移動支援事業は、障害者総合支援法に基づき全国の市区町村が実施する「地域生活支援事業」の中核サービスで、ひとりでの外出が難しい障がいのある方にガイドヘルパーが付き添い、買い物・通院・余暇活動などの社会参加を支えます。一度きりの公募ではなく随時申請を受け付けている恒久的な福祉サービスで、利用料は原則1割負担・世帯の課税状況に応じた負担上限月額が設定されます。本記事は令和8年度(2026年度)時点の最新情報に基づき、対象者・利用料金・申請の流れ・必要書類・つまずきやすい注意点までを、自治体の具体例とともに徹底解説します。
結論(最初に押さえる3つの要点)
- 誰の制度か:ひとりでの外出が困難な身体・知的・精神・難病等の障がい者(児)。対象要件は市区町村ごとに異なる。
- いくらかかるか:原則費用の1割負担。負担上限月額は生活保護・非課税世帯は0円、課税世帯は自治体により3,000円前後が目安(例:大阪市)。
- いつ申請できるか:公募締切はなく随時受付(application_status: open)。市区町村の障害福祉担当窓口へ支給申請する。
移動支援事業とは?障がいのある方の社会参加を支える地域生活支援事業
制度の目的と根拠法
移動支援事業は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」に基づき、市区町村が主体となって実施する「地域生活支援事業」の一つです。屋外での移動に困難がある障がい者(児)にガイドヘルパーを派遣し、地域での自立した生活と積極的な社会参加を促進することを目的としています。役所での手続きや買い物といった社会生活上必要不可欠な外出から、映画鑑賞・イベント参加などの余暇活動まで、ヘルパーが移動中の安全確保・コミュニケーション支援・排泄や食事等の介助を一体的に行います。
地域生活支援事業は国・都道府県・市町村が費用を分担する事業で、国の補助率は市町村実施分で100分の50の範囲内とされています(厚生労働省)。財源の裏付けがある恒久事業のため、年度ごとに「終了」するものではなく毎年度継続して提供されます。
同行援護・行動援護との違い
外出を支援するサービスには移動支援のほかに「同行援護」「行動援護」があり、これらは国の制度(介護給付)で移動支援(市区町村の地域生活支援事業)とは対象者や支援内容が異なります。混同されやすいため違いを整理します。
| 項目 | 移動支援 | 同行援護 | 行動援護 |
|---|---|---|---|
| 主な対象者 | 身体・知的・精神障がい者、難病等(自治体が定める) | 視覚障がい者 | 知的・精神障がい者で行動上の著しい困難がある方 |
| 主な支援内容 | 社会参加・余暇のための外出支援全般 | 移動時の情報提供(代読・代筆)・安全確保 | 自傷・他害等を予防回避するための援護 |
| 根拠・実施主体 | 地域生活支援事業(市町村) | 介護給付(国) | 介護給付(国) |
| 利用者負担 | 原則1割・負担上限月額あり | 原則1割・負担上限月額あり | 原則1割・負担上限月額あり |
ポイント:原則として同行援護・行動援護の支給決定を受けている方は移動支援の対象外です。どのサービスが適切かは市区町村の窓口や相談支援専門員とよく相談しましょう。
あなたは対象?移動支援の対象判定チェック
対象になるかは「障がい種別」「手帳の等級」「ひとりでの外出が困難か」で判断されます。以下の簡易チェッカーで目安を確認してください(最終判定は市区町村が行います)。
【自治体別】対象者要件の比較
移動支援の対象者は国の大枠を基に各市区町村が独自に定めます。お住まいの自治体で要件が異なる点に注意してください。
| 自治体 | 身体障がい | 知的・精神障がい |
|---|---|---|
| 大阪市 | 施設入所する全身性障がい者、重度の全身性障がい者、重度の盲ろう者 | 知的障がい者・精神障がい者で単独外出が困難な方 |
| 福岡市 | 3肢以上に障がいがあり上肢下肢いずれも手帳1・2級等 | 療育手帳A、または療育手帳Bで単独外出困難/支援区分1以上で単独外出困難 |
| 金沢市 | 重度の視覚障害(1・2級程度)または全身性障害 | 療育手帳・精神保健福祉手帳を持ち1人での外出が困難な方 |
| 杉並区 | 屋外移動に困難がある視覚・肢体不自由・知的・精神・高次脳機能障害・難病で学齢児以上の区民 | |
このように手帳の等級や「単独での外出が困難」といった状態像が要件に含まれます。対象になるか不明な場合は必ずお住まいの市区町村の障害福祉担当課へ確認しましょう。
利用料金と利用者負担の仕組み(負担額シミュレーター)
原則1割負担と負担上限月額
移動支援を利用した際の料金は、サービス費用の原則1割が利用者負担です。さらに世帯の課税状況に応じて負担上限月額が設定され、上限を超えた分は支払う必要がありません。例として大阪市では、社会生活上必要な外出の利用者負担は30分95円・1時間190円(令和3年3月〜)、負担上限月額は生活保護・非課税世帯0円/課税世帯3,000円です。金額は自治体により異なります。
下のシミュレーターで、1時間あたりの単価と月の利用時間から概算の自己負担額(上限適用後)を試算できます。
生活保護世帯・非課税世帯は上限月額0円のため自己負担なしとなるケースが一般的です。試算結果が高い場合は、まず負担上限月額の設定申請(後述の必要書類)を忘れず行いましょう。
利用できる外出・できない外出
移動支援は「社会生活上必要不可欠な外出」と「余暇活動等社会参加のための外出」が対象です。一方で次のような外出は原則対象外です(大阪市の例)。
| 区分 | 利用できる外出の例 | 原則対象外の外出 |
|---|---|---|
| 手続き・生活 | 役所での手続き、買い物、金融機関 | 通勤・営業活動など経済的活動 |
| 医療・社会 | 通院(一部)、選挙、地域行事への参加 | 通年かつ長期の外出 |
| 余暇 | 映画・コンサート・イベント、散歩、外食 | ギャンブル等、社会通念上不適切な外出 |
| 学び | 習い事、生涯学習(自治体により可) | 通学(自治体・対象により可否が分かれる) |
通学・通勤の取り扱いは自治体差が大きいため、必要な場合は事前に窓口へ確認してください。
申請からサービス利用開始までの流れ(申請チェックリスト)
移動支援は公募締切のない随時申請です。次の手順で進めます。
- 窓口相談:市区町村の障害福祉担当課(区がある場合は保健福祉センター等)で要件を確認。
- 支給申請:移動支援費支給申請書・負担上限月額設定申請書を提出。
- 調査・審査:障がいの状況や外出の必要性を確認のうえ支給量(時間数)を決定。
- 受給者証の交付:支給決定後に「地域生活支援事業受給者証」が交付される。
- 事業所と契約・利用開始:指定事業所と契約し、ガイドヘルパーの派遣が始まる。
締切は?随時受付だが「使い始めたい時期」から逆算しよう
移動支援に公募締切はありませんが、申請から受給者証交付・事業所契約まで一定の期間がかかります。利用を始めたい行事・季節がある場合は早めの申請が安心です。下のカウントダウンは、年度区切り(次年度の体制が整う目安)の一例です。
移動支援でよくある「審査落ち・差し戻し・不採択」5つの落とし穴と対策
移動支援は要件を満たせば利用できますが、申請書類や対象範囲の誤解で差し戻しや支給量の不採択につながる失敗が少なくありません。代表的な失敗パターンと対策を整理します。
- 対象外の外出を申請して不採択:通勤・通年長期外出・ギャンブル等は原則対象外。失敗を避けるには、申請時に外出目的を「社会参加・余暇」として具体的に説明する。
- 同行援護・行動援護と重複して差し戻し:視覚障がいで同行援護の対象なのに移動支援で申請し審査落ちする例。どの制度が適切か事前に窓口で確認する。
- 負担上限月額の設定申請漏れというNG事例:上限設定申請を出さず1割をフルに請求される。支給申請と同時に上限設定申請を必ず提出する。
- 手帳等級・状態像の説明不足で支給量が削られる落とし穴:「単独外出が困難」な状況が伝わらず時間数が不採用に。日常の困りごとを具体的に書面で示す。
- 自治体の要件差を見落とす失敗:他市の情報を鵜呑みにし要件不一致で差し戻し。必ず居住自治体の実施要綱を確認する。
これら5つの失敗・不採択・差し戻しの多くは「事前相談」と「書類の整合」で防げます。迷ったら相談支援専門員に同席を依頼しましょう。
関連する補助金・制度
移動支援とあわせて、福祉・生活を支える次の制度も確認しておくと安心です。
よくある質問(Q&A)
Q. 移動支援の申請に締切はありますか?
A. ありません。移動支援は地域生活支援事業として随時申請を受け付けている恒久的なサービスです。利用したい時期から逆算して早めに申請しましょう。
Q. 料金はいくらですか?
A. 原則として費用の1割です。負担上限月額があり、生活保護・非課税世帯は0円、課税世帯は3,000円前後(自治体例)が目安です。
Q. 通学や通勤に使えますか?
A. 通勤は原則対象外、通学は自治体・対象により可否が分かれます。必ず居住自治体の窓口で確認してください。
