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令和9年度概算要求で補助金はどうなる?「強く豊かな日本」投資枠と拡充見通し【2026年8月】

この記事の結論

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重要ポイント(結論)

令和9年度(2027年度)予算の概算要求基準は2026年(令和8年)7月30日に閣議了解された(前年度は令和7年8月8日で9日前倒し)。土台は令和8年7月21日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針2026」。最大の変更点は通常歳出とは別枠の『「強く豊かな日本」投資枠』の創設で、要求上限(シーリング)を設けず事項要求も含め所要額を要求でき、複数年度の計画に基づくものを基本とする。経済安全保障上特に重要な分野などは複数年度で財源を確保した上で特別会計において別枠で管理することとし予算編成過程で検討。GXは「GX2040ビジョン」、AI・半導体は「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を踏まえ特別会計においても要求。年金・医療等は前年度当初予算額に自然増3,900億円を加算した範囲内で要求(令和8年度は4,000億円)。裁量的経費(その他の経費)は前年度当初と同額の範囲内で要求した上でその額に100分の20を乗じた額の範囲内で要望可。要求期限は8月末日厳守。前文に「補助金・基金の自己点検結果を要求・要望に反映し、予算編成過程において精査」と明記され、増額分野と削減対象の補助金が同時に動く。令和8年度当初予算122.3兆円の内訳は年金・医療等37.0兆円/防衛力整備計画対象経費8.8兆円/裁量的経費14.5兆円/義務的経費9.9兆円/地方交付税交付金等20.9兆円/国債費31.3兆円。概算要求は要求段階であり成立予算ではない点に注意。

詳細解説

補助金・助成金の公募情報は、公募要領が出た時点ではもう遅い、と言われます。公募開始から締切までは1か月前後しかなく、決算書も事業計画も見積も揃っていない状態から動き始めると、要件を満たせないまま締切を迎えるからです。では、いつ動けばよいのか。答えは「概算要求の段階」です。2026年7月30日、政府は令和9年度(2027年度)予算の概算要求基準を閣議了解しました。ここで決まったのは「各省庁が8月末までにいくら・何を要求してよいか」というルールであり、翌年度にどの分野の補助金が新設・拡充されるかの輪郭が、この時点でほぼ見えます。今回の基準の目玉は、通常の歳出とは別枠で要求上限(シーリング)を設けない『「強く豊かな日本」投資枠』が新設されたことです。この記事では、閣議了解の一次文書に基づいて何が決まったかを整理し、どの分野が動きそうか、そして公募が始まる前の今から中小企業・個人事業主が何を準備しておくべきかを、予算カレンダーと合わせてまとめます。

この記事の要点(2026年8月14日時点)

  1. 令和9年度予算の概算要求基準は2026年(令和8年)7月30日に閣議了解。前年より9日早い決定です。
  2. 最大の変更点は『「強く豊かな日本」投資枠』の創設。要求上限を設けず、事項要求も含めて所要額を要求できます。
  3. 裁量的経費(その他の経費)は前年度当初と同額の範囲内+その20%まで要望可。加えて投資枠の活用も可能です。
  4. 各省庁の要求書の提出期限は8月末日(厳守)。8月末〜9月初旬に各省の要求内容が公表されます。
  5. 同時に「補助金・基金の自己点検結果を要求・要望に反映」とも明記。増える分野と削られる補助金が同時に動きます。
上限なし『「強く豊かな日本」投資枠』の要求上限
+20%裁量的経費(14.5兆円)から要望できる幅
8月末日各省庁の概算要求書の提出期限

先に押さえておきたい前提

概算要求は各省庁が財務省に「これだけほしい」と申し出る要求段階であって、成立した予算ではありません。要求された事業が査定で削られることも、金額が変わることも、そもそも採択されないこともあります。この記事では、閣議了解や骨太方針といった公表済みの確定事実と、そこから導かれる編集部の見通しを明確に分けて書いています。見通し部分は「〜と見込まれる」「〜の可能性がある」と表記していますので、確定情報として扱わないでください。

令和9年度の概算要求では何が決まった?

令和9年度予算の概算要求基準は、2026年(令和8年)7月30日に「令和9年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」として閣議了解されました。決まったのは金額ではなく、各省庁が8月末までに何をどこまで要求してよいかというルールで、柱は「通常歳出とは別枠の『「強く豊かな日本」投資枠』の創設」「年金・医療等の自然増3,900億円」「裁量的経費の+20%要望」の3点です(財務省「令和9年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について(閣議了解)」)。

決まった事項内容(閣議了解の記載)根拠資料
『「強く豊かな日本」投資枠』の創設通常歳出とは別に創設。要求上限を設けず、事項要求も含め所要額を適切に要求。複数年度の計画に基づくものを基本とする閣議了解(令和8年7月30日)1.要求・要望
経済安全保障分野の別枠管理経済安全保障上特に重要な分野などは、複数年度で財源を確保した上で特別会計において別枠で管理することとし、予算編成過程において検討同上
GX・AI・半導体それぞれ「GX2040ビジョン」「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を踏まえ、特別会計においても要求同上(参考)
年金・医療等前年度当初予算額に自然増3,900億円を加算した範囲内で要求。予算編成過程で経済・物価動向等を踏まえた増加分を加算同上
裁量的経費(その他の経費)前年度当初予算に相当する額の範囲内で要求した上で、その額に100分の20を乗じた額の範囲内で要望可。加えて投資枠の活用・事項のみの要求も可同上
補助金・基金の点検補助金・基金の自己点検結果を要求・要望に反映し、予算編成過程において精査同上(前文)
要求期限要求・要望に当たっては、8月末日の期限を厳守同上 2.要求期限

この基準の土台になっているのが、9日前の2026年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」(いわゆる骨太の方針)です。骨太方針2026には投資枠の設計思想がより詳しく書かれており、対象は「国内民間設備投資や潜在成長率を大きく引き上げる効果の高い措置」、規模は「財政の持続可能性を実現しながら必要十分な規模を確保する」とされています。あわせて、基金について「予算措置は原則3年以内」とする現行ルールの不適用も含めた抜本的な見直しを行うことも明記されました(内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」第3章)。複数年度で走る補助金が組みやすくなる、という意味です。

読者

「要求上限なし」ということは、いくらでも予算が付くということですか?

中澤圭志(中小企業診断士)

いいえ、逆です。上限がないのは「要求する段階」だけで、閣議了解には投資枠と「通常歳出(その他の経費等)との関係について、予算編成過程において精査」とはっきり書かれています。つまり要求は自由でも、査定はむしろ厳しくなります。同じ文書に「補助金・基金の自己点検結果を要求・要望に反映」ともあるので、要求が膨らむ分野と、点検で削られる補助金が同時に出てくると考えるのが妥当です。

令和8年度の基準と何が変わった?

1年前の令和8年度予算の概算要求基準(令和7年8月8日 閣議了解)と並べると、変化がはっきりします。前年度は「削減要求は求めず、裁量的経費の20%まで要望可」という枠組みで、これは従来の「対前年度10%削減+削減額の3倍まで要望」から変更されたものでした(財務省広報誌ファイナンス「令和8年度概算要求基準の概要」)。令和9年度はこの20%要望を維持したまま、その外側に上限のない投資枠を足した形になります。

項目令和8年度(2026年度)令和9年度(2027年度)根拠資料
閣議了解の日令和7年8月8日令和8年7月30日(9日前倒し)各年度の閣議了解文書
土台となる骨太方針基本方針2025(令和7年6月13日閣議決定)基本方針2026(令和8年7月21日閣議決定)同上 前文
特別枠なし(重要政策は事項要求で対応)『「強く豊かな日本」投資枠』(要求上限なし)令和9年度概算要求基準(概要)
年金・医療等の自然増4,000億円(0.40兆円)3,900億円(0.39兆円)各年度の閣議了解文書
裁量的経費の扱い前年度当初と同額の範囲内+20%要望可同左+投資枠の活用・事項要求も可同上
GX・AI・半導体特別会計において要求特別会計に「おいても」要求(投資枠と両建て)同上(参考)
経済安全保障記載なし複数年度で財源確保し特別会計で別枠管理を予算編成過程で検討令和9年度 閣議了解 1.要求・要望
要求期限8月末日厳守8月末日厳守(変更なし)同上 2.要求期限

編集部が注目しているのは閣議了解が9日前倒しされた点です。令和8年度は8月8日、令和9年度は7月30日で、各省庁が要求書を作る実務時間が9日分増えました。上限のない新しい枠に事業を積み上げる作業が発生することを考えると、この前倒しは投資枠の要求を厚くするための時間確保と読めます。もう一つはGX・AI・半導体の「特別会計においても要求」という表現です。前年度の「特別会計において要求」から一語増えており、特別会計と投資枠の両方から要求できる建て付けになったと解釈できます。いずれも編集部の見立てであり、確定した解釈ではありません。

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公募開始を待つ間に、ホームページ・ECを「補助金が使える状態」にしておく

概算要求から実際の公募開始までは、早くても半年以上あります。この待ち時間に何を進めるかで採否が変わるのが、ホームページやECサイトの整備です。持続化補助金やIT導入補助金では、販路開拓やデジタル化の実施内容としてサイト制作が対象になり得ますが、いずれも交付決定前に発注・着手した経費は対象外という原則があります。つまり「公募が始まってから急いで制作会社を探す」と、要件を満たす見積・仕様書が間に合いません。制作会社の選定と要件定義、概算見積の取得までを先に済ませておき、公募開始と同時に交付申請へ動けるようにしておくのが、待ち時間の正しい使い方です。

向いている事業者

  • 令和9年度の公募で販路開拓・デジタル化の補助金に挑戦したい
  • サイトが数年前のまま、スマホ対応や問い合わせ導線が弱い
  • 補助金の要件を踏まえた見積・仕様の書き方が分からない

向かない事業者

  • すでに交付決定を受け、制作会社との契約も済んでいる
  • サイトを直近1年以内にリニューアルしたばかり
  • 補助金を使わず自社で内製する方針が固まっている

補助金プランに対応した制作会社に、要件を踏まえた構成と概算見積を無料で相談できます。公募要領が出てから動くより、準備期間を丸ごと使えるのが利点です。

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経費の区分ごとに要求のルールはどう違う?

概算要求基準は、予算を6つの区分に分けて別々のルールを当てています。土台になる金額は令和8年度の一般会計当初予算122.3兆円で、区分ごとの内訳と要求ルールは概要資料に一覧化されています。自分に関係する補助金がどの区分に属するかで、来年度に増える余地があるかどうかが変わります。

経費区分令和8年度当初令和9年度の要求ルール根拠資料
年金・医療等37.0兆円前年度当初+自然増3,900億円の範囲内。編成過程で物価対応分を加算令和9年度概算要求基準(概要)
防衛力整備計画対象経費8.8兆円「防衛力整備計画」を踏まえ所要額を要求。三文書改定対応は編成過程で検討同上
裁量的経費(その他の経費)14.5兆円前年度当初と同額の範囲内+その20%まで要望可。投資枠・事項要求も可同上
義務的経費9.9兆円各経費の義務的性格に基づき所要額。人件費は人事院勧告を踏まえ編成過程で対応同上
地方交付税交付金等20.9兆円「基本方針2026」との整合性に留意しつつ要求同上
国債費31.3兆円(要求ルールの対象外)同上

中小企業向けの補助金や、厚生労働省の雇用関係助成金の多くは裁量的経費に入ります。ここは前年度と同額までしか「要求」できず、増やしたい分は20%の「要望」枠か、新設された投資枠を使うことになります。逆に言えば、投資枠の対象になりそうな分野(設備投資・省力化・GX・AI関連)とそうでない分野とで、来年度の伸び幅に差がつきやすいということです。なお雇用関係助成金の一部は雇用保険二事業の財源で運営されており、一般会計の裁量的経費とは資金の出どころが異なります。キャリアアップ助成金 正社員化コース(令和8年度版)のように毎年度の改正で加算が新設される制度は、概算要求とは別に厚生労働省の労働政策審議会の議論も追う必要があります。

どの分野の補助金が新設・拡充される見通し?

各省庁の要求書は8月末まで公表されないため、現時点で「この補助金が増える」と断定できる材料はありません。そこで編集部では、閣議了解と骨太方針2026に明記された方針と、その方針が現に紐づいている既存の補助金・助成金を突き合わせた対応表を作成しました。「方針」列は公表済みの確定事実、「編集部の見立て」列は推測であることを明示しています。

分野公表済みの方針(根拠)関連する既存の補助金・助成金編集部の見立て
省力化・設備投資「各種補助金・助成金や、業種横断的なサポート体制の充実及び活用促進により『省力化投資促進プラン』を着実に実行するとともに、更なる充実・拡充を図る」(骨太方針2026 第2章中小企業省力化投資補助金、ものづくり補助金継続・拡充の方向で要求される可能性が高い。ただし後述のとおり点検対象にも挙がっており、要件の厳格化が同時に来る可能性がある
賃上げ・最低賃金対応「遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成」「交付金等を活用した都道府県・市町村による中小企業の生産性向上支援の取組を十分に後押しする」(骨太方針2026 第2章)業務改善助成金、キャリアアップ助成金最低賃金の引上げが続く限り関連予算は維持〜拡充される見込み。自治体独自の上乗せ支援が増える可能性がある
GX・脱炭素「GX2040ビジョン」を踏まえ特別会計においても要求(令和9年度 閣議了解 参考)省エネ補助金、GX関連の設備導入支援投資枠と特別会計の両建てで要求される見込み。一方で地域脱炭素推進交付金は令和8年度に減額されており、事業ごとの明暗は分かれる
AI・半導体「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を踏まえ特別会計においても要求(同上)半導体・先端技術関連の大型支援大企業・拠点整備が中心。中小企業が直接使える枠は限定的と見込まれる
経済安全保障「経済安全保障上特に重要な分野などについては、複数年度で財源を確保した上で、特別会計において別枠で管理」(令和9年度 閣議了解)重要物資のサプライチェーン強靱化支援新しい枠組みが立ち上がる可能性がある分野。令和8年度予算資料にも「半導体に続き、危機管理投資の新たな枠組みを検討」との記載がある
人材育成・リスキリング「17の戦略分野やエッセンシャル分野を始めとする幅広い人材の育成・確保」(骨太方針2026 第2章)人材開発支援助成金の各コース戦略分野に紐づくコースの拡充が見込まれる。令和8年度も新コースが実際に設けられた
子育て・教育「こども・子育てについては、特別会計への計上分も含め『こども未来戦略』に基づいて要求」(令和9年度 閣議了解 参考)こども誰でも通園制度、各種利用者負担軽減戦略に沿った継続要求。物価上昇に合わせた基準額の引上げが繰り返される可能性がある
防災・国土強靱化17の戦略分野に「防災・国土強靱化」が含まれ、国土強靱化年次計画2026に基づく施策に投資枠を活用(骨太方針2026)防災・減災関連の交付金投資枠の対象として要求される見込み。複数年度計画に基づく事業が優先されやすい

対象者・対象事業

対象地域(全国)

目的
中小企業支援
対象地域
全国
対象者
国の予算編成に関する全国共通の解説記事であり、地域による適用差はない。ただし記事内で扱う個別の補助金・助成金には地域差がある。
補助上限
難易度
中級

詳細条件・対象自治体は公募要領をご確認ください。

骨太方針2026が挙げる17の戦略分野は、AI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティ、情報通信、量子、防衛産業、航空・宇宙、海洋、造船、マテリアル(重要鉱物・部素材)、合成生物学・バイオ、創薬・先端医療、資源・エネルギー安全保障・GX、フュージョンエネルギー、防災・国土強靱化、港湾ロジスティクス、フードテック、コンテンツの17分野です。自社の事業がこのリストのどれかに接続できるかどうかが、投資枠に乗る補助金を狙えるかの目安になります。賃上げ側の動きとあわせて確認したい方は最低賃金1,500円時代の企業対応と使える助成金で、2026年10月改定への対応と使える助成金を整理しています。また、家計側の制度改正としては給付付き税額控除はいつから?対象者・給付額と課題も、令和9年度の予算編成過程で「制度改革により恒久的な歳入増を確保する場合の取扱い」として検討事項に挙がっている論点に関係します。

予算はいつ決まる?令和9年度予算のカレンダー

概算要求から補助金の公募開始までは、おおむね1年かかります。令和8年度の実績(令和7年8月8日 閣議了解 → 令和7年12月26日 政府案決定)を踏まえると、令和9年度の流れは次のように整理できます。公表済みの日付は確定、それ以降は例年の運用に基づく見込みです。

時期何が起きるか事業者側の動き確度
2026年7月21日「経済財政運営と改革の基本方針2026」閣議決定重点分野のキーワードを把握する確定(内閣府
2026年7月30日令和9年度概算要求基準を閣議了解投資枠の対象になりうるか自社事業を照合する確定(財務省
2026年8月末日各省庁が概算要求書を財務省へ提出(期限厳守)要求内容の公表を待つ確定(閣議了解 2.要求期限)
2026年8月末〜9月各省庁が要求内容を公表。財務省サイトにも要求書リンク一覧が掲載される関係省庁の要求資料を読み、狙う制度を絞る見込み(令和8年度の例
2026年秋予算編成過程での査定・精査。補助金・基金の自己点検結果が反映される削減対象の報道に注意する見込み(閣議了解 前文・3.)
2026年内予算編成の基本方針を改定(補正予算と当初予算の区分の考え方を反映)補正で来るか当初で来るかの判断材料にする確定方針(骨太方針2026 第3章)
2026年12月下旬令和9年度予算政府案を閣議決定金額と事業名がほぼ確定。ここで準備を本格化見込み(令和8年度は令和7年12月26日)
2027年1月〜3月通常国会で審議・年度内成立公募要領の公表を待ちつつ書類を揃える見込み
2027年4月以降各補助金の公募要領公表・公募開始交付申請。交付決定前の発注は対象外見込み
  1. 8月末〜9月に各省の要求資料を読む。「新規」「拡充」と書かれた事業名を控えておきます。この時点の事業名は、翌年度の公募要領の名称とほぼ一致します。
  2. 秋の査定情報を追う。要求されても削られる事業があります。特に不用・繰越が多い補助金は減額対象になりやすい傾向があります。
  3. 12月下旬の政府案で確定情報を得る。ここで事業名と予算額が固まります。準備を本格化させるのはこのタイミングです。
  4. 年明けから書類を揃える。決算書、事業計画、見積、gBizIDプライム。公募開始後に着手すると間に合いません。
  5. 公募開始と同時に申請する。予算上限に達し次第終了する制度では、初回締切での申請が最も有利です。

概算要求の段階で今から何を準備する?

公募要領が出ていない今の段階でも、準備できることは決まっています。どの補助金にも共通して求められる書類と体制を先に整えておけば、公募開始から締切までの1か月を「書類集め」ではなく「事業計画を練る」時間に使えます。特にgBizIDプライムは、法人代表者によるオンライン申請なら24時間365日速やかにアカウントが作成される一方、書類申請の審査期間は最大1か月とされています(デジタル庁 GビズID)。マイナンバーカードを使わない申請ルートを選ぶと、それだけで1か月が消えます。下のチェックで、自社がどこまで準備できているかを確認してください。

読者

まだ制度名も金額も決まっていないのに、見積まで取っておく必要がありますか?

中澤圭志(中小企業診断士)

「提出用の見積」ではなく「相場を知るための概算見積」を取っておく、という意味です。多くの補助金は交付決定前に発注・契約した経費を対象外としますから、この段階の見積はそのまま使えません。それでも、いくらかかるのかを知らないままでは補助率や上限額が自社にとって意味のある水準か判断できず、公募が始まってから慌てて相見積を取ることになります。金額感を掴んでおくことと、正式発注は別と切り分けてください。

自社がどの制度に該当しそうか分からない場合は、3分で対象になりそうな制度を診断するから、業種・従業員数・やりたいことを選ぶだけで候補を絞り込めます。既存制度で今すぐ使えるものが見つかることも少なくありません。

期待が外れる典型的な落とし穴

概算要求のニュースを読んで動き出した事業者が、実際にはうまくいかない典型パターンがあります。予算が付かなかったケースだけでなく、予算は付いたのに申請で不採択になるケースも含めて整理します。

よくある5つの落とし穴

  1. 要求額をそのまま予算額だと思い込む。概算要求は要求段階であり、査定で削られます。令和8年度では地域未来交付金が令和7年度当初比▲400億円、地域脱炭素推進交付金が同▲115億円と、実際に減額された交付金があります。
  2. 「新規事業」の報道だけで設備を発注してしまう。ほぼすべての補助金で交付決定前の発注は補助対象外です。先に契約すると、その経費は補助対象から外れ、実質的な差し戻しになります。
  3. 継続すると決めつけて点検・見直しを見落とす。令和9年度の閣議了解には「補助金・基金の自己点検結果を要求・要望に反映」と明記されています。前年度あった補助金が縮小・終了する可能性は常にあります。
  4. 裁量的経費と投資枠の区別をしない。裁量的経費に属する制度は前年度同額+20%が上限の目安で、投資枠に乗る分野のような大幅な伸びは期待しにくい構造です。
  5. 書類を公募開始後に揃え始める。決算書・事業計画・見積・gBizIDが揃わないまま締切を迎え、審査に進めないまま終わります。不採択以前に、申請そのものが間に合わないという失敗が最も多いパターンです。

もう一つ注意したいのが補助金と助成金の性質の違いです。雇用関係助成金は要件を満たせば原則として支給される一方、公募型の補助金は予算の範囲内で採択されるため、要件を満たしていても不採択になります。「予算が増えた=通りやすくなった」とは限らず、応募が増えて競争率が上がることもあります。要件が明確で採択リスクの低い制度から先に押さえるのが堅実で、たとえば業務改善助成金 令和8年度の変更点のように賃上げとセットで設備投資を支援する制度は、公募型の補助金を待つ間の選択肢になります。

令和8年度は要求どおりになった?実現した制度と削られた制度

予測の確度を測るには、前年度に何が起きたかを見るのが確実です。令和8年度予算では一般会計の歳出総額が122兆3,092億円(令和7年度当初比+7兆1,114億円)と過去最大になった一方で、個別の補助金には明確な明暗がありました。

関連する補助金・助成金

制度・事業令和8年度の結果何が効いたか根拠資料
一般会計歳出総額122兆3,092億円(前年度当初比+7兆1,114億円)物価・賃金上昇の反映、社会保障関係費の増財務省「令和8年度予算のポイント」
社会保障関係費39兆0,559億円(+7,621億円)自然増+経済・物価動向等の反映同上(予算フレーム)
地域未来交付金令和7年度当初比 ▲400億円執行状況等を踏まえた補助金見直し同上
地域脱炭素推進交付金同 ▲115億円(一般会計▲100億円+GX財源▲15億円)不用・繰越の発生状況を踏まえた抑制同上
国立公園利用拠点滞在環境等上質化事業令和7年度当初21億円 → ▲7億円。令和8年度以降の新規採択を全て停止大量採択による後年度負担の増大同上
基金の国庫返納3,631億円(ワクチン生産体制等緊急整備基金2,248億円 等)不要な基金残高の精査同上
要保護児童生徒援助費補助金新入学児童生徒学用品費の補助単価を引上げ(小学校2.9万円→3.2万円)物価上昇に合わせた基準額・閾値の見直し同上

読み取れるのは、「総額は増えるが、個別の補助金は点検されて減るものがある」という構図です。しかも令和8年度予算のポイントには、補助金の点検・見直しについて令和9年度予算編成に向けても要求段階から査定段階まで一貫した対応を行う方針が示され、中小企業省力化投資補助事業などが例示されています。骨太方針2026が省力化投資の「更なる充実・拡充」を掲げる一方で、財務省側は同じ事業を点検対象に挙げている——この綱引きの結果が、8月末の要求と12月の政府案で見えることになります。

他方で、要求が通って実際に新設された制度もあります。令和8年度には人材開発支援助成金 中高年齢者実習型訓練(令和8年度新設)が新たに設けられ、45歳以上の受け入れに対する助成が始まりました。キャリアアップ助成金 正社員化コースでも情報公表加算20万円が新設されています。骨太方針や省庁の戦略文書に明記された方向性は、翌年度に制度として形になる確率が高い、というのが実績から言えることです。

あわせて確認したい制度

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概算要求について迷いやすい5つの疑問

概算要求で示された金額は、そのまま補助金の予算になりますか?

なりません。概算要求は各省庁が財務省に対して行う要求であり、その後の予算編成過程で査定を受けます。令和9年度の閣議了解には、投資枠と通常歳出との関係を「予算編成過程において精査」する旨、また「補助金・基金の自己点検結果を要求・要望に反映」する旨が明記されています。実際に令和8年度では地域未来交付金が前年度当初比▲400億円になっています。要求額は上限の目安と考え、確定情報は12月下旬の政府案で確認してください。

各省庁の概算要求の内容は、いつ・どこで見られますか?

提出期限は8月末日で、その前後から各省庁が要求内容を公表します。財務省のサイトにも各府省の概算要求書・要望一覧へのリンク集が年度ごとに用意され、令和8年度分は一般会計・特別会計に分けて公開されています。令和9年度分も同様の形式で公開される見込みです。事業名に「新規」「拡充」と付いた項目を追うと、翌年度の公募要領の名称とほぼ一致します。

『「強く豊かな日本」投資枠』は中小企業も使えますか?

投資枠は経費の区分であり、事業者が直接申請する窓口ではありません。この枠を使って要求された事業が予算化され、その事業の中で補助金として公募される、という流れになります。骨太方針2026は対象を「国内民間設備投資や潜在成長率を大きく引き上げる効果の高い措置」としており、中小企業向けの省力化・設備投資支援が乗る可能性はありますが、現時点で確定した情報はありません。8月末の要求内容で判断してください。

令和8年度と比べて、補助金は増えると考えてよいですか?

分野によります。裁量的経費に属する制度は前年度当初と同額の範囲内での要求+20%の要望が基本ルールで、大幅な伸びは構造的に見込みにくい一方、投資枠の対象となる分野には上限がありません。同時に、補助金・基金の点検が令和9年度予算編成に向けても継続する方針が示されており、縮小・終了する制度も出ます。「全体として増えるが、個別には増減が分かれる」というのが実績から見た現実的な理解です。

個人事業主やフリーランスにも関係しますか?

関係します。持続化補助金のような小規模事業者向けの制度や、雇用関係助成金の一部は個人事業主も対象になり得ます。また、年金・医療等の自然増や、物価上昇に合わせた公的制度の基準額の見直しは家計に直接影響します。令和8年度では要保護児童生徒援助費補助金の補助単価引上げなど、物価を反映した基準額の見直しが実施されました。事業者としてだけでなく、給付・支援制度の利用者としても予算編成の動きは確認する価値があります。

公募開始前の今、何から始める?

概算要求の記事を読む価値は、「まだ誰も申請していない時期に準備を終えられる」ことにあります。公募要領が公表されてから動く事業者と、8月末の要求内容を読んで冬のうちに書類を揃えた事業者とでは、同じ制度に応募しても事業計画の練り込みに使える時間が数か月違います。まずはgBizIDプライムの取得と直近2期分の決算書の整理、そして自社の事業が骨太方針2026の17の戦略分野のどこに接続するかを一文で言えるようにしておくこと。この3つが、来年度どの制度が来ても効く共通の土台です。

今すでに使える制度から確認したい方は、以下の診断で候補を絞り込んでください。制度名が分からなくても、業種と従業員数、やりたいことを選ぶだけで該当しそうな支援が表示されます。

3分で自社が使える補助金・助成金を診断する

財務省の令和9年度予算ページで最新の公表資料を確認する

最終更新:2026年8月14日(令和8年8月14日)/本記事は2026年7月30日の閣議了解時点で公表されている一次資料に基づいています。各省庁の概算要求書が公表され次第、内容を更新します。

出典

補助金の概要

要点

対象・申請情報まとめ

詳細条件は公募要領で確認してください。

対象地域
全国
対象者
国の予算編成に関する全国共通の解説記事であり…
補助上限
公募期間
受付期間は公式情報をご確認ください
公募期間 受付期間は公式情報をご確認ください

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本記事は一般的な情報提供を目的としています。補助額・対象要件・募集状況は変更される場合があるため、申請前に必ず各実施機関の公募要領・公式情報をご確認ください。