兵庫県内で訪問看護・訪問介護サービスに従事する職員の安全を確保し、ハラスメントによる離職を防止するための包括的な補助制度です。暴力行為等が懸念されるケースでの2人訪問費用補助や、防犯ブザー等の機器導入支援、専門的な相談窓口の設置など、現場の負担を軽減し、安心して働き続けられる環境づくりを強力にサポートします。
この記事でわかること
- 暴力行為・ハラスメント対策としての『2人訪問補助』の具体的な単価と要件
- 防犯ブザーやセキュリティシステム導入にかかる『1人訪問補助』の詳細
- 兵庫県独自の相談窓口『暴力等お困り相談ひょうご』の活用方法
- 2025年度から義務化が進むカスタマーハラスメント対策の法制度対応
訪問看護師・訪問介護員等安全確保・離職防止対策事業の全体像
兵庫県では、平成29年度より介護現場におけるハラスメント対策を全国に先駆けて推進してきました。在宅ケアの現場では、密室でのサービス提供となるため、利用者や家族からの暴言、暴力、セクシャルハラスメントなどのリスクが常に存在します。本事業は、こうしたリスクから職員を守り、介護人材の流出を防ぐことを目的としています。
制度の重要性:カスタマーハラスメント対策の法制化
2025年(令和7年)の労働施策総合推進法の改正により、事業主にはカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務付けられる予定です。本補助金を活用することは、単なる費用補填ではなく、法令遵守(コンプライアンス)の体制構築にも直結します。
2人訪問補助:安全性と採算性を両立する支援
補助の対象となるケース
通常、介護報酬では2人訪問が必要な場合に一定の加算が認められていますが、それには『利用者の同意』が必須となります。しかし、暴力行為を行う利用者やその家族が、追加料金の発生する2人訪問に同意しないケースが多く、事業所が泣き寝入りする場面が散見されていました。本補助金は、この『同意が得られず加算が算定できない場合』に、加算相当額の一部を補填する画期的な仕組みです。
『暴力行為等』の定義に注意
- 身体的暴力:殴る、蹴る、突き飛ばす、物を投げつける等
- 精神的暴力:暴言、威嚇、過大なクレーム、差別的な発言等
- セクシャルハラスメント:不適切な接触、性的な発言、ストーカー行為等
- 器物損壊:訪問者の持ち物を故意に壊す、汚す等
補助金額・単価の詳細
1人訪問補助:最新テクノロジーによる防犯強化
人員不足や、リスクが比較的低いと判断されるケースにおいて、どうしても1人で訪問せざるを得ない場合があります。その際の安全対策として、IT機器やセキュリティサービスの導入を支援するのが『1人訪問補助』です。
対象となる経費と補助額
- 位置機能・緊急通報付き機器:GPS連動の防犯ブザー、緊急呼び出し機能付き携帯電話等。
- セキュリティシステム導入費:警備保障会社によるシステム構築、機器購入費。
- 補助額:一律 21,500円
- 注意点:月々の通信費や警備料金などのランニングコストは対象外です。
専門家のアドバイス:機器選びのポイント
単なる防犯ブザーではなく、録音機能や位置情報共有が可能な端末を選ぶことで、万が一の事態が発生した際に客観的な証拠を残すことができます。これは後の弁護士相談や被害届提出において極めて重要な役割を果たします。
困った時の専門相談窓口『お困り相談ひょうご』
補助金制度だけでなく、実際にトラブルが発生した際のサポート体制も整っています。公益社団法人兵庫県看護協会内に設置された相談窓口では、専門の相談員が事案に応じた適切なアドバイスや専門機関の紹介を行っています。
~訪問看護師・訪問介護員への暴力等お困り相談ひょうご~
| 電話番号 | 078-371-4165 |
| 開設日時 | 月曜日~金曜日 13:00~16:00 |
| 対象者 | 兵庫県内の訪問看護・介護事業所の全職員・管理者 |
申請から採択までの5つのステップ
1
市町への事前相談・協議
まず、事業所の所在地ではなく『利用者の介護保険被保険者証』を発行している市町が窓口となります。まずは担当課へ電話し、現在の状況(ハラスメントの事実等)を相談してください。
2
事前協議書の提出
2人訪問が必要な理由や、利用者の同意が得られない背景、ハラスメントの具体的な内容を記した協議書を作成し、提出します。
3
事業の実施・記録の保管
市町からの内諾または決定後、実際に2人訪問を開始します。毎回の訪問記録、勤務表、給与明細など、2名で訪問した事実を証明する資料を厳重に保管してください。
4
交付申請・実績報告
年度末などの指定された時期に、実際に行った回数に基づいて交付申請を行います。神戸市など、電子メールでの提出を受け付けている自治体も増えています。
5
補助金の交付
自治体での審査完了後、指定の口座に補助金が振り込まれます。実績報告から振込まで数ヶ月かかる場合があるため、資金繰りには余裕を持ってください。
よくある質問(FAQ)
Q利用者本人の暴力ではなく、同居する家族の暴言が原因でも補助対象になりますか?
はい、対象になります。本補助金は『利用者又はその家族等からの暴力行為等』を対象としています。家族による過度な監視、執拗な苦情、セクハラ行為等で安全なサービス提供が困難な場合も申請可能です。
Q年度の途中からでも申請は可能ですか?
多くの自治体で随時相談を受け付けていますが、予算の上限に達し次第締め切られる場合があります。トラブルが発生し、2人訪問が必要と判断した段階で、速やかに自治体へ事前相談を行ってください。
Q補助金を受けるために必要な『証憑』には何が含まれますか?
一般的には、(1)介護記録(2名で対応した旨の記載)、(2)勤務実績表(シフト表)、(3)賃金台帳(手当等の支払い確認)、(4)ハラスメントの内容を記録した事故報告書や相談記録などが必要となります。自治体によって細部が異なるため、要綱を必ず確認してください。
Q市町によって補助単価や条件が違うことはありますか?
基本的には兵庫県が定める一律の基準(県市協調事業)に基づいていますが、一部の自治体では独自に補助率を上乗せしたり、対象範囲(定期巡回事業所を含める等)を広げている場合があります。必ず被保険者の自治体の最新情報を確認してください。
Q看護補助者が同行する場合も補助の対象になりますか?
はい、訪問看護の場合は『看護師等と看護補助者による複数名訪問』として補助単価が設定されています(30分以上で3,170円/回)。同行する職種によって単価が変動するため注意が必要です。
失敗しないための申請ポイント:専門家の視点
補助金申請において最も多い失敗は、ハラスメントの事実認定が曖昧であること、および『同意が得られない相当の理由』の記述不足です。以下の点に留意して書類を準備してください。
よくある却下理由と対策
- 記録の具体性欠如:単に『暴言があった』ではなく、『○時○分頃、○○という発言があり、職員が恐怖を感じたため一時退室した』等、5W1Hで記録してください。
- 利用者への説明不足:加算算定の打診を行った経緯を記録に残してください。『経済的な理由で断られた』『本人が非を認めず加算を拒否した』等の詳細な経緯が補助の正当性を裏付けます。
- 事前相談なしの実施:事後報告では原則として補助対象になりません。必ず訪問形態を変更する前に自治体へ一報を入れてください。
今後の展望:2025年度研修会への参加のススメ
令和7年度(2026年2月7日開催予定)には、カスタマーハラスメント対策に特化した大規模な研修会が予定されています。弁護士やケアマネジャー、現場のパネリストが登壇し、より実戦的な対策を学ぶことが可能です。補助金の活用と並行して、組織全体の『ハラスメント許さない』という文化を醸成することが、真の離職防止につながります。
兵庫県の『安全確保・離職防止対策事業』は、現場で働く皆さんの心身の健康を守るためのセーフティネットです。補助金を賢く活用することで、コストを抑えつつ、職員が誇りを持って働ける職場を実現できます。まずは一人で抱え込まず、所属自治体や相談窓口に声を上げることが第一歩です。
最新の申請書・要綱を確認しましょう
各市町の公式サイトにて、令和7年度向けの事前協議書が順次公開されています。早めの準備が確実な採択への近道です。
免責事項: 本記事の情報は2024年10月時点の公募情報を基に作成されています。兵庫県および各市町の予算状況や制度改正により、補助率、単価、対象範囲が変更される場合があります。申請にあたっては、必ず利用者の介護保険保険者である自治体の最新要綱をご確認ください。