がんと診断されたら使える制度まとめ|傷病手当金・障害年金・医療費控除2026

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がんと診断された直後は、傷病手当金・高額療養費・医療費控除・障害年金・介護休業給付金など、複数の公的制度を組み合わせて使える可能性があります。この記事は、がんの診断を受けた本人やそのご家族に向けて、個々の制度の記入方法ではなく、がん治療特有の「入退院を繰り返す働き方への対応」「複数制度の併給調整」「後遺症による障害年金」「家族の介護休業」という、単体の制度解説だけでは見えない横断的な注意点を整理したものです。各制度の具体的な書き方は、本文中のリンク先記事で確認できます。

この記事の要点

  1. 傷病手当金は令和4年1月の制度改正で「通算化」され、抗がん剤治療などで入退院を繰り返しても、出勤して給与が出た期間分は1年6か月の受給期間から消費されません
  2. 傷病手当金と障害年金は、同じ傷病であれば両方を満額単純合算できるわけではなく、健康保険法第108条に基づく調整が入ります
  3. 人工肛門・新膀胱造設などがん治療の後遺症で日常生活に大きな制限が出た場合は、障害年金の対象になり得ます(認定基準は疾患・症状ごとに細かく定められています)
  4. 家族ががんになった場合、介護休業給付金(休業前賃金の67%)や年5日の介護休暇を使える場合があります
  5. 退職後に任意継続被保険者になっても、傷病手当金は原則として別枠の継続給付であり、任意継続の資格だけでは対象になりません

まず、がん治療との関わりが深い5制度について、対象の目安と内容を一覧で確認します。それぞれの詳しい記入方法・提出先は表内のリンク先記事にまとめています。

表が画面に収まらない場合は、横にスクロールして確認できます。
制度こんな人が対象内容の目安詳しい書き方
傷病手当金会社の健康保険に加入し、業務外の病気で連続3日間の待期を経て4日目以降も働けない人支給開始日から通算1年6か月、標準報酬日額のおよそ3分の2傷病手当金支給申請書の書き方
高額療養費1か月の医療費の自己負担が高額になった人所得区分ごとの自己負担限度額を超えた分が払い戻し。多数回該当でさらに軽減高額療養費支給申請書の記入例
医療費控除1年間の医療費の自己負担が一定額を超えた人(確定申告)支払った医療費から保険金等・原則10万円を差し引いた額を所得から控除医療費控除の明細書の書き方
障害年金がん(悪性新生物)そのもの、または後遺症で日常生活に大きな制限がある人障害基礎年金・障害厚生年金。認定基準は疾患・症状ごとに個別判断障害年金 申請書と診断書の書き方
介護休業給付金家族ががんで要介護状態になり、休業して介護する人対象家族1人につき通算93日まで3回、休業前賃金のおよそ67%介護休業給付金支給申請書の書き方

傷病手当金は入退院を繰り返すと1年6か月で打ち切られる?

令和4年1月1日の制度改正以降は、入退院を繰り返しても1年6か月の受給期間がそのまま消費されるわけではありません。改正前は暦の上で支給開始日から1年6か月が経過すると打ち切られていましたが、改正後は支給期間中に出勤して給与が支払われた日(傷病手当金が支給されない日)をカウントから除外し、その分を後ろ倒しにして通算で受給できる「通算化」の仕組みに変わりました。対象は令和2年7月2日以降に支給が始まった傷病手当金です。

がん治療では、抗がん剤治療の合間に体調が戻り一時的に出勤する期間と、副作用や手術で再び働けなくなる期間が繰り返されることが少なくありません。この通算化により、出勤して給与が出ていた期間は1年6か月から差し引かれずに残るため、治療が長引いても受給できる残りの期間を必要以上に減らさずに済みます。

図解:傷病手当金は入退院を繰り返すと1年6か月で打ち切られる?

傷病手当金と障害年金は両方満額もらえる?

同じ傷病について傷病手当金と障害年金(障害厚生年金等)を受けられる場合、両方を満額単純合算できるわけではありません。健康保険法第108条に基づき、障害年金の額に応じて傷病手当金の支給が調整されるためです。どちらか一方だけを申請すればよいと決めつけず、両方の受給資格がありそうな場合は、具体的な調整のしかたを協会けんぽ・年金事務所へ確認したうえで申請の順番を検討してください。

確認対象・制度の位置づけ

対象地域(全国)

目的
医療・福祉
対象地域
全国
対象者
がんと診断された本人・その家族

対象年度と制度の状態は一次情報をご確認ください。

解解説

傷病手当金と障害年金は、同じ傷病であれば両方を満額もらえるわけではなく、健康保険法第108条に基づく調整が入ります。計算方法は個々の状況によって変わるので、協会けんぽや年金事務所に確認するのが確実です。

問質問

てっきり両方まるごともらえると思っていました……。申請自体はしても意味がありますか?

意味はあります。障害年金の受給が決まっていない段階では傷病手当金の申請を止める必要はありません。調整が入るのは実際に障害年金の受給が決まった後の話であり、申請そのものを諦める理由にはならないためです。

図解:傷病手当金と障害年金は両方満額もらえる?

がん治療の後遺症でも障害年金の対象になる?

なり得ます。日本年金機構の障害認定基準には「悪性新生物による障害」の節があり、がん(悪性新生物)そのもの、または治療に伴う人工肛門・新膀胱造設などの後遺症により、日常生活に大きな制限が出た場合は障害年金の対象になり得ることが確認できます。ただし、認定基準は疾患・症状ごとに細かく定められているため、実際に対象になるかどうかは年金事務所への相談が前提になります。ここで具体的な認定要領の逐語的な内容までは扱いません。

障害年金には初診日要件(障害基礎年金は初診日が国民年金加入期間等にあること、障害厚生年金は初診日が厚生年金保険の被保険者期間にあること)と、保険料納付要件(加入期間のおおむね3分の2以上の納付済期間等が必要、というのが一般的な要件)もあります。請求に必要な書類は、本人が書く年金請求書のほか、医師が書く診断書・受診状況等証明書、本人または代筆者が発病から現在までの経過を書く病歴・就労状況等申立書の4種類です。

高額療養費と医療費控除はどちらを使えばいい?

どちらか一方を選ぶ制度ではなく、条件を満たせば両方使える別々の制度です。高額療養費は同じ月の医療費の自己負担が高額になったときに限度額を超えた分が払い戻される制度で、直近12か月の間に該当した月が3か月以上ある「多数回該当」に達すると、4か月目以降はさらに自己負担限度額が軽減されます。がんの長期治療では、この多数回該当に達しやすい点を押さえておく価値があります。マイナ保険証を利用すれば、限度額適用認定証を事前に申請しなくても、窓口で限度額を超える分の立替払いが不要になります(本人の同意が前提です)。自己負担限度額の具体的な区分別の金額は、所得区分によって細かく分かれるため、本記事では扱いません。高額療養費支給申請書の記入例で確認してください。

医療費控除は1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えたときに、確定申告で所得から差し引ける制度です。医師・歯科医師による診療費、治療のための医薬品購入費、公共交通機関を使った通院費、入院時の部屋代・食事代は対象になります。予防や健康増進、美容目的の費用、タクシー代(公共交通機関が利用できない場合を除く)、自家用車のガソリン代・駐車料金は対象外です。差額ベッド代は、本人や家族の希望だけで個室を選んだ場合は対象外ですが、医師の指示による治療上の必要がある場合や、感染症などで相部屋が難しい場合、病院の都合で個室しかなかった場合は対象になり得るとされています。セルフメディケーション税制とは選択適用のため、両方を併用することはできません。具体的な記入例は医療費控除の明細書の書き方で解説しています。

図解:高額療養費と医療費控除はどちらを使えばいい?

家族ががんになったとき、介護休業や介護休暇は使える?

使える場合があります。配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫が要介護状態になったとき、介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。休業中は雇用保険から介護休業給付金として、休業開始前賃金のおよそ67%相当が支給されます。介護休業とは別に、対象家族の介護や世話のために年5日(対象家族が2人以上なら10日)取得できる介護休暇もあり、半日単位での取得や、通院の付き添いにも使えます。詳しい支給申請書の記入例は介護休業給付金支給申請書の書き方で確認してください。

治療をしながら働き続けるための支援はある?

厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」では、「治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(平成28年2月策定、令和3年3月改訂)が公開されているほか、主治医・会社(産業医)・両立支援コーディネーターの三者が連携して支援する考え方が紹介されています。両立支援コーディネーターについては、事業主向け・労働者向けそれぞれの解説ページがあります。治療を続けながら仕事も続けたい場合は、まず勤務先の産業医や人事担当者に相談し、両立支援コーディネーターの活用を検討する価値があります。

図解:治療をしながら働き続けるための支援はある?

見落としやすい落とし穴

  • 退職後に健康保険の任意継続被保険者になっても、傷病手当金は原則として対象外です。傷病手当金の資格喪失後の継続給付(退職後も同じ傷病で受給できる仕組み)は、任意継続とは別枠の制度で、退職日の前日までに継続1年以上の被保険者期間があること、退職日前日時点で傷病手当金を受給中または受給できる状態にあること、退職後も同じ傷病で労務不能と医師が診断していることが必要です。
  • 傷病手当金と障害年金は「両方とも申請しないと損」と考えがちですが、実際には調整が入るため、金額を単純に足し算して見込みを立てないでください。
  • 高額療養費の限度額は所得区分によって細かく分かれます。区分を思い込みで判断せず、加入している健康保険の窓口か既存の記入例記事で確認してください。

制度をどこから確認すればよいか迷う場合は、次のチェックで自分に関係しそうな手続きを絞り込めます。

印を付けて確かめられます(印は保存されず、もう一度ページを開くと消えます)

手続きの流れ

  1. 治療のために働けない期間が見込まれる場合は、主治医と勤務先に相談し、傷病手当金の申請を検討する
  2. 医療費が高額になりそうな場合は、限度額適用認定証の準備またはマイナ保険証の利用を検討する
  3. 確定申告の時期に向けて、医療費の領収書・医療費のお知らせを保管しておく
  4. 治療の後遺症で日常生活に大きな制限が出た場合は、年金事務所へ障害年金の相談をする
  5. 家族の介護が必要になりそうな場合は、勤務先へ介護休業・介護休暇の相談をする
がんと診断されたら使える制度まとめの手続きの流れを整理した図解

よくある質問

Q1.傷病手当金は入退院を繰り返すと受給できる期間が減っていきますか?

令和4年1月の制度改正以降は、出勤して給与が支払われた期間分は1年6か月の受給期間から消費されない「通算化」の仕組みになっています。対象は令和2年7月2日以降に支給が始まった傷病手当金です。

Q2.傷病手当金と障害年金は両方満額もらえますか?

両方を満額単純合算できるわけではありません。健康保険法第108条に基づき、障害年金の額に応じて傷病手当金の支給が調整されます。具体的な計算は協会けんぽ・年金事務所に確認してください。

Q3.がんの後遺症でも障害年金の対象になりますか?

対象になり得ます。日本年金機構の障害認定基準には悪性新生物による障害の節があり、人工肛門・新膀胱造設などの後遺症も含まれ得ます。認定基準は疾患・症状ごとに細かく定められているため、年金事務所への相談が前提です。

Q4.退職後も傷病手当金はもらえますか?

条件を満たせば資格喪失後の継続給付として受給できますが、これは任意継続被保険者とは別枠の制度です。任意継続被保険者になっただけでは、傷病手当金は原則として対象外になります。

Q5.家族ががんで介護が必要になった場合、仕事を休んでも収入はありますか?

介護休業を取得すると、雇用保険から介護休業給付金として休業開始前賃金のおよそ67%相当が支給されます。対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。

次にすること

ここで紹介した制度のほかにも、世帯の状況によっては使える給付金・助成金がある可能性があります。補助金・給付金診断を始める

最終更新:2026年9月30日

出典

制度情報の確認

編集・監修: (中小企業診断士)

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公開日: 記事更新日:

本記事は公表資料の確認結果を整理したものです。新制度の決定を示すものではないため、最新の一次情報をご確認ください。