、電気やガスの使用量に所定の係数をかけて求めます。計算式に不安がある場合は、財団や商工会議所などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。
Q. 省エネ診断はどこで受ければよいのでしょうか?
A. 省エネお助け隊や省エネルギーセンターなどが実施している診断が対象となります。診断には予約が必要な場合が多く、受診から報告書が出るまでにある程度の期間がかかるため、公募期間が始まってからではなく、今すぐにでも手配を進めるべきです。
Q. 補助率は一律で2分の1ですか?
A. はい、すべての類型において補助率は2分の1以内となっています。つまり、2,000万円の設備を導入した際に上限の1,000万円が補助されるという計算になります。残りの自己負担分については、銀行融資などを検討されている企業も多いですね。
まとめ
島根県のものづくり産業脱炭素化促進事業助成金は、環境対応をチャンスに変えたい製造業者にとって、非常に強力な支援策です。最大1,000万円という金額もさることながら、計画策定の段階から専門的なアドバイスを受けられる点は、中小企業にとって大きなメリットといえるでしょう。第4次公募に向けて、まずは自社のエネルギー使用状況を把握し、どの類型が最適か検討することから始めてみてください。脱炭素という大きな波を乗りこなすために、こうした公的な支援を賢く活用していきましょう。
※本記事の情報は執筆時点のものです。最新の公募要領や詳細な要件については、しまね産業振興財団の公式サイトを必ずご確認ください。