募集中 医療・福祉

クリニック事務長が2026年度に押さえる補助金と加算の実務

診療所・クリニック・中小病院の開設者(医療法人・個人開業医)と、その事務長・医療事務担当者

申請締切まで あと 247

この記事の結論

対象者診療所・クリニック・中小病院の開設者(医療法人・個人開業医)と、その…
補助額・給付額最大8,000万円(補助率 制度により異なる。ベースアップ評価料と都道府県の物価高騰支援金は定額(無床診療所は1施設あたり15万〜17万円が目安)、医療分野の業務効率化・職場環境改善支援事業は対象経費の4/5で最大8,000万円、業務改善助成金は3/4〜4/5で30万〜600万円、デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は原則1/2以内で最大450万円。)
申請時期募集中(締切まで247日)
まずやること公式ページで最新情報・対象条件を確認
補助金の概要 対象・上限額・申請期限・関連制度を確認

診療所・クリニック・中小病院の開設者(医療法人・個人開業医)と、その…

対象地域
全国
対象者
診療所・クリニック・中小病院の開設者(医療法人・個人開業…
補助上限
最大8,000万円
補助率・給付条件
制度により異なる。ベースアップ評価料と都道府県の物価高騰支援金は定額(無床診療所は1施設あたり15万〜17万円が目安)、医療分野の業務効率化・職場環境改善支援事業は対象経費の4/5で最大8,000万円、業務改善助成金は3/4〜4/5で30万〜600万円、デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は原則1/2以内で最大450万円。
公募期間
2027年3月31日締切(予定)
実施機関
厚生労働省 保険局・医政局/各都道府県/都道府県労働局
申請方法
オンライン申請
必要書類
保険医療機関指定通知書の写し、法人の印鑑証明書(個人…
  • 最大8,000万円まで補助される制度です
  • 厚生労働省 保険局・医政局/各都道府県/都道府県労働局が公募する公的支援制度
  • 申請方法はオンライン申請に対応
  • 採択率の実績は約100%

詳細解説

診療所やクリニックの補助金は「制度を知っているか」より「いつ、どの窓口に、どの様式を出すか」で結果が決まる。令和8年度は、6月からの新しいベースアップ評価料の算定開始、8月の賃金改善実績報告、7月から8月に集中する都道府県の物価高騰支援金の申請と、事務担当者の手が止められない時期が重なった。しかも提出先は地方厚生局、都道府県、労働局、補助金事務局とバラバラで、ひとつの窓口にまとめて出せば済む話ではない。この記事は、無床診療所から中小病院までの事務長・医療事務担当者が、令和8年度(2026年4月〜2027年3月)に実際に手を動かす順番で全体を整理したものである。制度の解説ではなく、年間カレンダー、書類の準備、そして返還や不採択につながる典型的な落とし穴を、一次情報の実値だけで並べる。

この記事の要点(TL;DR)

令和8年度、クリニック事務担当者の必須5項目

  1. ベースアップ評価料は令和8年5月中の届出で6月算定開始。提出先は地方厚生(支)局都道府県事務所の専用メールアドレスで、Excel様式(医科は様式95〜100)を送る。
  2. 令和8年8月に、令和7年度分の賃金改善実績報告書と令和8年度分の中間報告書を提出する。ここを落とすと算定の継続に影響する。
  3. 物価高騰支援金は都道府県ごとに名称・単価・締切が違う。無床診療所は1施設あたり15万円〜17万円前後が相場で、東京都は光熱費78,000円、埼玉県・千葉県は170千円。
  4. 国の事業者向け補助金は法人格で可否が分かれる。デジタル化・AI導入補助金は医療法人も従業員300人以下なら対象だが、省力化投資補助金は歯科医業を営む医療法人のみ
  5. 返還・不採択の原因は制度の理解不足ではなく事務処理。交付決定前の発注、実績報告の期限徒過、賃金改善の未達が三大要因である。

自院がどの制度に該当するか30秒で当たりを付けたい場合は、条件を入力して対象制度を絞り込む無料診断で医療機関向けの支援を一覧してから、この記事の年間カレンダーに戻ると効率がよい。

令和8年度の年間カレンダー:いつ・何を・どこに出すか

事務担当者にとって最も価値があるのは制度名の一覧ではなく、締切の並びである。令和8年度に診療所・クリニックが関わる主な手続きを、時期順に並べた。都道府県が実施する事業の日程は自治体によって前後するため、下表の「時期」は国と主要都県の実例に基づく目安として使う。

時期やること提出先
令和8年4月新年度の賃金改善計画の骨子作成、就業規則・賃金規程の改定準備、常勤換算の職員数の確定院内(社会保険労務士と調整)
令和8年4〜5月都道府県の賃上げ・物価上昇支援事業の交付申請(埼玉県は4月20日〜5月31日で受付終了)都道府県の医療政策担当課
令和8年5月ベースアップ評価料の届出(6月算定開始のための必須手続き)地方厚生(支)局 都道府県事務所
令和8年5〜7月病院は医療分野の業務効率化・職場環境改善支援事業へ業務効率化計画書を提出都道府県経由で厚生労働省
令和8年6月新ベースアップ評価料の算定開始、給与明細・賃金台帳への賃金改善額の反映院内(レセプト・給与計算)
令和8年7月物価高騰緊急対策支援金のWEB事前申込(東京都は7月1日〜7月22日)都道府県の支援金事務局
令和8年7月省力化投資補助金(一般型)第7回の応募申請(7月1日10時受付開始)中小企業省力化投資補助金事務局
令和8年7〜8月物価高騰支援金の交付申請兼実績報告(東京都は7月23日〜8月14日)都道府県の支援金事務局
令和8年8月賃金改善実績報告書(令和7年度分)と中間報告書(令和8年度分)の提出地方厚生(支)局 都道府県事務所
令和8年8月25日デジタル化・AI導入補助金2026の交付申請締切(17時)デジタル化・AI導入補助金事務局
令和8年9月1日業務改善助成金の交付申請受付開始都道府県労働局
令和8年10月〜令和9年3月採択後の発注・検収・支払、実績報告、賃金改善の進捗確認と年度末の着地見込み修正各補助金事務局
令和9年8月令和8年度の賃金改善実績報告書と令和9年度の中間報告書地方厚生(支)局 都道府県事務所

カレンダーで最初に赤字にすべき2つの日

ひとつは令和8年5月のベースアップ評価料の届出、もうひとつは令和8年8月の賃金改善実績報告である。前者は6月からの算定可否を、後者は翌年度以降の算定継続と返還の有無を左右する。都道府県の支援金は申請しなければ受け取れないだけだが、この2つはすでに受け取った収入を返す可能性がある点で性質が違う。

2026年度に押さえる支援の全体像と金額

医療機関向けの公的支援とは、診療報酬の枠内で支払われる加算(ベースアップ評価料など)と、予算事業として交付される給付金・補助金(物価高騰支援金、雇用関係助成金など)の総称である。前者はレセプト請求で毎月入り、後者は申請した年度に一括で入る。事務処理の性質がまったく違うため、担当者を分けるか、少なくとも管理台帳を分けたほうがよい。

170,000円無床診療所の物価上昇支援(埼玉県・千葉県の単価)
最大80万円キャリアアップ助成金 正社員化コース(中小企業・重点支援対象者)
最大450万円デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠

国が実施する「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業」は4本立てで、病院向けの2本は国へ直接申請し、診療所・薬局・訪問看護ステーション向けの2本は都道府県へ申請する。この申請先の違いを取り違えると、締切に間に合わない。

事業名対象と単価申請先
病院賃上げ支援事業令和8年2月1日時点でベースアップ評価料を届け出ている病院/使用許可病床数(令和7年8月1日時点)×84,000円国(厚生労働省の委託事務局)
病院物価支援事業原則すべての病院/基礎額(病床数×111,000円)+加算額(500万円〜2億円)国(厚生労働省の委託事務局)
診療所等賃上げ支援事業有床診療所・無床診療所・薬局・訪問看護ステーション/施設種別により150,000円〜228,000円都道府県
診療所等物価支援事業原則すべての医療機関等/施設種別により50,000円〜170,000円都道府県

賃上げ支援事業は令和7年12月分から令和8年3月分までの最大4か月分が対象で、6か月分の給付金を活用して6か月間の賃金改善を行うのが基本の考え方とされている。給付金を受け取ったあとに賃金改善の実績を報告する構造なので、受給額と実際の賃上げ額の突合表を最初に作っておくと、後の実績報告が一気に楽になる。

ベースアップ評価料:事務担当者の段取りに絞って解説

ベースアップ評価料そのものの点数や区分の選び方は、医療機関ベースアップ評価料の届出方法を令和8年6月改定に沿って解説した記事で詳しく扱っている。ここでは事務担当者が実際に踏む手順だけを並べる。

  1. 対象職員の範囲を確定する。医師・歯科医師を除く、看護職員、医療技術者、事務職員などのうち、自院の賃金改善の対象にする職種と人数を常勤換算で確定する。
  2. 賃金改善計画書を作成する。ベースアップ評価料による収入の見込みと、それを原資とする賃金改善額(基本給または決まって毎月支払われる手当)を一致させる。
  3. 就業規則・賃金規程を改定する。ベースアップ評価料を原資とする手当を新設する場合は、規程に定めがないと支給根拠を問われる。
  4. 令和8年5月中に届出を行う。医科の医療機関は様式95〜100、歯科技工所は様式101〜102、保険薬局は様式103〜104、訪問看護ステーションは訪問看護ベースアップ評価料届出様式を使う。
  5. 提出は所在地を管轄する地方厚生(支)局都道府県事務所ごとに設定された専用メールアドレスへExcelファイルを送る。やむを得ない場合のみ書面提出が認められる。
  6. 令和8年6月から算定を開始し、給与明細と賃金台帳に賃金改善分が判別できる形で反映する。
  7. 令和8年8月に、令和7年度分の賃金改善実績報告書と令和8年度分の中間報告書を提出する。翌年の令和9年8月には令和8年度の実績報告書と令和9年度の中間報告書を出す。

実績報告書は「1年度につき1通にまとめる」

年度の途中で区分変更を行った場合や、賃金改善計画書を修正した場合であっても、届出を行った年度における賃金改善実施期間の全体について、1つの報告書にまとめて報告する必要がある。区分変更のたびに別々の報告書を作ってしまうと差し戻しになる。変更の履歴を1枚のシートで管理しておくと、8月の作業が半日で終わる。

読者

当院は5月に届出を出しました。8月の実績報告まで、間の3か月は何もしなくていいのでしょうか。

専門家

むしろ、この3か月が勝負です。実績報告の中身は「計画した賃金改善額を実際に支払ったか」の一点なので、毎月の給与計算のたびに計画額と実支給額の差を積み上げてください。年度末にまとめて確認すると、不足が判明しても取り返せません。賞与での調整が必要になる場合もあるため、遅くとも12月の賞与算定までに着地見込みを出しておくのが安全です。

都道府県の物価高騰支援金:探し方と共通する必要書類

診療所等物価支援事業は都道府県が実施するため、名称も単価も締切もバラバラである。「令和8年度 ○○県 医療機関 物価高騰 支援金」で検索し、県の医療政策担当課または保健医療部のページを直接見るのが最短ルートになる。民間のまとめサイトは公式ページを見つける入口としては使えるが、単価と締切は必ず自治体の公式ページで確認する。実際の3県を比較すると、単価の考え方の違いがよく分かる。

自治体・事業名無床診療所の単価と有床の計算式申請時期(令和8年度)
東京都/医療機関等物価高騰緊急対策支援金無床診療所・歯科診療所は光熱費78,000円/施設。病院・有床診療所は78,000円+14,000円×許可病床数に、食材費78円×延べ入院患者数(1〜5月分)を加算。施術所・歯科技工所は39,000円WEB事前申込は7月1日〜7月22日、交付申請は7月23日〜8月14日
埼玉県/医療提供施設等処遇改善・物価上昇支援事業給付金物価上昇支援は無床診療所170千円、有床診療所は許可病床数×13千円(13床以下は170千円)。処遇改善支援は無床診療所150千円、有床診療所は許可病床数×72千円(2床以下は150千円)申請は4月20日9時〜5月31日23時59分で受付終了。実績報告は7月1日〜8月1日
千葉県/医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援物価支援は無床診療所170千円、有床診療所は病床数×13千円(13床以下は170千円)。賃上げ支援は無床診療所150千円、訪問看護ステーション228千円5月15日〜7月15日で申請受付終了

都道府県をまたいで共通する必要書類

単価と締切は違っても、求められる書類はほぼ共通している。法人は法人の印鑑証明書、個人事業主は印鑑登録証明書支援金の受取口座が確認できる通帳の写しまたはキャッシュカードの写し保険医療機関コードが分かる書類、有床の場合は許可病床数と延べ入院患者数の報告。印鑑証明書は発行から3か月以内などの期限が付くことが多いため、申請の直前に取得する。

対象者・対象事業

対象地域(全国)

目的
医療・福祉
対象地域
全国
対象者
診療所・クリニック・中小病院の開設者(医療法人・個人開業医)と、その事務長・医療事務担当者
補助上限
最大8,000万円
難易度
3

詳細条件・対象自治体は公募要領をご確認ください。

他県の実例を見ておくと、自県の要領を読む速度が上がる。たとえば福井県の医療機関向け賃上げ・物価高騰対策支援の要件と単価や、鳥取県の医療機関の賃上げ・物価上昇支援事業の申請条件は、診療所単位の定額給付という設計が分かりやすい。申請書の書き方でつまずいたときは、福岡県の医療機関等物価高騰支援金の申請書記入例を1項目ずつ解説した記事が、そのまま他県の様式にも応用できる。

東京都の事前申込を落とすと交付申請ができない

東京都の令和8年度支援金は、交付申請兼実績報告に先立ってWEB事前申込(7月1日〜7月22日)が必須である。事前申込をしていない施設は7月23日からの交付申請に進めない。二段構えの自治体は他にもあるため、要領の最初のページで「事前申込の有無」を確認する習慣をつける。

併用できる制度・関連する支援

ベースアップ評価料と物価高騰支援金だけでは、令和8年度の打ち手としては足りない。設備投資、DX、人材確保の3方向にそれぞれ使える制度があり、財源も所管も違うため併用できる。自院の規模と法人格に合うものを選ぶ。

医療機関ベースアップ評価料の届出方法【令和8年6月改定】区分の選び方と様式95〜100の記入手順/令和8年5月届出・6月算定開始/受付中
医療機関の業務効率化計画の作り方補助率4/5・最大8,000万円の業務効率化・職場環境改善支援事業に必要な計画書/病院向け
デジタル化・AI導入補助金2026電子カルテ・レセコン・予約システムが対象/通常枠は補助率1/2以内・最大450万円/医療法人も対象
DX・IT導入補助金まとめ2026国と自治体のIT系補助金を横断比較/自院に合う枠を選ぶための早見表つき
中小企業省力化投資補助金(一般型)補助上限750万円〜8,000万円・補助率1/2〜2/3/医療法人は歯科医業を営む法人のみ対象
両立支援等助成金【有給介護休暇制度支援区分】有給の介護休暇制度の導入で30万円、10日以上付与なら50万円/1事業主1回限り

介護部門を併設している法人は、介護職員等処遇改善加算の臨時改定に対応するための手順もあわせて確認しておく。医療と介護で賃金改善の原資が二重計上にならないよう、職員ごとの按分表を先に作ることが実務上の要点になる。

国の事業者向け補助金:クリニックが使えるもの・使えないもの

ここが最も誤解が多い。医療機関は「中小企業」に当たるのかという問いに、制度ごとに違う答えが用意されている。判定を分けているのは業種ではなく法人格である。

使える(対象になる)

  • デジタル化・AI導入補助金2026:医療法人・社会福祉法人は従業員300人以下で対象。資本金要件はない。個人開業医(個人事業主)も対象
  • 業務改善助成金:中小企業事業主の範囲はサービス業で資本金5,000万円以下または常時雇用労働者100人以下。無床診療所は通常この範囲に収まる
  • キャリアアップ助成金・両立支援等助成金:雇用保険適用事業所であれば法人格を問わず対象
  • 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース):対象業種に医業に従事する医師が明記されている

使えない(対象外になる)

  • 中小企業省力化投資補助金(一般型):医療法人は原則対象外。歯科医業を営む医療法人のみが第7回公募から追加された
  • デジタル化・AI導入補助金の複数者連携デジタル化・AI導入枠:商工団体等が対象で、医療機関は対象外
  • 医療分野の業務効率化・職場環境改善支援事業:病院のみが対象。無床診療所・訪問看護ステーションは都道府県の生産性向上・職場環境整備等支援事業へ回る
  • 利用者に有償で提供する設備・システムの開発費:省力化投資補助金の補助対象外経費に明記
制度名医療法人/個人開業医の可否金額と補助率(令和8年度)
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)医療法人は従業員300人以下で対象。個人開業医も対象。複数者連携枠のみ対象外通常枠は補助率原則1/2以内(賃上げ等の要件を満たせば2/3以内)、業務プロセス4つ以上で最大450万円
中小企業省力化投資補助金(一般型)第7回歯科医業を営む医療法人のみ対象(医療法第44条の認可、従業員300人以下)。医科の医療法人は対象外補助上限は従業員5人以下750万円〜101人以上8,000万円(特例適用で最大1億円)、補助率は中小企業1/2、小規模事業者2/3
業務改善助成金サービス業の中小企業事業主として対象。令和8年度の交付申請受付開始は令和8年9月1日設備投資等の経費の3/4〜4/5、上限は引き上げる賃金額と労働者数に応じて30万円〜600万円
医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業令和8年4月1日時点でベースアップ評価料を届け出ている病院のみ。無床診療所は対象外補助対象経費の4/5、最大8,000万円。都道府県ごとに所要見込額の上限があり、申請すれば必ず採択されるわけではない
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)医業に従事する医師を抱える医療機関が対象業種に含まれる助成率3/4(事業規模30名以下かつ設備・機器等の経費が30万円超なら4/5)。上限額は業種により異なるため労働局に確認

保険診療をしていることは「重複」に当たらない

省力化投資補助金は国の他の助成制度との重複を禁じているが、公募要領では公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬は重複の対象から除かれると明記されている。つまり保険診療を行っていること自体は申請の妨げにならない。重複が問題になるのは、同じ経費を別の国庫補助金でも計上している場合である。制度の全体像はDX・IT系補助金の横断まとめで確認できる。

申請でよくある不採択・落とし穴

診療所の補助金申請で差し戻しや返還が起きる原因は、制度の理解不足ではなく事務処理の順番にある。実際に多いパターンを、発生時期の順に並べる。ここに挙げた注意点をチェックリスト化しておけば、不採択の大半は事前に防げる。

1. 交付決定前の発注(最も多い失敗)

補助金は交付決定日以降に発注・契約したものだけが対象になる。「採択されたから」と発表直後に電子カルテを発注すると、交付決定前の発注として全額が対象外になる。採択発表と交付決定は別の日である。省力化投資補助金の第7回は採択発表が令和8年11月中旬の予定で、事業実施期間は交付決定日から18か月以内と定められている。

2. 賃金改善が計画額に届かず返還

ベースアップ評価料は、受け取った収入の全額を職員の賃金改善に充てることが前提である。年度末に実績が計画を下回ると、不足分の返還や翌年度の調整が生じる。人員の退職や産休で対象者数が減ると、収入は変わらないのに賃金改善総額が減るという構造的な落とし穴があるため、四半期ごとに着地見込みを更新する。

3. 実績報告の期限徒過

令和8年8月の賃金改善実績報告、都道府県の給付金の実績報告(埼玉県は7月1日〜8月1日)は、いずれも期間が1か月前後と短い。担当者の夏季休暇と重なりやすく、毎年ここで事故が起きる。年度当初にカレンダーへ登録し、代理で提出できる職員を1名決めておく。

4. 見積の相見積不足と対象外経費の混入

一定額以上の調達は複数社からの見積が必要になる制度が多い。また、汎用設備やパッケージソフトを単体で導入する事業は省力化投資補助金の対象外であり、複数を組み合わせて省力化効果を生む場合のみ対象になる。医療機器そのものではなく、業務プロセスをどう変えるかを書かないと不採択になりやすい。

関連する補助金・助成金

5. 常勤換算と従業員数の数え違い

補助上限額も補助率も従業員数で決まる。省力化投資補助金では役員(個人事業主の場合は事業主と専従者)を含めた労働者数で判定する一方、小規模事業者かどうかは常勤従業員数で判定する。パート職員の扱いを誤ると、補助率が2/3から1/2に変更されることがある。ベースアップ評価料の常勤換算とも定義が違うため、制度ごとに数え直す。

6. キャリアアップ計画の事前提出漏れ

キャリアアップ助成金は、各コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画を労働局へ提出していなければ、どれだけ要件を満たしても不支給になる。正社員転換してから気付いても取り返せない、典型的な差し戻し事例である。あわせて、転換前6か月と比較して3%以上の賃金増額が必要な点も見落とされやすい。

読者

院長から「今期中に電子カルテを入れ替えたい」と言われています。補助金を待つと間に合わないのですが、先に発注して後から申請することはできませんか。

専門家

できません。交付決定前の発注は対象外になり、補助金を諦めるか、導入を遅らせるかの二択です。現実的な解は、契約日を交付決定後に設定した見積書をベンダーから取り、導入スケジュールだけ先に押さえる方法です。デジタル化・AI導入補助金2026は締切が1〜2か月おきに設定されており、令和8年7月27日時点で公表されている直近の締切は8月25日17時、交付決定は10月7日の予定です。逆算すれば年度内の導入は十分に間に合います。

人を雇うとき・働き方を変えるときに使える助成金

クリニックの人材確保は、募集広告費より制度設計に投資したほうが結果が出る。令和8年度の雇用関係助成金は、医療機関でもそのまま使えるものが多い。両立支援等助成金の中小企業事業主(特定事業主)の範囲は、サービス業で資本金5,000万円以下または常時雇用労働者300人以下であり、ほぼすべての診療所が該当する。

助成金・コース令和8年度の支給額(中小企業)クリニックでの使いどころ
キャリアアップ助成金(正社員化コース)有期雇用から正規へ転換:重点支援対象者80万円(40万円×2期)、それ以外40万円。無期から正規は40万円/20万円。1年度1事業所あたり20名までパート医療事務・看護補助者の常勤化。正社員転換制度を新たに規定すると20万円、多様な正社員制度なら40万円を加算
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)介護休業40万円(連続15日以上で60万円)、介護両立支援制度20万円〜25万円、業務代替支援の新規雇用20万円、有給の介護休暇制度導入30万円(10日以上付与で50万円)40代〜50代のベテラン看護師・医療事務の介護離職防止。①〜③は1事業主5人まで、有給化支援は1回限り
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)育休取得時30万円、職場復帰時30万円。1事業主あたり無期1人・有期1人の計2人まで産休・育休が重なりやすい診療所の代替体制づくり。育休復帰支援プランの策定が要件
両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)不妊治療、月経に起因する症状、更年期の不調のそれぞれに支援制度を導入し利用者が生じた場合、各30万円(各1回限り)女性職員比率が高い診療所と親和性が高い。就業規則への制度追加で申請できる
業務改善助成金設備投資等の経費の3/4〜4/5、上限30万円〜600万円。令和8年9月1日から交付申請受付事業場内最低賃金の引上げとセットで、受付システムや自動精算機を導入する場合

介護休暇の有給化は、就業規則の1条追加で30万円から50万円が動く費用対効果の高い施策である。制度設計の具体例は両立支援等助成金の有給介護休暇制度支援区分の要件解説を参照するとよい。職員の処遇改善を体系立てて進めたい場合は、介護職員等処遇改善加算の臨時改定ガイドの考え方が医療部門にも応用できる。制度の探し方を広げたいときは補助金・助成金の制度一覧医療機関の経営に関するコラムも使える。

必要書類チェックリスト

制度ごとに様式は違うが、事前に揃えておく基礎資料はほぼ共通している。以下を年度当初にフォルダ1つにまとめておくと、どの申請でも初動が半日短縮できる。

GビズIDプライムは取得に時間がかかる

省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金の電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必須で、取得には一定の期間を要する。締切の直前に慌てて申請しても間に合わない。年度当初に取得だけ済ませておくのが、事務長として最も費用対効果の高い準備である。

よくある質問

個人開業(医療法人化していない)でも国の補助金は使えますか。

デジタル化・AI導入補助金2026は個人事業主も対象で、医療法人と同様に申請できます。業務改善助成金も個人事業主が対象です。一方、省力化投資補助金は法人格の判定が細かく、医療法人については歯科医業を営む法人のみが対象とされています。個人開業の場合は業種区分での判定になるため、申請前に事務局へ確認してください。

物価高騰支援金は課税対象になりますか。

給付金は原則として事業収入(雑収入)として計上し、法人税・所得税の課税対象になります。消費税は不課税取引です。ただし自治体によって経理処理の指示が異なる場合があるため、交付要綱の経理処理欄を必ず確認し、税理士と共有してください。

ベースアップ評価料と都道府県の賃上げ支援金は併給できますか。

併給できますが、同じ賃金改善額を両方の原資として二重に計上することはできません。職員ごとに「ベースアップ評価料由来」「支援金由来」を按分した一覧表を作り、実績報告のたびにその表を根拠として使う運用が確実です。

自県の物価高騰支援金の受付がすでに終わっていました。次の機会はありますか。

令和8年度分については、埼玉県は5月31日、千葉県は7月15日で受付を終了しています。多くの自治体は国の交付金を財源としており、補正予算の状況によって追加募集が行われる場合があります。県の医療政策担当課のページを月1回確認するか、更新通知を受け取れる形で登録しておくのが現実的です。

事務長が1人で全部やるのは無理です。優先順位はどう付ければよいですか。

金額ではなく「落としたときの損失」で並べます。第1優先はベースアップ評価料の届出と実績報告(返還リスクがある)、第2優先は都道府県の物価高騰支援金(申請しなければ確実に0円)、第3優先が設備投資系の補助金(今年でなくてもよい)です。第3優先は社会保険労務士や認定経営革新等支援機関に外注する判断が合理的です。

事務長が今週から着手すべきこと

読み終えたその日にできる作業から並べる。ここまでの内容を、月曜の朝に手を付ける順に落とし込んだものである。

  1. 令和8年8月の賃金改善実績報告の提出期限を、院内カレンダーと自分の携帯の両方に登録する。代理提出者を1名決める。
  2. 自県の医療政策担当課のページで「令和8年度 医療機関 物価高騰」を検索し、受付中か終了かを確認する。受付中なら必要書類の取得に着手する。
  3. GビズIDプライムを未取得なら、今日申請する。国の補助金はこれがないと入口に立てない。
  4. 職員名簿を開き、有期雇用で勤続3年以上の職員を洗い出す。キャリアアップ助成金の重点支援対象者に該当すれば、1人あたり80万円が動く。
  5. 今年度に検討している設備投資を一覧化し、発注予定日を交付決定日以降に置けるかを確認する。

自院に該当する制度を先に絞り込む

制度は多いが、自院の法人格・職員数・診療科で該当するものは通常5つ前後に絞られる。手当たり次第に要領を読むより、条件を入力して候補を出してから読み込むほうが早い。

3分で自院の対象制度を診断する

制度改正は年度途中でも起きる。業務効率化計画の作り方省力化投資補助金の最新公募情報は、公募回ごとに要件が変わるため、申請の直前に必ず最新版を確認してほしい。

出典

最終更新:2026年7月27日/監修:補助金図鑑 編集部

補助金の概要

要点

対象・申請情報まとめ

詳細条件は公募要領で確認してください。

対象地域
全国
対象者
診療所・クリニック・中小病院の開設者(医療法…
補助上限
最大8,000万円
公募期間
2027年3月31日締切(予定) 締切まで 247日
実施機関
厚生労働省 保険局・医政局/各都道府県/都道府県労働局
主要スケジュール
締切日 2027年3月31日 全スケジュール ›
申請方法
オンライン申請 公式申請ページへ
必要書類
保険医療機関指定通知書の写し、法人の… 詳細を見る ›
  • 最大8,000万円まで補助される制度です
  • 厚生労働省 保険局・医政局/各都道府県/都道府県労働局が公募する公的支援制度
  • 申請方法はオンライン申請に対応
  • 採択率の実績は約100%
POINT!

この補助金のポイント

  • 最大8,000万円まで補助される制度です
  • 厚生労働省 保険局・医政局/各都道府県/都道府県労働局が公募する公的支援制度
  • 申請方法はオンライン申請に対応
  • 採択率の実績は約100%
補助対象経費 職員の基本給および決まって毎月支払われる手当の引上げ(ベースアップ評価料・賃上げ支援事業)、光熱費・… 詳細を見る ›
公募期間 2027年3月31日締切(予定) 締切まで 247日
実施機関厚生労働省 保険局・医政局/各都道府県/都道府県労働局
採択率100% ※過去公募実績
主要スケジュール
  1. 締切日2027年3月31日
全スケジュール ›
申請方法 オンライン申請 公式申請ページへ
必要書類 保険医療機関指定通知書の写し、法人の印鑑証明書(個人事業主は印鑑登録証明書)、振… 詳細を見る ›
公募要領
SUMMARY

この補助金のまとめ

  • 最大8,000万円まで補助される制度です
  • 厚生労働省 保険局・医政局/各都道府県/都道府県労働局が公募する公的支援制度
  • 申請方法はオンライン申請に対応
  • 採択率の実績は約100%
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中小企業診断士・社会保険労務士 監修体制

公開日: 最終更新日: 出典: 厚生労働省 保険局・医政局/各都道府県/都道府県労働局

本記事は一般的な情報提供を目的としています。補助額・対象要件・募集状況は変更される場合があるため、申請前に必ず各実施機関の公募要領・公式情報をご確認ください。