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週所定労働時間を延長し新たに社会保険に加入させる短時間労働者を雇用す…
重要ポイント(結論)
106万円の壁が撤廃されても、この助成金の価値は消えません
2026年10月に賃金要件(月額8.8万円)が撤廃されても、週20時間未満で働く短時間労働者は引き続き社会保険の対象外です。労働時間を延長して社会保険に加入させる事業主には、労働者1人あたり最大75万円の助成が令和8年度も続きます。
「短時間労働者労働時間延長支援コース」は、パート・アルバイトなど短時間労働者のいわゆる「年収の壁」を意識した就業調整(働き控え)を解消するため、週所定労働時間を延長して新たに社会保険に加入させた事業主に助成するキャリアアップ助成金のコースです。令和7年(2025年)7月1日に、旧「社会保険適用時処遇改善コース」の労働時間延長メニューの要件・助成額を見直すかたちで新設されました。
令和8年4月版のリーフレット(厚生労働省 LL080401 No.8)でも「年収の壁対策 労働者1人につき最大75万円助成」として案内が継続されており、令和8年度時点でも現役のコースです。労働者にとっては手取り収入を減らさずに社会保険へ加入でき、事業主にとっては人手不足の解消と定着率の向上につながります。
誤解されがちですが、このコースは「社会保険に加入させただけ」では対象になりません。加入と同時に週所定労働時間を一定時間延長するか、延長幅に応じた賃上げを組み合わせることが条件です。
単にパートの社会保険加入手続きをするだけでは助成金はもらえないんですね。労働時間の延長とセットが必須ということですか?
TL;DR — 5秒でわかるまとめ


助成額は1年目と2年目の2段階です。1年目は週所定労働時間の延長幅と賃金増額率の組み合わせに応じて、企業規模ごとに一律の額が支給されます。延長幅が小さいほど必要な賃金増額率は高くなる仕組みで、5時間以上の延長なら賃上げなしで対象になる一方、2時間以上3時間未満の延長では15%以上の賃上げとのセットが必須です。
| 週所定労働時間の延長 | 賃金の増額 | 小規模企業(30人以下) | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|---|---|
| 5時間以上 | ー | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
| 4時間以上5時間未満 | 5%以上 | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
| 3時間以上4時間未満 | 10%以上 | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
| 2時間以上3時間未満 | 15%以上 | 50万円 | 40万円 | 30万円 |
複数年かけて段階的に週所定労働時間を延長し、社会保険に加入する場合も対象です。2年目は、1年目の取組み内容と2年目の取組み実施後を比較して、次のいずれかを達成すると加算されます。
週所定労働時間をさらに2時間以上延長すると、小規模企業25万円・中小企業20万円・大企業15万円が加算されます。
基本給を5%以上増額、または昇給・賞与・退職金制度を新たに適用しても同額が加算されます。
小規模企業(常時雇用労働者30人以下)が短時間労働者を対象にこのコースを使うと、対象人数に応じて次の金額が受給できます。
| 対象人数 | 1年目のみ(社保加入+時間延長) | 1年目+2年目まで実施 | 1人あたり換算 |
|---|---|---|---|
| 1名 | 50万円 | 75万円 | 最大75万円 |
| 3名 | 150万円 | 225万円 | 最大75万円 |
| 5名 | 250万円 | 375万円 | 最大75万円 |
対象者・対象事業
対象地域(全国)
詳細条件・対象自治体は公募要領をご確認ください。
表の「1年目+2年目まで実施」は、2年目の要件(さらなる延長または賃上げ等)まですべて満たした満額ベースの試算です。実際には1年目の取組みのみで終わるケースも多く、その場合は小規模企業で1人あたり50万円、中小企業で40万円、大企業で30万円が現実的なレンジになります。
中小企業・大企業の区分は、単純な人数の多さだけで決まるわけではありません。常時雇用労働者30人以下の小規模企業以外は、業種ごとの資本金額または常時雇用労働者数のいずれかで中小企業か大企業かが判定されます(例:製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売業(飲食店を含む)は資本金5,000万円以下または従業員50人以下)。したがって常時雇用労働者31〜50人の事業主も、多くの業種でこの基準により中小企業に区分され、1人あたり最大60万円(1年目40万円+2年目20万円)の対象です。これに該当しない事業主は大企業として1人あたり最大45万円(1年目30万円+2年目15万円)が目安です。次に説明する「従業員51人以上」という数字は、このコースの助成額区分とは別の、社会保険加入の義務化ラインを指すものなので混同しないよう注意してください。
このコースの本質は、労働時間延長にともなう社会保険料の事業主負担増を助成額で相殺することにあります。パートを新たに社会保険に加入させると、事業主は健康保険・厚生年金保険料のおよそ半分(労使折半分)を毎月負担することになります。目安として、事業主負担分を月収に対しておおむね15%程度(協会けんぽ・厚生年金の概算。加入する保険者や年齢により変動するため要確認)とすると、月額賃金別の負担と小規模企業の助成額(1人あたり最大75万円)との関係は次のとおりです。
| 月額賃金の目安 | 事業主負担の社会保険料(月額目安) | 事業主負担の社会保険料(年額目安) | 小規模企業の助成額(1人あたり) | 助成額でカバーできる年数の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 8.8万円 | 約1.3万円 | 約15.8万円 | 75万円 | 約4.7年分 |
| 11万円 | 約1.7万円 | 約19.8万円 | 75万円 | 約3.8年分 |
| 13万円 | 約2.0万円 | 約23.4万円 | 75万円 | 約3.2年分 |
助成額はあくまで新規加入から数年分の負担増を相殺する一時金であり、社会保険料の事業主負担は加入継続中ずっと発生し続けます。それでも、年収の壁を意識した働き控えを解消して労働力を確保できる効果と合わせて考えると、負担増の初期数年間をこのコースでならすメリットは大きいといえます。
ここからは、助成額の区分とは別の話として、短時間労働者本人が社会保険に加入する義務があるかどうかの企業規模ライン(社会保険の適用拡大)を確認します。
週の所定労働時間が20時間以上かつ所定内賃金が月額8.8万円以上(学生を除く)であれば、短時間労働者本人の社会保険加入は義務です。この賃金要件は2026年10月に撤廃予定ですが、撤廃後も週20時間以上であることは条件として残ります。
加入義務の対象外のため、労使合意によって短時間労働者を社会保険に加入させる事業所になることができます。義務化されるのは2027年10月以降、常時雇用労働者36人超の企業から段階的に拡大していく見込みです。

令和7年(2025年)6月に公布された年金制度改正法により、被用者保険(社会保険)の適用要件のうち賃金要件(月額8.8万円以上、年収換算で約106万円)は2026年10月1日に撤廃される予定です。撤廃後は、従業員51人以上の企業でも「週の所定労働時間が20時間以上」であることだけが要件となり、これまで賃金の低さを理由に加入対象外だった短時間労働者の一部が、自動的に社会保険の対象になります。
ただし、週所定労働時間が20時間未満の働き方を続ける限り、106万円の壁が撤廃されても社会保険には加入しません。つまり「収入を増やしても社会保険料が引かれない」働き方自体は撤廃後も選べるため、労働時間を延長して社会保険に加入させたい事業主にとって、このコースで後押しする意味は変わらないということです。
2026年10月の賃金要件撤廃で対象は「週20時間以上」に一本化されますが、20時間未満のパートは引き続き社会保険の外側です。労働時間を延長して壁を越えてもらう後押しとして、このコースの意味は変わりません。
うちは従業員50人以下の小さい会社です。企業規模要件があると聞いたので、このコースは対象外になりますか?
いいえ、逆です。このコースは常時雇用労働者30人以下の小規模企業がもっとも助成額の高い区分(1人あたり最大75万円)の対象で、企業規模の下限によってコース自体が対象外になることはありません。ここで話題にしている「従業員51人以上/50人以下」という企業規模要件は、このコースの対象・対象外を決めるものではなく、短時間労働者本人の社会保険加入を義務付けるかどうかのライン(社会保険の適用拡大)を指す別の制度上の基準です。50人以下の企業は2026年10月時点では引き続き加入義務化の対象外ですが、労使合意による任意加入は可能で、その際にこのコースを使えます。段階的な企業規模要件の縮小スケジュール(2027年10月:36人超/2029年10月:21人超/2032年10月:11人超/2035年10月:要件撤廃)を見据えて、早めに労働時間延長と社会保険加入に取り組む事業主ほど、このコースの助成を活用できる期間が長くなります。

旧「社会保険適用時処遇改善コース」の計画届をすでに出している場合、本コースの届出をやり直す必要がありますか?
いいえ。旧コースの計画届を提出済みであれば、本コースの計画届・変更届の提出は不要です。旧コースの併用メニュー等に取り組んでいて、本コースの要件を満たす場合は、そのまま切り替えて支給申請できます。
対象判定チェック
このコースは要件が細かく、見落としによる対象外や不支給の落とし穴が起こりやすい制度です。代表的な失敗パターンを事前に確認しておきましょう。
取組み期間中に対象の労働者が退職してしまった場合はどうなりますか?
退職した労働者については、その時点までの取組みが要件を満たしていても支給対象外となるのが原則です。6か月の取組み継続要件を満たせない場合は、別の対象労働者での再申請や、管轄労働局への個別相談が必要です。
キャリアアップ助成金には複数のコースがあり、混同しやすいため整理しておきます。
| コース名 | 主な対象・取組み | 助成額の目安 |
|---|---|---|
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 短時間労働者の労働時間延長+新規社会保険加入 | 1人あたり最大75万円 |
| 正社員化コース | 有期雇用労働者等を正社員へ転換 | 1人あたり最大80万円前後(企業規模・加算により変動) |
| 社会保険適用時処遇改善コース(併用メニュー等) | 手当支給等による社会保険適用時の処遇改善 | 労働者数・取組み内容により変動 |
| 賃金規定等改定コース | 賃金規定の増額改定 | 増額率・対象人数により変動 |
取組み期間中に正社員転換を予定している場合は本コースではなく正社員化コースの対象になるため、どちらの取組みを優先するか事前に整理しておくと、対象外になる失敗を避けやすくなります。

最終更新:2026年7月12日/本記事は令和8年(2026年)7月時点の厚生労働省公表情報にもとづきます。2026年10月の賃金要件撤廃時期を含め、制度の詳細や最新の運用は厚生労働省・管轄の都道府県労働局の公式情報を必ずご確認ください。
対象・申請情報まとめ
詳細条件は公募要領で確認してください。
この補助金のポイント
| 補助対象経費 | 本助成金は、特定の経費を補助するものではなく、要件を満たす取り組み(労働時間延長、賃上げ等)を実施し… 詳細を見る › |
|---|---|
| 公募期間 | 令和7年7月1日新設・令和8年度も継続実施中(随時、取組み開始前日までにキャリアアップ計画書の提出が必要) |
| 実施機関 | 厚生労働省 |
| 主要スケジュール |
|
| 申請方法 | オンライン・郵送併用 |
| 必要書類 | キャリアアップ計画書、支給申請書、支給要件確認申立書、雇用契約書または労働条件通… 詳細を見る › |
| 公募要領 |
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編集: 補助金図鑑 編集部
中小企業診断士・社会保険労務士 監修体制
本記事は一般的な情報提供を目的としています。補助額・対象要件・募集状況は変更される場合があるため、申請前に必ず各実施機関の公募要領・公式情報をご確認ください。